2022.03.29.tue

ファッションとカルチャーの架け橋 PROJECT TOKYO

Contents

PROJECT TOKYOの魅力

MMD TIMESでは、これまで数々の合同展示会を紹介し、主催運営者の想いを取材してきた。「合同展示会:MONTAGE.25th」や「EXTRA PREVIEW #20」、「展示会MaG.とオンライン展示会MaG.+」など、一口に合同展示会といっても、出展ブランドの色やカテゴリ比率は異なり、伴って来場者にも違いが見える。

今回の取材先は「PROJECT TOKYO (プロジェクトトウキョウ) 」。ファッションを軸にウェア、ジュエリー、ファニチャー、アートなどライフスタイルにも幅を広げて、ブランドとリテーラーを結ぶファッションイベントだ。国際的にも名のある同イベントは、アメリカ・ニューヨーク (PROJECT New York) 、ラスベガス (PROJECT Las Vegas) に次いで、ここ日本の東京に拠点を置き、年2回の開催を行っている。

MMD TIMES取材班は、先日開催された「PROJECT TOKYO 2022 March」に足を運び、主催者であるInforma Market Japan 株式会社でプロデューサー兼ディレクターを務める、石原隼人 (イシハラ ハヤト) 氏に話を伺った。多くの合同展示会が開催されるなかで、開催目的やPROJECT TOKYOならではの魅力、今回開催された2022 Marchについて伺った。

PROJECT TOKYO 2022 March
開催期間:2022年3月16日 (水) 、3月17日 (木)
会場;東京国際フォーラムE1ホール・LOBBY GALLERY
https://www.project-tokyo.com/

WOBE
https://www.project-tokyo-info.com/wobe/s/
※PROJECT TOKYO 2022 Marchの会期は既に終了しています。

業界と業界、売り手と買い手の架け橋に

PROJECT TOKYOについて教えてください

− 石原氏コメント:そもそも「PROJECT」とは、アメリカニューヨーク、ラスベガス、そして東京で開催されているファッションを中心としたイベントです。コンセプトである「connecting fashion + culture」からもわかるように、ファッションが基盤となり、そこにカルチャー要素、つまり、アートや音楽、飲食、ファニチャーなどのライフスタイルに纏わるモノも取り込んでいます。

今回開催した「PROJECT TOKYO 2022 March」には、まん延防止等重点措置の最中ではありますが、200以上のブランドが出展し、百貨店やセレクトショップのバイヤーなど4000名近くの業界関係者にお越しいただきました。

PROJECT TOKYO (プロジェクトトウキョウ)
「connecting fashion + culture」をコンセプトに開催される国際的なファッションの合同展示会。毎年2回、東京で開催されており、2022 Marchで第6回を迎えた。出展ブランドに関する情報は、ファッションブランドとリテーラーのマッチングを目的としたWEBサイト「WOBE (ウォーブ) 」で検索できる。

なぜ“プラスカルチャー”をコンセプトに?

− 石原氏コメント:今は、どのアパレルショップも洋服だけを売ることは少なく、ジュエリーや日用雑貨、ファニチャーと、衣食住、幅広くライフスタイルの提案を行っていますよね。でも、ひと時代前まではこれらの業界も分けて考えられていました。まだまだクロスオーバーできるアパレル業界と、ライフスタイル業界を繋ぐ役割を果たしたいという想いから、PROJECT TOKYOではファッションに限らずカルチャーを視野に入れたコンセプトを掲げています。

PROJECT TOKYOならではの魅力は?

− 石原氏コメント:出展者は「日本にいながら海外のバイヤーに会える」、また来場者は「日本にいながら海外のブランドに会える」ことが魅力の一つです。PROJECT TOKYOには、同社のコネクションにより招待した海外のバイヤーやブランドが多く訪れます。

例えば、バイヤーであれば、ロンドンのSelfridges (セルフリッジズ) やパリのMerci (メルシー) 、ロサンゼルスのH.Lorenzo (H・ロレンツォ) など、世界的に有名なセレクトショップを招待しているので、来場者にとって嬉しいチャンスを提供できているかと思います。このスケール感で海外のバイヤーとブランドとを両方招待できるのは、PROJECT TOKYOならではじゃないでしょうか。

日本のファッションを海外へ

アメリカ2都市に次いで、なぜ東京で開催地に?

− 石原氏コメント:日本のアパレル市場は世界第4位と成熟しています。全国各地に百貨店やセレクトショップ、個店もあり、数も多いですよね。これは世界から見ても魅力的なマーケットなんです。

また国民性として、ファッションに対する理解や洞察力が高く、ビジネスとプライベート、冠婚葬祭などTPOに応じてファッションを変えることの理解もしっかり定着しています。

これらの特徴は、他のアジア各国と比較しても欧米に近い感覚だと考えられているんです。実際に、日本の消費者がファッションに掛ける年間金額はずば抜けて高く、東京での開催は必然的でもあります。

− 石原氏コメント:一方で、日本のファッション業界は元気がないという課題もあるんです。例えば、海外のファッションウィークに注目してみてください。パリやミラノ、同じアジアの上海でも、街全体がファッションに染まりあらゆる所でイベントやパーティが行われていてとても華やかです。しかし、日本では業界関係者の間でしか意識されておらず、一般の方はほとんどがそんなファッションウィークが行われていることすら知りません。

これは国を挙げて取り組む必要があると感じていますが、まずは我々のできることから行っていこうという気持ちから、今回はJFW (一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構) と協力をして、初めて「楽天ファッション・ウィーク東京」と会期を合わせる取り組みを行いました。

日本には素敵なデザイナーやブランドがたくさんあります。このような取り組みを行うことで、日本のファッション業界が活発になり、エネルギーを持って世界に日本のファッションを発信できるよう進めていきたいです。

出会いの場 PROJECT TOKYO

開催の目的を教えてください

− 石原氏コメント:何といっても「新しい取引先とのマッチング」ですね。来場者であれば、一気に200〜300ブランドを見る機会というのはそうないので、ここでの出会いから何かを得てもらいたいです。それは、モノとの出会いに限らず、インスタレーションを見て湧くインスピレーションとか、予期していない発見かもしれません。とにかく何かを感じてもらえたら嬉しいですね。

出展するブランドには、日頃なかなか会えないバイヤーとのファーストコンタクトの場を提供しています。同イベントは何といってもファッション業界のバイヤー比率が高いんですよ。海外からも多いですが、国内も全国各地から大手の百貨店やショップの方々がいらっしゃるので、普段、電話やホームページから問い合わせをしても会うことができない人たちと接点を作ってほしいですね。

出展には基準を設けているのでしょうか?

− 石原氏コメント:特に明確な基準はないですが、一定以上のクオリティがあるかどうかは見ています。ただモノを売るのではなく、コンセプトやクリエーションがあるか、来場者に喜んでもらえるか、ブランドの世界観や表現力など、出展準備がしっかりできているのかは重要なポイントです。

残念ながら見送りになった場合でも、ルックを撮った方がいいとか、ホームページやSNSを更新した方がいいなど、次回出展へのアドバイスを添えてお断りしています。

出たいと言ってくれているからには、ブランドに寄り添って愛を持って接したいので、出展のために何が必要かをきちんとお伝えして、ブランド側の準備が整ったタイミングで出展いただくようにしているんですよ。

五感を刺激する展示

2022 Marchの見どころは?

− 石原氏コメント:まず一つ目は、サステナブルをキーワードにした出展です。これだけの数の出展があっても、それぞれのブランドにそれぞれの異なるストーリーがあります。そのストーリーを聴きながら各ブランドの商品やプロジェクトを見てみるのも面白いですよ。

例えば、今回の目玉企画「デニム de ミライ 〜Denim Project〜」は、約20トンのリーバイス®︎501®︎のユーズドストックをアップサイクルするプロジェクトです。三越伊勢丹をはじめとする小売6社がタッグを組んで、国内外の約60以上のブランドやクリエーター、アーティストの手を介し、アップサイクルした200型以上のアイテムを先行特別展示しました。

展示アイテムは三越伊勢丹オンラインストアをはじめ、特定店舗で購入できる

− 石原氏コメント:もう一つは、インスタレーションです。今回はウクライナへの支援の気持ちを表そうということで、ウクライナの国花であるヒマワリと共に平和祈願のインスタレーションを作りました。毎日ニュースを見ていると心が痛みますよね、本当に悲しいことです。ウクライナの方々に日本のファッション業界から支援の気持ちを届けたいと思いました。

インスタレーションやプロジェクトは、その時の社会情勢やトレンドから着想を得て進めることが多いです。出展者や来場者に問い掛けができるような構成や空間演出を努めています。ぜひ五感を使って各展示を体験してもらいたいですね。

世界的なファッションイベントを目指して

最後に今後の展望を教えてください

− 石原氏コメント:connecting fashion + cultureの“culture”を強化していきたいですね。ライフスタイル全般、具体的には展示会場内の雰囲気づくりとして、音楽イベントを行なったり、アートを配置したり、飲食の提案など、それぞれの分野の架け橋になれたら嬉しいです。あくまでファッションを軸にしながらですが、他の見どころもいくつもあるようなイベントへと成長させたいと思っています。

目標としては、イタリアのフィレンツェで行われるPitti Uomo (ピッティウオモ) や、デンマーク・コペンハーゲンのCIFF (Copenhagen International Fashion Fair) のように、世界的に発信力があり評価の高いファッションイベントにと肩を並べるようPROJECT TOKYOを盛り上げていきたいです。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

PROJECT TOKYOの作り手

PROJECT TOKYOの運営チームは7名。スタッフのほとんどが海外生活の経験があり、バイリンガルなんだとか。バッググラウンドの異なるダイバーシティな人材で作り上げるイベントは、それ自体ももちろんダイバーシティであり、毎回自由に、でも団結力を持ったイベントとして開催されている。

今回、現場を訪れ、たった7名で国内外から集まる出展者や来場者をもてなしているというのには驚いた。それも愛を持って。出展に至らなかったブランドまでのケアまでを行うという真摯な姿勢を知ることで、このイベントのインスタレーションや、プロジェクトに込められた想いや細かな配慮にもより一層共感できるように感じた。

次回開催は、2022年8月30日 (火) と31日 (水) の二日間。今会期に訪れることができなかった人は、是非足を運んでみてはいかがだろう。新たな出会いを求めて、PROJECT TOKYOという橋を渡ってみると面白い発見があるかもしれない。

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