2023.02.07.tue

FREAK’S STOREの拠点“The Camp”FREAK’S STORE

  • The Camp”FREAK’S STORE

Contents

本店としてあるべき姿

移住や二拠点生活、田舎暮らしなど都市から離れて生活や仕事をすることに注目が集まりつつあっても、依然として都市集中なのが現代社会。小売のビジネスにおいてもこれだけECが普及しているにもかかわらず、東名阪への実店舗進出は一種のステータスであり前進と捉えられる。

実際に地方発祥のショップやブランドが都市に進出・拡大し、成功する事例は多くある。そんなとき課題に挙がるのは、都市部と地方との売上格差ではなかろうか。多くはターゲット層の人口比率に比例したり、地域との親和性に左右されたりするものだが、やはり売上は都市に集中するといえる。それでは例えば、その売上格差の課題を抱える店舗が“1号店”だとしたら、その店舗を畳む勇気はあるか。

1号店の物語。それは、どのライフスタイルショップにもある。起業のきっかけや思い出の土地、ブランドの根が張るその場所を、多くの企業は“活かす”努力をするだろう。今回取材を行った「FREAK’S STORE (フリークス ストア)」もその選択をしたブランドの一つだ。

「正直、リニューアルの話が出るまでは遠くて行きづらいイメージの店舗でした」と話すのは、リニューアルを果たした本店「“The Camp” FREAK’S STORE (ザ キャンプ フリークス ストア)」の店長を務める加藤達郎 (カトウ タツロウ) 氏。ブランドの知名度と人気が都市まで広がった今、地方にある本店の本質的な価値が求められ、古河市という街、店舗の存在意義に改めて向き合ったという。同ブランドが導き出した「本店のあるべき姿」とは何なのか。敷地面積200坪を超える広大な店舗を、FREAK’S STOREの拠点へと変えた本プロジェクトに迫る。

FREAK’S STORE (フリークス ストア)
https://www.daytona-park.com/
積極的に楽しむ生活体験者=フリークとして、アメリカンライフスタイルの楽しみ方を提案するセレクトショップ。「アメリカの豊かさとワクワク・ドキドキを日本に伝えたい」という想いからスタートし、1986年の創業以来、洋服、雑貨、インテリアなど自分たちが本気でカッコ良いと思うものをセレクトしている。
Instagram:@freaksstore_official
“The Camp” FREAK’S STORE (ザ キャンプ フリークス ストア)
茨城県古河市にあるFREAK’S STORE 1号店。2020年9月に「“The Camp” FREAK’S STORE」としてリニューアルを果たす。“Life Share Park” 〜共に豊かさを⾒つけるお店〜 をコンセプトに掲げ、Relax (寛ぐ) Discover (⾒つける) Share (共感する) をキーワードに、さまざまなコンテンツが発信される新感覚のショップ。2022年4月からは同店舗2階にてコミュニティ型コワーキングスペースとなる「& FREAK. (アンドフリーク)」をオープン。
Instagram:@thecamp_freaksstore

FREAK’S STOREの拠点

“The Camp” FREAK’S STOREについて教えてください

− 加藤氏コメント:1986年に茨城県古河市で始めた本店にあたる店舗です。厳密には“The Camp” FREAK’S STORE <以下:The Camp> があるこの土地へは90年代に越してきたのですが、創業からずっと古河市に本店を構えています。

店舗名がThe Camp になったのは2年半前で、2020年9月にFREAK’S STORE 古河店がThe Campとしてリニューアルオープンをしました。The Campは「アメリカの豊かさを伝える」というFREAK’S STOREの原点といえる想いを持ちつつも他の店舗とは異なっていて、取り扱い商品は洋服に限らず、家具や植物など衣食住にまつわるものも幅広く展開しています。セレクトショップというよりは、ライフスタイルストアというニュアンスが近いですね。

家具や生活雑貨の取り扱いもある

− 加藤氏コメント:リニューアルするにあたって、カルチャーとして定着しつつあるアウトドアを強める方針がありました。「人やモノを通じてワクワク・ドキドキを伝えたい」という双方の思いが共鳴し合い、アウトドア業界では大変知名度の高い和歌山県発のアウトドアショップ「Orange (オレンジ)」をインショップとして迎え、The Campにおいて新たな価値を形にすることができました。関東初出店ということもあり、オープン初日はお店の前の国道が渋滞して、レジが1時間待ちになるほどの大反響だったんですよ。

The Campというとアウトドアのキャンプを強調しているように捉えられるのですが、この店舗名には我々FREAK’S STOREの“拠点=Camp”という意味も込められているんです。

アウトドアショップ「Orange」

The Campならではの工夫はありますか?

− 加藤氏コメント:先ほど伝えた商品展開はもちろんですが、売場づくりはこだわりの一つです。積極的に什器を使って、都市部のショップでは叶わない規模感で演出することに重きを置いています。本来であれば、見てわかりやすい商品陳列が売上を上げるのかもしれません。しかし我々は、本店として「わざわざ足を運んでくれた方へ、他店とは違う印象を与えたい」と思って売場づくりをしています。

他の FREAK’S STORE を知っている人に、「やっぱり本店は違うね」「すごいね」と言われたいですよね。そのために労力を惜しまず、月に1回のペースで什器を動かして売場を変えています。The Campのリニューアル前、僕は大阪の店舗で店長をしていましたが、他店では什器が固定されている状態で、そこに商品をはめていくことの方が多かったので、この規模の売場づくりを頻繁に行うのは本店ならではです。実際にお客さまも「よく売場が変わっているね」と気づいてくださいますね。

手前のグレーの什器なども含め大規模な移動を行っているそう

「&FREAK.」で街のインフラに

昨春、コワーキングスペースをオープンされたと伺いました

− 加藤氏コメント:2階に「&FREAK.」というコミュニティ型コワーキングスペースをオープンしました。約300㎡の敷地面積に、ドロップイン対応のコワーキングエリアと、個人ブースから最大10名まで使用できるアトリエオフィスを完備した契約者専用スペース、それからセミナーやワークショップ、展示会などが行えるスタジオスペースとイベントスペースを備えています。

&FREAK. (アンドフリーク)
https://www.daytona-park.com/andfreak/
“The Camp” FREAK’S STORE 2階にある「夢中になれる人生をシェアしよう」をコンセプトにしたコミュニティ型コワーキングスペース。ドロップインは一律900円 (税抜) で使用可能、または契約利用あり。ブックコーナーの併設、ラウンジではイベントスペースとしてエキシビションの実施が可能。また、セミナーや展示会、ワークショップ、レッスンなどの使い方に対応できるスタジオスペースとイベントスペースも完備している。

なぜワーキングスペースをオープンしたのでしょう?

− 加藤氏コメント:セレクトショップがワーキングスペースを運営するって不思議に思いますよね? 実は街のインフラになりたいと思ったんです。僕がThe Campの店長として古河市に来たときにまず考えたのは、「この街やお客さまと、“洋服だけではない関わり方”ができないか」でした。第一に都市部と比べて気軽に来られる場所じゃない、加えて時代はコロナ禍。じゃあ来るきっかけやこの店がある意味ってなんだろうと考えたときに、そこで暮らす人の生活に必要な存在、要するに“インフラ”になることで店舗のためにも街の活性化にも繋がるんじゃないかと思ったんです。

そこで古河市役所へ赴き「街に対して何かできることはないか」と相談を持ちかけ、包括連携協定 (地域が抱えている課題に対して自治体と民間企業が協力し解決を目指す協定) を結び、地方創生の一環として2022年4月に「&FREAK.」をローンチしました。反響も想像以上に良く、契約利用のスペースはローンチから半年でほぼ全てが埋まり、現在も満室です。

いま思えば地域貢献は後付けに近いですが、「洋服の販売以外でも価値を提供できるショップにしたい」というのは僕が異動したときから持っていた想いなので、買い物以外の目的でも街の人が集まる場所をつくれたのは嬉しいですね。

カルチャーを伝えるための人が集まる場所

なぜ「売るだけじゃないお店」を目指したのですか?

− 加藤氏コメント:これからのお店のあり方として、「伝えること」を重視した方がいいと思ったからです。FREAK’S STOREであれば「アメリカの豊かさを伝える」という想いでお店が始まったように、商品はあくまでそれを伝えるための手段なんです。「売りたいモノをどうにかして売る」のではなく、「モノを通して魅力を伝え、そこに共感してくれる方がモノを買う」という純粋な売買があるべきカタチだと思っています。

でもそれを伝えるためには、まず店舗に来てもらわなきゃいけないですよね。だからこそThe Campには「買うだけではない、集まる場」として機能してほしかったんです。お客さまには買い物をしなくても、遊びに行く感覚で来店してほしいですね。セレクトショップとしてはなかなか見ない店舗規模と形態ですし、1〜2時間は楽しんでもらえると思います。

ハロウィンマーケットの様子

今後の展望を教えてください

− 加藤氏コメント:日本人特有の欧米への憧れのようなもの、今でいうと若い女の子が韓国のスタイルやカルチャーを好きなのと近しいですかね、そういう憧れ感のあるアメリカンカルチャーのカッコよさを、地域社会に貢献しながら伝えていきたいです。例えば、古河市の職員さんのユニフォームを提供したり、近隣の人たちの憩いの場となるような公園を作ったり、形はまだまだ手探りですが、FREAK’S STOREの拠点であり、ルーツでもある古河市とだからこそできる地域密着型の活動があると信じています。それらを通して、僕らが“いい”と感じるカルチャーを若者に伝えていきたいです。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

社員一人ひとりのパワーがブランドを動かす

「大切にしていることは?」という質問に、「チャレンジすること。やったことのないことをやるのが正義」と答えた加藤氏。実は行政への働きかけも自ら進んで行い、「&FREAK.」のローンチまで事を運んだというのには驚いた。聞けば、店舗の若手スタッフの意見にも耳を傾け、新しい挑戦や企画はチャレンジできるような環境づくりを心がけているのだとか。

以前の取材「FREAK’S STOREが挑む店舗DX」を振り返っても、FREAK’S STOREの社員を信じる力と挑戦へのバックアップには強いものを感じた。アイデアを実行に移す行動力、挑戦を諦めない姿勢、突き進む推進力、こういった強いパワーが現代の若者に人気なブランドを確立した理由にも繋がるのかと思うと、同時に今後の同ブランドの活躍にも期待が高まる。

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