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2021年の御礼と新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

旧年中は格別のご愛顧を賜り誠にありがとうございました。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

MMD TIMESは、セレクトショップとブランドのためのワークメディアとして、業界関係者の皆さまにとって価値ある情報をお届けするべく、2022年もライフスタイル業界に携わる方々にご協力いただき、さらなるコンテンツの充実を図ってまいりますので、どうぞご期待ください。

新年最初にお届けするのは、2021年12月02日〜12月16日に業界関係者を対象に実施した市場動向アンケートに関する情報です。

「2021年セレクトショップの動向予測」と同様にアンケート結果をもとにして、2021年の景気動向を振り返り、今後の市場動向を予想しつつ、2022年のセレクトショップを取り巻く環境について探っていきたいと思います。

2021年の市場の振り返り

一昨年からおうち時間が増え巣ごもり需要が高まるなど、マクロ環境やユーザーの価値観の変化は大きく、中長期的な販促・販売計画が立てにくい状況が続いた。

そのなかでECの売上が数倍に跳ね上がった企業もある中、売上構成の多くが実店舗となる企業は、店舗が営業自粛と解除を繰り返し、客数の減少や店頭スタッフの対処、季節商材の在庫処分に悩まされたと聞く。

家具インテリア市場では、ニトリやIKEAなどの低価格帯を得意とする大手がけん引し、市場全体の売り上げを底上げしたが、中価格帯を得意とする実店舗中心のショップは未だコロナ禍の低迷から抜け出せないところも多い。大手やEC専門店と、その他で、業績の2極化が目立った。

アンケート結果を見てみよう。2021年の景気動向を尋ねたところ、「良かった」という回答が「悪かった」を若干上回った。前回のアンケートでは、「悪かった」が全体の半数を超えていた結果と比較すると、徐々に景気動向は回復に向かっているようだ。

業種別で見てみると、前回と同様に実店舗を構えるブランドや企業の多くが「悪かった」と回答している。緊急事態宣言に伴う休業や時短営業、そして外出自粛により、日用必需品以外のアイテムを実店舗で購入する機会が大幅に減った。

一方で「良かった」と回答していたのはECとメーカー。実店舗での購買減少の影響でオンラインショッピングの需要が増加し、EC中心に展開するセレクトショップやそれらの店舗に商品を卸していたメーカーは、プラスの影響を受けたということだろう。

もちろん実店舗を持つ企業でも、好調という回答もいくつかあったので順を追って詳しく見てみたい。

コロナ禍の動向と月別推移

前年対比を見ると、110%以上との回答が約4割と最も多く、そのうちのほとんどが前々年対比をも超えていた。これはコロナの影響を受ける前より売上が伸びたということだ。

それら企業の共通項は、売上規模10億円未満のメーカーであること。それまで厳しい状況にあった中小企業がコロナショックを機に、その状況を逆転することに成功したケースも珍しくない。

コロナ禍で発生するニーズや課題への対応をいかにスピーディーに行うか、が明暗を分けたのだ。実店舗を持たないメーカーは、巣ごもり需要で売上を伸ばしたECの販売先に販路を切り替えるなど、早めの対応ができたのではないだろうか。

次に、売上が良かった時期を見ると、2回目と3回目の緊急事態宣言が明けた3月と10月の回答が多い。

それらの時期の売上が良かった理由としては、「人流が戻った」、「巣ごもり・アウトドア需要の高まり」、「季節商材の好調」、「ポップアップイベントの好調」との声が目立った。

季節商材のひとつとして、「母の日需要が通年より高かった」との回答があり、巣ごもり需要で家族間のコミュニケーションが増え、スポットのギフト企画が普段以上に注目が集まったことが予想できる。メーカーの母の日商材の出荷が3月頃から始まり、小売りの売上が5月と考えると、この結果にもうなずける。

他にも、「MD見直し後の商品の好調」、「SNS集客の向上」など、コロナ禍に入ったタイミングで仕掛けた施策が当たったとの声も上がった。

ニューノーマルなライフスタイルから見る需要

昨年は、2020年から続く新たな生活様式に慣れてきたことで、売れるアイテムも少し変化があった。家の中での新たな楽しみ方を見つけたり、今までになかった働き方が定着し、人々の価値観が多様化してきたのだろう。

売上が良かったという回答をカテゴリ別に見ていくと、インテリアが前回のアンケート時から大きく伸びており、キッチン・キッチン家電・食品などの食関連や、アウトドアも引き続き好調と見てとれる。

代表的な売れ筋アイテムを見てみたい。
「インテリア」では、クッションカバーやカーテン・ラグなどのファブリックや、収納関連の買い替えが多かったようだ。

おうち時間が増え、インテリアと向き合う機会ができたことで、今まで後回しにしていた「快適な住空間の作り込み」に着手するエンドユーザーが増えたのではないだろうか。

「インテリア」に付随する「グリーン・フラワー関連」も同様に伸びている。

昨年目立った「テレワーク関連」は、引き続きオフィスチェアや昇降式デスクを中心に動向は良いが、一部のテレワークユーザーの需要が満たされたためか、少し落ち着いてきたようだ。

食関連では、「キッチン」や「キッチン家電」が継続して人気を保っている。

ファブリックやツールの買い替え需要と、家で料理をする頻度が増えたことで、調理が手軽に楽しくできる「キッチン便利グッズ」に動向が見えた。

またキッチン家電では、家族や友人とテーブルを囲む機会が多くなり、キッチンではなくテーブルの上でみんなが調理を楽しめる電気鍋やホットプレートが前回同様に人気だ。いつものごはんやパンが、まるでお店で食べるように美味しくなるプレミアム家電も動きは良い。

面白いのは、今までギフト需要の高かった「食品」が、自家需要へと変化したことだ。単価は低いが、他のアイテムと比較すると買上点数が高く、ファンを作るとリピート購入が期待できるため、売場を拡大するセレクトショップも多い。

そのなかでも、旅行を自粛せざるを得ない状況下で、その土地に行かなければ本来出合えない食材などの特産品は人気が高いようだ。

そして「アウトドア」も継続して人気だ。2019年頃から続くベランピング・おうちキャンプブームがコロナ禍でさらに人気を集め、アウトドア未経験者もビギナー向けのギアを手にするようになった。

さらに最近ではイエナカとソトが融合し、今まではアウトドアで使っていたローチェアやホットサンドメーカー、ステンプレートなどを家の中で使用し、小さな非日常感を楽しむユーザーが多くなるなど、「アウトドア」の売上を押し上げる要因が重なったと考えられる。

さらに、2022年の期待が見込めるカテゴリの1位としても、前回同様「アウトドア」が上がっている。

コア層だけでなくビギナー層まで裾野が広がったことと、今年は行動制限緩和により、キャンプ場の再開が期待できる。また、進化版GoTo施策によってグランピング施設など県外への移動も増え、消費活動が活性化される期待の表れだろう。

昨今では、住まいにおけるライフスタイルが多様化しているように、アウトドアの楽しみ方もさまざまであり、今後もサブカテゴリーの拡がりが予想される。

また、「インテリア」とともに今年は「グリーン・フラワー関連」の成長が特に期待されている。コロナ禍で家の中への関心が高まり、単に衣食住のための機能的な空間ではなく、「心地よく暮らす」空間へと新たに価値が見直されたマーケットである。

コロナ禍では「我慢していたこと」も多くあったが、同時に「新たに生まれたこと」、「価値が見直されたこと」もあった。これらがどう進化していくのかに着目して、MDを組み立てていくことが課題だろう。

2022年に取り入れたい新たな施策

2022年の施策として「SDGs」のほか、「事業拡大」や「EC店舗拡大」、それに伴う「従業員増員」と、前向きな回答が多かった。

「SDGs」については、まだまだ日本ではCSR (企業の社会的貢献) 活動の延長として捉えられることが多いように感じられるが、そんななかMMD TIMESでは「サステナブルな環境を作る」ことを成長戦略の中心に据えたビジネスを紹介してきた。

「阪口竜也氏が考えるSDGsビジネス」「地方活性化の新機軸となるモノづくり」などのモノづくりから、「アップサイクルがもたらす消費価値」「久保裕丈氏が推進するCLASの循環型サブスクビジネス」のサーキュラーエコノミービジネスなどは、ターゲット市場をユーザーの課題解決だけでなく社会課題解決にも置いている。

具体的な活動についての回答を見てみると、「エシカルな素材を使用した商品・包材開発」や、「サステナブルな仕組みづくり」を既に実行している、またはこれから始めるという回答が多かった。

他方で、「価格が問題」、「まずはデフォルトとして展開するための仕組みづくりが必要」など、実行までのハードルの高さを思わせるコメントもある。

従来の機能や品質、価格に加え、ステークホルダーの共感を呼び込む大義の大きさや、市場において今までと異なる優位性の確立が新たな競争軸となるのは確かだ。

Web関連施策の質問では、昨年から引き続き「Instagram」、「EC」、「自社HP」の回答率が高い。

経済産業省のデータを見ても、「生活雑貨、家具、インテリア」カテゴリのEC化率は年々増加がみられた。自粛期間中にECでインテリアを購入するという消費行動はある程度習慣化され、今後も成長していく見通しだ。

Web関連以外の強化施策としては、昨年同様に「異業種への販路拡大」が目立つ。

ライフスタイル業界においても、異業種参入の話題をよく耳にするようになった。

以前紹介した「FREDDY LECKが仕掛ける地域コミュニティ」では異業種を組み合わせて相乗効果を図ったり、「『kurasso』が向き合うInstagram」「&MEDICALのウェルネスライフとおうち時間」のように他業界から参入している企業もある。

異業種とつながることで新規顧客層の開拓や、そのコラボレーションによる話題性が認知度UPに貢献するなど、期待できる効果は大きい。

これからのライフスタイル業界の課題

2022年の景気見通しについて、「どちらでもない」、「わからない」という回答が7割を超えた。これは、まだまだ先行きの見えない現状への不安が現れていると感じる。

しかし、前回のアンケートでは「悪い」が半数近くを占めたが、今回の結果は1割に抑えられ、その分「良い」が2割に微増し、徐々に回復の兆しが見えてきた。

これからのライフスタイル業界を活性化させるヒントはどこにあるのか。

マスメディアではコロナ収束時期のイメージは2022年春夏の予想が多く、これまで制限・抑圧されてきた状況から解放されることで、いわゆる“リリース消費”や”ねぎらい消費”が期待されている。

同居する家族以外との交流が盛んになり、イベントの他、ワンマイルレジャーやマイクロツーリズムなどの近距離旅行、キャンプやアクティビティなどアウトドアへの注目が予想される。トラベル・レジャー・アウトドアアイテムの提案は必須だ。

また、エステ・コスメ・ファッションなど、自粛のねぎらいとして自分磨きをしたいというSNS上の声も多い。美顔器などのホームエステや、バスやベッドルームでのボディケアアイテムなどもいいかもしれない。

さらに「コロナ禍で生まれ、2022年以降に継続・進化する価値観からの消費」も考えておきたい。

多様化するライフスタイルに合わせた住空間とインテリアづくり、イエナカ・ソトの融合、食を通じた家族・友人とのコミュニケーションの場としてのダイニングなどがそれに当たるだろう。

一定の趣味嗜好に振り切ったインテリアアイテムや、どんなライフスタイルにも合わせやすいシンプルな家具。そして家の中やインサイドテラスでも使えるガーデンファニチャー。ダイニングで皆が調理できる家電など、これから更に深堀りできるカテゴリではないだろうか。

ユーザーの考える企業価値にも変化があった。消費の裏にあるサプライチェーンを含むストーリーへの理解や共感を深め、新しい価値観でブランドが判断されることが増えたように感じる。

似たデザイン・価格帯であれば、地域活性や環境保全に貢献しているブランド・商品を選ぶなど、企業を測るモノサシが変わってきたのだ。

実際、電通総研が12か国全世代を対象に行った調査 (出典:サステナブル・ライフスタイル意識調査2021) では、「価格が高くても環境に良い日用品を選ぶ」とのが回答が6割以上もあった。なかでも特にZ世代はエシカル消費マインドが高い。

今回のアンケートの回答でもあったように、今後はSDGsへの取り組みは企業としてデフォルトであるべきで、そこから更にどのような商品・サービスを提供できるかが鍵になってくるだろう。

2022年は、これらの「我慢の反動」と「ニューノーマルから生まれた進化」に注視し、不安定な情勢の中で移ろいゆくユーザーの需要をスピーディーに捉えたMDの取り組みや商品開発が必要となる。

MMD TIMESはこの新たな局面にあるライフスタイル業界の活性化を応援すべく、今年もブランドやショップに有益な情報をお届けしたい。

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