2021.01.05.tue

2021年セレクトショップの動向予測

Contents

MMD TIMESより新年のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

旧年中から格別の御高配を賜り、誠にありがとうございます。
本年も、より一層の御支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

わたしたちMMD TIMESは、セレクトショップとブランドのためのワークメディアとして2019年8月に始動し、業界関係者の皆様にとって価値ある情報をお届けするべく、2020年もたくさんのセレクトショップ様やブランド様をはじめとして、ライフスタイル業界に携わる方々にご協力いただき、取材を重ねてまいりました。

記事を楽しみにお読みいただいているというお声やご助言なども頂戴できるようになり、スタッフ一同大変嬉しく感じております。

2021年も引き続き有益な情報を発信できるよう、新たな取材を重ね、さらなるコンテンツの充実をはかってまいります。また、近くサイトのリニューアルも予定しておりますので、どうぞご期待ください。

新年最初に皆様にお届けするのは、2020年11月25日〜12月10日に業界関係者の皆様に実施させていただいた市場動向アンケートに関する情報です。

アンケート結果をもとに、2020年の景気動向を振り返り、今後の市場動向を予想しつつ、2021年のセレクトショップを取り巻く動向について探っていきたいと思います。

2020年の景気動向を振り返る

昨年は本当に大変な一年だった。65年振りとなる東京オリンピックが開催され、インバウンドも含めた大きな経済効果が期待されていた2020年は、突如現れた新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) <以下:コロナ>により、予想と全く違う一年になってしまった。

緊急事態宣言が発令され、オリンピックをはじめとした様々なイベントの延期や中止、外出自粛やテレワークの推奨など、これまでの生活が一変し、ライフスタイル業界にも大きな影響を与えた。

当然ながら2020年の景気動向に関しても、そのアンケート結果は「悪かった」という回答が全体の半数を超え、「良かった」「どちらでもない」がそれぞれ2割程度だった。

2020年景気動向円グラフ

昨年初めにお届けした2019年のアンケート結果を踏まえた「2020年セレクトショップを取り巻く業界の動向は?」でも「悪かった」という回答が4割を占めていたことを考えると、コロナショックは低迷しつつあった業界にさらなる追い討ちを掛けたと言えるだろう。

業種別で見てみると、実店舗を構えるブランドや企業の多くが「悪かった」と回答しており、緊急事態宣言に伴う休業や外出自粛による客足の減少が大きく影響した結果は明白だ。

一方で「良かった」と回答していたのは、実店舗はやはり少なく、ECと卸売を行うメーカーが主だった。

こちらは実店舗での購買減少の影響でオンラインショッピングの需要が増加し、EC中心に展開するセレクトショップやそれらの店舗に商品を卸していたメーカーは、いい意味での影響を受けたということだろう。

厳しさの続くライフスタイル業界

売上規模別で見ると、「良かった」と回答をしているのは、アンケート結果の半数以上を占めた売上高10億円未満の企業がほとんどで、 売上規模の大きい企業ほど「悪かった」との回答が目立った。

2019年末実施のアンケート結果では、厳しい状況が浮き彫りになっていた企業規模の小さい会社が、コロナショックにスピーディに対処することで逆に好機として、そのような状況からの脱却に成功した例もあったと考えられる。

昨年度との売上対比では、ほぼ変わらない100%前後が約3割、約半数は昨年対比が90%以下に落ちてしまったという回答だった。

昨年対比円グラフ

昨年対比が100%前後であった約3割も景気動向に関しては「悪かった」もしくは「どちらでもない」という回答がほとんどだったことから、景気動向の良くなかった2019年と比べると落ちてもいないが良くない状況が引き続いているという現状なのだろう。

その一方で100%を大きく超えているという回答も約2割見られた。明暗が分かれた企業やブランド、そしてショップの違いとは何だったのだろうか。

コロナで売れたモノ、売れなかったモノ

コロナは生活や行動に大きな変化をもたらし、エンドユーザーが欲しいモノ・必要とするモノも様変わりした。

昨年6月にお届けした「2020年後半のセレクトショップの動向」でも触れたとおり、私たちのモノの売り方・買い方にも大きな影響を与え、あらゆる業界が一気にオンライン強化へと舵を切った。

そんな状況の中でも売上が良かったという回答をカテゴリ別に見ていくと、テレワークグッズやインテリア・家具等と、キッチンアイテムやキッチン家電が目立った。

また、買い物袋の無料提供廃止によるエコバッグの需要と、コロナでマスクを販売するショップが増えたことにより、服飾雑貨も売上の良かったカテゴリとして上がっている。

2020年に売上の良かったカテゴリ

会社へ出社せずに家の中で仕事をするという状況から、デスクやチェアなどの購入に加え、PC・ワークデスク周りの整備、部屋の中が見られてしまうオンライン会議への対策等で、インテリアや家具などを必要としたり、興味を深めるきっかけになったことも大きいだろう。

外食を避け、家にいる時間が長くなったことで自炊をする人が増えたり、食事の準備の手間の軽減や、少人数でのホームパーティ需要など、キッチン関連商材は大きく伸びている。

一方で一旦落ち着いたかに見えたもののに、コロナで再びそのブームに拍車がかかったアウトドアアイテムは、今回のアンケート結果では思ったほど「売れたモノ」としての声が上がらなかった。

2021年に期待が持てるカテゴリ

換気の良い外で行うアウトドアなどは、コロナへの感染リスクが比較的低いと考えられ、旅行や外出がままならない状況でも行いやすく、テレビなどのメディアでも多く取り上げられている。

2021年の期待が見込めるカテゴリの1位として「アウトドア」が上がっていることからしても、各ショップやメーカーが注目していることは間違い無いはずだが、一体どういうことなのか。

これは、MMD TIMESが考察するに、近年のアウトドアブームで取り扱いカテゴリとして導入しているショップが増えたものの、今回のコロナショックでの需要に対して、アイテムのセレクトや魅せ方・打ち出し方などが上手くいっておらず、売り逃してしまったというケースも多いのではないだろうか。

コスメ・ヘルスケア関連やフレグランス、スポーツ・フィットネスアイテム、ルームウェアなども同様に、売上が良かったカテゴリとしての声は少ないが、2021年に期待が持てるカテゴリとして上位に上がっている。

また、売上が良かったテレワーク・インテリア関連、キッチン関連は、引き続き期待が持てるとの声も多かった。

どこにいてもスマホひとつで買い物が出来る時代、エンドユーザーに対して自店が何に特化したショップなのかを訴求し、認知させることは、「どの店」で「どの商品」を買うかを重要視させることになっていく。

そうして選ばれるセレクトショップになっていくためには、自店で扱う既存のアイテムやテイストとの相性はもちろん、自分たちが得意とする提案をしっかりと見極めていくことが大切だ。インサイトを察知したMDやVMDを再考していくことで、期待の持てるカテゴリが売上へと繋がっていくはずだ。

EC強化とDtoC

各社が今もっとも必要と感じている施策のひとつがEC強化だろう。実際、2021年の強化施策としてもEC店舗拡大やEC事業拡大などの回答がほとんどだった。

強化予定のWeb関連施策も、Instagramに次いでECが上がり、自社HPと続いた。

2021年に強化予定のWeb関連施策

Web関連以外の強化施策としては、新商品開発やPB商品の強化、特定の層に向けた商品開発なども上がっていたが、MMDとして具体的な内容が気になるのは「異業種への販路拡大」という回答だ。

今や業界の垣根を越えた取り組みやそれによる相乗効果を生み出していくことは必要不可欠とも言える。

新たな需要を生み出すペット関連ビジネス」や「セレクトショップが導くホーム・フィットネス」など、MMD TIMESでも異業種からヒントを得ることで新たな可能性を見出しているショップやブランドに注目してきた。

異業種との関わりから得られる発見は、今後もセレクトショップを取り巻く業界に大きな変化を与えてくれるだろう。ライフスタイル業界に属する企業やブランドが施策として考えている「異業種への販路拡大」は、これからどのような波を巻き起こしてくれるのか、非常に楽しみである。

さらにメーカーや作り手側からのDtoC化も一層進んでいる。作り手がモノを作り、販売する店舗に商品として卸し、エンドユーザーが来店してそれらを購入するという一連の流れは、今やマジョリティとは言い切れない。

アパレルブランドでは既に一般的になっているDtoC。今回のアンケート結果でもメーカーのEC出店やEC事業拡大という回答が見られたことから、コロナをトリガーとしてインテリア系メーカーにもDtoCが広がり、2021年はさらに進んでいくことになるだろう。

SNSなどでエンドユーザーと直接繋がることも容易になり、作り手側がそのブランドやアイテムの世界観を崩すことなく、伝えたいように伝えることも可能になった今、セレクトショップはどうあるべきだろうか。

進むDtoCと上手く棲み分けるのか、それとも共存していくのか。

以前MMD TIMESが取材した、工芸品を中心に扱うブランド「雨晴(アマハレ)」主人の金子憲一(カネコ ケンイチ)氏からも、「DtoCは今後も進んでいく」という言葉が語られた。

「目利きの伝達者」として自分たちにしかできないキュレーション力を磨き、それを発揮する場を作り上げてブランド価値を正確に伝えていくこと。「雨晴」はセレクトショップのあるべき姿をそこに見出していた。

あらゆる変化にいち早く気付き、ニューノーマルにも対応していくこと、セレクトショップにはそれが常に求められているのだ。

2021年セレクトショップの課題

今年の景気見通しも決して明るくはない。

「良い」という回答は1割にも満たず、「悪い」とは答えないまでも、合わせて4割を超える「どちらでもない」「わからない」という回答は、先行きの見えない現状への不安が現れていると感じた。

2021年景気見通し円グラフ

昨年から今年へとオリンピックの開催が延期になったが、現状を考えると開催自体も危ぶまれる。そうなると、ここ数年頼りにしていたインバウンド需要による売上も、昨年に引き続き厳しい結果になることは間違い無いだろう。

しかし、そんな中でも立ち止まるわけにはいかない。現状を打破するために各企業からそれぞれの前向きな声も聞かれた。

良くも悪くもコロナによって、自身の生活スタイルや生活環境の見直しをすることになり、自分にとって本当に必要なモノや欲しいと思うモノをしっかりと見極めようと考える人は増えている。

どこにでもあるモノではなく、自分の暮らしにあった新しいモノやサービスを求めるエンドユーザーに、いかにしてそれらを提供していくのか。

実店舗を構えるセレクトショップの大きな課題は、強化施策としても上がっていたECやオンラインとの共存ではないだろうか。

実店舗への来店や購買は、今後コロナのワクチンが確立されたとしてもすぐには戻らないだろう。これまでの常識が崩壊し、店頭でのコミュニケーションやマーケティングは、オンラインを上手く活用・融合させながら、“販売におけるニューノーマルなあり方”として確立していかなければならない。

SNSや動画コンテンツなどを駆使しながら、リアルにモノを見て触れる行為を補完する各企業の取り組みは、MMD TIMESとしても今後も取材していきたいと考えている。

またMDにおいても、ニューノーマルは外せないキーワードだろう。特にアイテムが飽和し、淘汰されていくことが予想されるマスクやエコバッグなどは、利用シーンをより細分化したり、従来はなかった機能や装飾を加えてイノベーションを起こしたモノのみが残っていくのではないだろうか。

先行きが不安な今こそセレクトショップには、ニューノーマルを前向きに楽しめるような提案でエンドユーザーを驚かせて欲しい。

MMD TIMESでは今年もメーカーやブランド、セレクトショップを始め、ライフスタイル業界に携わる様々な人やコンテンツの動向に注目しながら、取材を行っていきたいと思う。

Recommend