2022.01.11.tue

アウトドアブームの行方 2022

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アウトドア業界の現状と今後の動向は?

アウトドアブームの行方2022_キャンプをする女性

多様なスタイルや楽しみ方が生まれ、昨今一大ブームとなっているキャンプ。2020年のオートキャンプ参加人口は、前年比約3割減の610万人となり (出典:オートキャンプ白書2021 日本オートキャンプ協会)、7年連続で過去最高を更新していた記録に歯止めが掛かった。依然としてキャンパー人口は増え続けているが、果たしてこのアウトドアブームはいつまで続くのだろうか?

同年、国内旅行者数が半減していること (出典:旅行・観光消費動向調査 観光庁) を踏まえれば、オートキャンプ参加人口の減少率が3割に“留まった”ことはアウトドアの可能性とも受け取ることができる。

2019年に我々が「アウトドアブームの行方」を掲載した際、ターゲットをソロキャンパーやコア層に絞ったアイテム展開やバルコニーの活用など、シーンの拡張をしながらもこのブームは続いていくと見通しを立てた。実際に「ソロキャンプ」や「べランピング」という言葉がメディアに頻繁に現れ、アウトドアのターゲットやシーンは拡大している。また、サウナや釣りなどその他のアクティビティとのクロスオーバーも以前にも増して盛んになった。

しかし、それがコロナ禍といった状況と共に形づくられるとは誰も想像していなかっただろう。

同調査によれば、オートキャンプ参加人口のうちビギナーが占める割合は前年に比べて3%上昇した。オートキャンプ参加人口の総数だけ見れば減少ではあったが、コロナ禍がビギナーの獲得やアクティビティの多様化に拍車を掛けたのだろう。この先新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着くと仮定すれば、アウトドア人口は1000万人を超え、90年代の第一次ブームに追いつく日も近いのかもしれない。

エンドユーザーにとってウィズコロナの今は、自分に合ったアクティビティを探り、チャレンジする好機とも取れる。アウトドア業界に限らず、様々な企業がこの業界へ参入する機会を窺っている。MMD TIMES取材班はアウトドアブランドに話を伺い、この先のアウトドア業界について考えた。

キャンプ先でのシーン提案

株式会社ジャッカルが展開するROOSTER GEAR MARKET (ルースターギアマーケット) が発売しているロッド

キャンプや登山、ツーリングなど、“アウトドア“という言葉が示すアクティビティは多岐にわたる。そんななか、「釣り」は注目されているアクティビティの一つだ。

株式会社ジャッカルから展開されるブランド「ROOSTER GEAR MARKET (ルースターギアマーケット)」 では、初心者でも気軽に扱えるロッド (釣竿) やファッション性の高いアイテムが多いことから問い合わせが増えている。

コンパクトかつ豊富なカラー展開で女性にも人気のROOSTER GEAR MARKET (ルースターギアマーケット) のロッド
コンパクトかつ豊富なカラー展開で女性にも人気のロッド (釣竿)

その問い合わせがこれまで取引のなかったアパレルショップやライフスタイルショップからだというのは興味深い。お洒落でコンパクトなアイテムの見た目が、いい意味で釣りに挑戦するハードルを下げ、初心者の警戒を解いていると考えられる。

実は国内の釣り人口はピークであった90年代から年々減少傾向だ。しかし、ここに来て「コロナ禍」と「キャンプ」双方との相性の良さから釣り人口はジワジワと増えつつある。

まず、釣りのもつ性質上、人とある一定の距離を保つことが必須であるため、コロナ禍に最適なレジャーであることは間違いない。今だからこそ始めやすいアクティビティなのである。

また、アウトドアブームの定着により、多くのユーザーの目的が「キャンプに行く」ことから「キャンプで何をするか」に変わりつつあることが大きい。そこでの時間をどう過ごすかに焦点を当て始めている。今後はそのニーズに応えた新たな商品やシーン、アクティビティの提案が増えてくるのではないか。

アウトドアの“本質”を知る

MAAGZ (マーグス)の多次元型焚き火台 RAPCA (ラプカ)をはじめとしたアウトドアギア

「キャンプで何をするか」――このテーマの結論として真っ先に挙げられることのひとつに「焚き火」がある。焚き火台はキャンプビギナーからコア層まで、誰もが共通して所有するギアのひとつだ。だからこそ、こだわりを持つユーザーは多く、この先も数々の商品が誕生するだろう。

飽和状態となっているギアを新たに開発する際、必要とされるのはオリジナリティや新しい機能性、デザイン性などの付加価値である。

一例として「MAAGZ (マーグス)」 の「多次元型焚き火台 RAPCA (ラプカ)」を紹介したい。本商品はクラウドファンディングサービスであるMakuake (マクアケ)で、目標達成率2508%を記録し、2020年2月より一般販売された。

焚き火の炎を綺麗に見せるデザインの多次元型焚き火台 RAPCA (ラプカ)
焚き火の炎を綺麗に見せるデザイン

世の中には既にたくさんの焚き火台があり、キャンパーの誰もが手にしていると思われるギアでもある。そのなかでも、これだけの需要を獲得し商品化に至っていることから今後のニーズが窺える。

MAAGZを展開する株式会社フロントビジョンは、WEBを主軸に活動する制作会社だ。アートや建築など、様々な分野を得意とする作り手たちが、愛するキャンプをより楽しくするために、彼ら自身が欲しい「あったらいいな」を形にしている。

焚き火の「火」を美しく魅せるということをコンセプトに設計された本商品は、同社だからこそ生み出せる遊び心のあるデザインがユーザーの心をくすぐる。

また焚き火台RAPCAを皮切りに、ソロキャンプに特化した軽量陣幕や、動物の糞をアップサイクルして作成した着火剤といったユニークなギアを次々とリリースしている。作り手がコアユーザーである点が一番の強みだろう。

MAAGZ (マーグス)のANIMAL LIGHTER/うんちの着火剤
ANIMAL LIGHTER/うんちの着火剤
焚き火陣幕 NOMAD (ノマド) を使用する男性
焚き火陣幕 NOMAD (ノマド)

最近のブームを聞いてみたところ、同社では屋上でのサウナが流行っているのだとか。今後、業界全体で大きなテーマとなっていくであろう「キャンプですること」への飽くなき探究心が提案する商品開発から目が離せない。

アウトドア専用との使い分け

株式会社ハリオ商事から新たに誕生した総合アウトドアブランドZebrang (ゼブラン) の商品シリーズ

MONTAGE 26th 注目アイテム」でも伝えたのだが、2021年の合同展示会では業界外の企業からアウトドアギアの出品が目立っていた。このことから今後も異業種参入が加速すると予想できる。

なかでも取材班が注目したのは珈琲器具メーカーである株式会社ハリオ商事から誕生した、総合アウトドアブランド「Zebrang (ゼブラン) 」だ。

ブランドの立ち上げと同時にリリースされた「コーヒーギア」。その新鮮なワードからは、絶対的な信頼のある“おうちアイテム”が住まいの外に領域を広げていく決意を感じた。

もちろん家の中で使うモノに求められるカタチと持ち運んで外で使うモノに求められるカタチは異なる。そのため素材の変更と、それに伴う細かな調整に多くの研究を重ねている。「HARIO V60」の円すい形ドリッパーとして確立された品質とブランドがあるからこそ、スタートラインに妥協できないのだろう。

シリコン素材のZebrang (ゼブラン) の円すい形ドリッパー
素材をシリコンに変えてV60の品質を再現
Zebrang (ゼブラン) の円すい形ドリッパーはポケットサイズになり、収納や持ち運びの場所を選ばない
ポケットサイズになり、収納や持ち運びの場所を選ばない

その高いハードルを越えて実現したブランドリリースにより、「家の中では『HARIO V60』、家の外では『V60 フラットドリッパー Zebrang』を」という提案を可能にしたことは非常に興味深い。

異業種のメーカーがアウトドア業界に参入し、独自のアイテムを開発することによって、同社同様に既存ブランドのユーザーによる商品の使い分けが発生する未来も近いだろう。

アウトドアギアの今後の売場

アウトドアブームの行方2022_アウトドアギア

アウトドアギアを扱う3ブランドを取材して感じたことは、議論の中心が「キャンプ」ではなく「キャンプの内容」へと、より具体化した事実だ。これは、以前からコア層がこだわっていた「キャンプで何をするか」という視点が、コア・ビギナーの境なく多くのユーザーの話題へと広がりつつあることの現れであろう。

「道具を揃えてキャンプに行く」というカタチを楽しんでいた層も、その先で何をするか、いかに快適に過ごすか、どんなアイテムを使うのか、その細部にまでこだわり始めている。

それはユーザーがこのアウトドアブームの中で多くのモノやコトを見聞きし、体験し、自分自身の趣味嗜好をある程度把握できてきたからではないか。

このことを踏まえるとセレクトショップでの売場づくりにおいても、より具体的な提案が必要となってくる。

単純にアウトドア・キャンプといった売場展開ではなく、キャンプで何をするのかといった「キャンプでできること」を提案する売場は是非とも取り入れたい。その提案が今でいう釣りやサウナなど、時流を捉えた形であるとなお良いのではないか。ユーザーに新たな気づきを与えて、商品を販売していくことにつながるはずだ。

掲載ブランド紹介

ROOSTER GEAR MAEKET (ルースターギアマーケット)

「Discover the Unexpected(思いがけない発見)」というコンセプトから生まれた株式会社ジャッカルが展開するフィッシングブランド。釣りとアウトドアを通して「やってみたい」や「懐かしい」のきっかけを届けている。

取り扱いアイテム:釣り具、釣り用品など

公式ホームページはこちら
https://roostergearmarket.com/


MAAGZ (マーグス)

クラウドファンディング「Makuake」で達成率2500%を超えた「多次元型焚き火台RAPCA」をきっかけに2019年に発足したブランド。創造的かつ機能的なプロダクトをつくることをポリシーに、日々研究・開発に打ち込んでいる。

取り扱いアイテム: 焚き火台、アウトドア用品など

公式ホームページはこちら
https://store.maagz.jp/


Zebrang (ゼブラン)

珈琲器具メーカーの株式会社ハリオ商事が考えた屋外用珈琲器具ブランド。コロナ禍でニーズの高まったキャンプで出来る「新たなコーヒー体験」をテーマに立ち上げ。アウトドアコーヒー体験によって得られる価値を提供する。

取り扱いアイテム:野外用コーヒー器具など

公式ホームページはこちら
https://zebrang.hariocorp.co.jp/

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