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生活様式の変化が導くこれからのヘルスケア

わたしたちの生活に大きな変化をもたらしたコロナショックからまもなく2年が経つ。それまでの常識や当たり前はガラリと変わった。

ライフスタイル業界に携わる多くの人々は、戸惑いながらも試行錯誤や新たな挑戦を経て、これからのショップやブランドの在り方を導き出してきたことだろう。

そんな中で新たにトレンドとして確立した「おうち時間」というキーワードから生まれる流行や価値観は、重要なポイントとなっている。

EXHIBITION 2021AW」でも取り上げたように、防災、ウェルネス、ボタニカルといったコロナ禍を背景とした展示会コンセプトも、「おうち時間」を充実させたいエンドユーザーに向けたメッセージの表れと捉えることができる。

以前は身体を動かすというと屋外での運動やジムなどでのトレーニングが中心だったが、昨今では長く続いた外出制限や、人との集まりを避けるために、家の中で身体を動かしたり鍛えたりすることが増え、ホームジムやホームフィットネスという言葉が一気に広まった。

加速するホームフィットネス市場を多くのセレクトショップが注視しているだろう。これからのライフスタイルとヘルスケアについて、「&MEDICAL (アンドメディカル) 」のブランドマネージャーを務める 佐藤 明香 (サトウ アスカ) 氏に話を伺った。

&MEDICAL(アンドメディカル) 
HOME MEDICAL FITNESS (暮らしも 身体も ここちよく)
https://and-medical.com/
「おうちで健康」をテーマにした、暮らしに溶け込むホームメディカルフィットネスブランド。身体機能、運動機能に精通した専門家たちの知見・メソッドを活用した商品開発を行い、身体の悩み改善や健康維持にアプローチする。デザイン性にも優れたアイテムは、ココロもカラダも弾む健やかなライフスタイルをプロデュースしてくれる。

おうち時間が育むココロとカラダの健康

&MEDICALについて教えてください

− 佐藤氏コメント:&MEDICALは「おうちで健康」をテーマに家の中で気軽にストレッチや筋トレ、有酸素運動などができるヘルスケアアイテムのブランドです。

セルフメンテナンス、セルフメディケーションなどいろいろな言葉がありますが、&MEDICALではそれらを「ホームメディカルフィットネス」と位置付けし、暮らしにも身体にもここちよく、暮らしに溶け込むプロダクトを提供しています。

フィットネスと聞くと活動的に身体を動かすイメージが強いかもしれませんが、それだけではなく本来持っている身体の機能を呼び覚まし、充分に使えるように手助けする役割を担うのが&MEDICALの「ホームメディカルフィットネス」です。

医療機器や健康雑貨のブランドなのでしょうか?

− 佐藤氏コメント:ブランド名にメディカルと付いている通り、医療機器も取り扱っていますが、雑貨などもカテゴリーにかかわらず開発しています。

医療機器なら医療機器、雑貨なら雑貨のみというメーカーが少なくない中で、&MEDICALではいろんなカテゴリーのプロダクトを提供できるように展開しているんです。

健康に対しての悩みは人それぞれで、医療機器だから万人に効くとは限りません。同じような症状でも人によって効くこともあれば、効かない場合もあり、医療機器だけでは解決できないこともあります。

身体の痛み一つに対しても、マッサージをする・身体を鍛える・食事で改善するなど、解決方法がいくつもあって、みんな同じではありません。一つの悩みや症状に対して様々なアプローチができるよう、多種多様な商品ラインナップで対応できることは、わたしたちの強みだと思っています。

進化する&MEDICAL

今回、ブランドのリニューアルをされたとお聞きしました

− 佐藤氏コメント:医療機器ブランドとして生まれた&MEDICALの立ち上げから5年が経ち、今後について考える時期でもありました。

進んでいく高齢化や医療費の増加、国としてのセルフケアの推奨など、健康に対する人々の注目や考え方の変化がもたらした市場背景を踏まえ、医療機器を中心としたヘルスケアブランドからもう一歩成長させたいと思ったんです。

そのためには、まず限られた販路を広げる必要があると感じました。新たな販路を開拓し、取り扱っていただくショップを増やすため、培ってきた経験とマーケティングデータを活かして、ブランドをリニューアルさせることを昨年12月に決定し、ようやくお披露目となりました。

2021年11月にはショールームで新商品を体感できるお披露目会が開かれる

リニューアルに際し、どのような取り組みをされたのですか

− 佐藤氏コメント:リニューアルにあたって外部デザイナーや販売のプロを迎えました。販路拡大のためにまずはデザイン性が重要だと思ったんです。

これまでのヘルスケアアイテムは機能を全面に出したデザインが中心で、使った時の心地よさが一目で分かるデザインや、販売時の見映えを重視した目立つカラーが多く、それらが売れる条件でもありました。

でもそういうデザインって暮らしに馴染まないんです。家で過ごす時間が増えたことで、インテリアや家具などにこだわりを持ち、お金と時間を費やしたいと考える人が増えていますよね。

だから機能が分かりやすい見た目は残しつつ、家具のように置かれていても違和感のない自然なデザインであることを大切にしました。今後はアパレル・インテリア問わず、様々なセレクトショップなどへ新しい販路を広げていきたいですね。

さらに販売のプロを迎えたことでDtoCをより積極的に展開し、ブランドとしての認知も高めていきたいと考えています。

日々のルーティンや動作がもたらすウェルネス

ホームメディカルフィットネスブランドの役割とは何でしょう

− 佐藤氏コメント: 「病は気から」じゃないですが、健康なら何でもできると思うんです。人間は身体が資本で、健康ってとても大切ですよね。

ブランドターゲットはココロとカラダの健康を願う全ての人ですが、中心は30~40代の働き盛りの人たちを想定しています。

仕事でもプライベートでも、もう一歩踏ん張りたい、頑張りたいという時がありますよね。そういう時に身体的な不調を感じていると、頑張れないことが辛くて、そこからココロとカラダのバランスを崩してしまう人も少なくないんです。

健康 (Health) であることはもちろん、健康を目指し生き生きと元気に楽しく暮らすこと (Wellness) が幸せに生きていく上で重要なのではないでしょうか。

それは自分自身だけでなく、家族や友人など身近な人たちと共に長く健康で楽しく過ごしていくことでもあります。そういう願いを叶えられる存在として、ホームメディカルフィットネスブランドの役割を担っていきたいですね。

商品はどのように企画されているのですか

− 佐藤氏コメント: 家の中で使えるという前提のもと、身体を「ほぐす」「鍛える」「支える」という3大カテゴリを主軸に商品の企画を行い、その中で暮らしの導線になるということを意識しています。

例えば「歯を磨く」「靴下を履く」など、日々の生活の中で行う動作のように、テレビを見ながらできることや、就寝時にサポーターを着けるというような日常のルーティンに溶け込めるものですね。

そして、わざわざそのために何か道具を出すのではなく、使わず部屋に置いてある時も、モノ自体が家具としてインテリアに溶け込む、それが暮らしに馴染むということだと考えているんです。

また、1商品あたりのモニターテストを3回行い、評価点数の合格ラインを超えていることを基準とし、どのような筋肉が使われているかの効果を検証するために、大学での効果検証テストなども行い、心地よい体感と確かな効果を実感していただけるプロダクトの開発に取り組んでいます。

暮らしに溶け込むホームメディカルフィットネス

リニューアル後の新商品について教えてください

− 佐藤氏コメント:一部の新商品はMakuakeで先行展開を行い、多くのエンドユーザーからのご支持をいただいています。今後の展開としても「KAMOLEG(カモレグ)」が人気で、期待値が高いですね。

家の中で履いて歩くだけで脚全体の筋肉を効果的に使うことができ、歩行そのものがフィットネスになるという新感覚のルームシューズです。

他にも「KURA SEAT(クラシート)」は、乗馬する時の鞍の形を模した姿勢サポートシートなんですが、座るだけで骨盤を支えて腰への負担を和らげ、姿勢を正してくれます。

すっきりとしたデザインなのでインテリアにも馴染み、座り仕事やリモートワークにも良いと思います。

KAMOSHIKA+LEG(カモシカの脚)からネーミングされた新感覚ルームシューズ
椅子座りでもあぐら座りでも、快適に美姿勢になれるKURA SEAT(クラシート)

− 佐藤氏コメント:もう一つはストレッチと美姿勢を兼ね備えた、「STRECH CHAIR(ストレッチチェア)」という座椅子です。

背もたれの付け根の中間部分の二ヶ所にリクライニングギアを搭載し、取りたい姿勢にピッタリとフィットするように角度が調整できます。

快適な座り心地だけでなく、合間にストレッチをしてリフレッシュすることで、集中力を高めてくれる効果が期待できるので、リモートワークが広まった今、需要が高まると考えています。

14×14通りの座り角度を実現した、STRECH CHAIR(ストレッチチェア)

エンドユーザーにどのように使ってもらいたいですか

− 佐藤氏コメント:わたしたちは人々が持つ健康などの悩みを解決するだけではなく、その一歩先を楽しんでもらうことを目標にしています。

例えば肩こりや腰痛など直接的な悩みの改善はもちろん、それらが良くなることによってもたらされる暮らしの変化を楽しんでもらいたいんです。

肩こりが治って高い所にあるモノが楽に取れる、腰痛がなくなったから外出したくなる、今までできなかったことができるようになって新しいことに挑戦したくなったり、直接的な悩みが消えたことで人々の行動が広がってくれれば嬉しいですね。

セレクトショップでの取り扱いもさらに増えていきそうですね

− 佐藤氏コメント:「セレクトショップに行く時って、あのお店に行けばこんな商品があるからという目的買いも多いと思うんですが、店舗そのものが時間や空間を楽しめる場所になっていて、それが魅力とメリットでもありますよね。

例えば本屋と併設したコーヒーショップのように、コーヒーを飲みながら本を読む時間そのものを楽しむ感覚と似ている気がします。

自分の家にそのアイテムがあるような情景をイメージさせ、その時間を楽しめるような空間を与えてくれるセレクトショップで、&MEDICALのプロダクトもそんな体験や体感を与える売場づくりができると思います。

お披露目会ではインテリアや家具と調和する売場イメージも提案する

− 佐藤氏コメント:以前から身体や健康についての相談ができるコミュニティがもっとあればと感じていたのですが、そういう場所って病院以外だと今はまだフィットネスクラブやジム、ドラッグストアくらいしかないんです。

エンドユーザーにとっての体験を提供できるセレクトショップが、健康についての共有やワークショップなども可能なコミュニティの場としても広がっていってくれたらと期待しています。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

セレクトショップとウェルネスの行く末

健康のあり方や健康に対する考え方が時代と共に変化し、ライフスタイルの一つとして捉えられるようになった今、この市場をどう受け止め、取り入れていくべきか。

以前、「セレクトショップが導くホーム・フィットネス」では、コロナ禍で需要が高まったオンラインフィットネスとフィットネスアイテムに求められるファッション性やデザイン性について紹介した。

一口にフィットネスやヘルスケアといっても、医療機器や雑貨、健康食品など様々なジャンルのアイテムがあり、すでに何かしら取り扱っているという店舗が多いだろう。今後も加速するとみられるフィットネス市場をどう捉えて、エンドユーザーにどんなアプローチしていくべきなのか。

今回取材した&MEDICALの佐藤氏が語ってくれた、ホームメディカルフィットネスというブランドから見えるセレクトショップの可能性は、店舗というハコに留まらないコミュニティとしての新たな進化と未来を感じさせてくれた。

セレクトショップにとっても、これまでとは違う売場づくりを考えるヒントやきっかけになったのではないだろうか。

SNSやWEBだけでは伝えることのできない体験や体感を提供し、エンドユーザーに感動や喜びを与えるセレクトショップならではのVMDで、ホームフィットネスの売場がどのように変化していくのか、今後が楽しみだ。

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