2020.01.07.tue

2020年セレクトショップを取り巻く業界の動向は?

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MMD TIMESより新年のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中から格別の御高配を賜り、誠に有り難うございます。
本年も、より一層の御支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

セレクトショップとメーカーのためのワークメディアMMD TIMESは、昨年8月1日より始動し、業界関係者の皆様にとって価値のある情報をお届けするべく、さまざまなセレクトショップ様・メーカー様にご協力いただき、取材を重ねて参りました。

2020年も引き続き有益な情報を発信できるよう、新たなセレクトショップ様・メーカー様への取材も含め、さらなるコンテンツの充実を図ってまいります。

新年最初に皆様へお届けしますのは、事前に業界関係者の皆様に実施させていただいた市場動向に関するアンケート情報です。

アンケートの結果を元に、MMD TIMESでは2019年の景気動向を振り返りながら、今後の市場動向を予想し、2020年のセレクトショップを取り巻く業界を探っていきたいと思います。

2019年の景気動向を振り返る

昨年末にお届けした「2019年の人気記事を振り返る」 の中でも少し触れた通り、2019年の全体的な景気動向として「良い」とは言えなかったという意見が多数だろう。

アンケートの結果を見ても、「悪かった」「とても悪かった」が全体の4割を占め、「どちらでもない」を含めると7割以上、「良かった」「とても良かった」という回答は、3割にも満たなかった。

業種別では、EC・通販では景気動向の明暗が別れ、良し悪しの回答数が半々という結果だった。

インテリアやアパレル等セレクトショップなど実店舗とメーカー・問屋は共に、「悪かった」もしくは「どちらでもない」という回答が大多数だった。

このうち、少数派ではあるものの「良かった」と回答したショップやメーカーが、「2019年に売上が良かったもの」として挙げたカテゴリーの中には、家具・インテリア雑貨や小物の他、MMDでも取材したアウトドア関連商品やガーデングッズといった回答が見られた。

また、売上規模別で見てみると、回答者の約50%を占める売上高10億未満の企業では、「悪かった」が若干数上回るものの「どちらでもない」と拮抗しており、売上高10億以上100億未満の企業も同様の結果となった。

売上高100億以上の企業では、「どちらでもない」が「悪かった」を若干上回るという結果になった。

「とても悪かった」という回答は売上高10億未満の企業が目立ち、企業規模の小さい会社ほど厳しい現状が浮き彫りになっていると感じた。

消費増税に伴う需要の変化

2019年は、消費増税という大きな変化の年でもあった。食品や一部の軽減税率対象商品を除き、10月1日より、消費税がそれまでの8%から10%へと引き上げられた。

これに伴い、9月末までには駆け込みでの購買が増えたとの声も聞こえたが、その後の買い控えによる落ち込みもあり、全体的な結果としてやはり景気動向は良くなかったのではないだろうか。

業種別では、セレクトショップなど実店舗やメーカー・問屋共に駆け込み需要はあったものの、同程度の落ち込みを感じているとの回答が見られた。しかし、駆け込み需要が感じられなかったと回答した中では、その後の落ち込みに対しても「感じる」と「感じない」がほぼ同数という結果になった。

MMD TIMESの記者が独自に話を聞いたインテリアショップでも、全体的な景気動向としては「どちらでもない」としながらも、新生活シーズン以外で売り上げが伸びたのは、やはり夏のセールから9月末頃にかけての消費増税前の駆け込みの時期で、10月以降は落ち込みを感じたとの回答だった。

また、EC・通販では、増税前の駆け込みはあったものの、その後の落ち込みは感じていないという回答もあり、10月の増税以降に実施されたキャッシュレス決済による還元など、増税後の購入の方が特だと考えたエンドユーザーも一定数いたのではないかと考えられる。

実際、増税前にはテレビや雑誌などのメディアで、増税前に買うべきものと増税後に買うべきものの特集などを見かける機会も多かったように思う。

消費者側が、キャッシュレス還元や増税後の買い控えに対する各ショップの値引き等、いつどこで何を買うべきかをしっかりと見極めた結果として、増税による駆け込み需要とその後の落ち込みの明暗も違っているのかもしれない。

2020年の景気見通しと集客施策

今年はいよいよオリンピックが自国開催される年だ。東京オリンピックとはいうものの、開催場所は競技によって東京都内だけでなく、首都圏近隣の都市のほか、マラソンは札幌での開催となった。

オリンピック開催による経済効果の試算は32兆円以上とも言われ、これは主な開催場所となる都内だけでなく、オリンピック観戦と合わせて日本国内を観光する外国人旅行客のさらなる増加が見込まれ、地方活性化やインバウンド需要への期待も高まっている。

2020年の景気の見通しとしては、悪いとの予測がおよそ3割で、良いが2割未満、「どちらでもない」と「わからない」という回答が合わせて半数を超える結果となった。良いか悪いかで判断すれば、悪くなると考えている業界関係者が多いと言える。

具体的な内容としては、オリンピックによるインバウンド需要への期待の反面、東京から離れた地方のショップではインバウンド需要は期待が薄いという意見や、オリンピック開催前後の浮き沈みの激しさ、インフラ環境が整っていないことや交通規制による物流の混乱や損失が発生するのではないかという不安の声もあった。

では、一部でオリンピックによるインバウンド需要が期待されながらも、業界としては悪くなるのではないかと不安視されている2020年の景気動向に対して、集客の施策としてはどのように考えているのだろうか。

集客施策として考えているとの声が多かったのは「SNSの強化」だ。次いで「自社ブランディングの見直し」、「イベントなどへの外部出店」という回答が多かった。そのほか「広告・販促・広報活動の強化」「ワークショップの自主開催」という回答を見ても、いかに自社のショップや商品・ブランドの良さを消費者にアピールしていくか、というPR関連の施策を重要視しているということが分かった。

インテリアプロダクトブランド HAY」で紹介した、現場ファーストという視点でのブランディングの在り方も、「ブランディングの見直し」を考えるとき、ぜひ参考にしてもらいたい。各社が2020年の施策として具体的にどのように取り組み、どのような結果をもたらしていくのか、非常に興味深く、MMD TIMESとしても注視していきたいと思っている。

そんな中、MMD TIMESが少し気になったのは、ポイント還元や会員優待の強化といったような施策に対しての興味が薄いように感じられたことだ。すでに行っているショップ等もあるかもしれないが、ポイントや優待などの施策は、日本が国として推進しているキャッシュレス決済などとも連動性を持たせやすいため、消費者へのアプローチも効果的に行えるのではないかと思う。

また、インバウンド需要は増えるとの期待はあるものの、集客施策としてはどうだろう。アンケートの選択項目にはなかったが、日本の文化や自然といった日本らしい魅力をもっと知ってもらい、日本の商品への価値を高めた上で、輸出にも力を入れて日本のブランドや商品をアプローチしていきたいという声が聞こえてきた。

日本人は民族性や言葉の壁から、国外に対してクローズな印象を与えてしまいがちだが、2020年のオリンピックをきっかけとしたインバウンド客に対する施策が、日本ブランドの海外進出にも繋がっていくのではないだろうか。

2020年の気になる商品カテゴリ

2020年は冒頭からの話題の通り、オリンピックイヤーである。スポーツ関連アイテムの需要が伸びるのは間違いないだろう。パブリックビューイングや大型モニターのある居酒屋・スポーツバー等での観戦など、飲食業界も盛り上がりそうだ。

しかし、MMD TIMESの読者の皆様はセレクトショップやメーカーが中心であることを考えると、オリンピック開催で伸びそうな商品カテゴリというのは、なかなか結びつき辛い。

厳しいと考えられる2020年の売上を落とさず伸ばしていくためには、どのような商品に注目し、新規カテゴリの展開やカテゴリの強化を考えていけばいいのだろうか?

アンケート結果では、「新たに展開したい商品は特にない」という消極的な答えが目立った。展開や強化したいとして挙がったカテゴリも、新しくというよりは、既存の取扱カテゴリやアイテムの幅を広げる程度に留まる意見が多かった。

セレクトショップなど実店舗では、家具やインテリア関連アイテムを中心に、キッチンやコスメ・ヘルスケア、EC・通販では、2019年の動向として良かった家電アイテムの強化だ。

やはり景気動向に期待が持てないことから、新規出店や設備投資も多くの会社では行う予定がなく、先行きへの不安から、新たなカテゴリの投入などの大胆な施策は挑みにくいといったところだろうか。

しかし、少数意見ではあったものの、「インテリアとアウトドア」や「アウトドアブームの行方」でも取り上げたアウトドアアイテムやガーデングッズ、「ベビー・キッズラインの売り場展開例と商品情報」で記事にしたベビー・キッズアイテムなどが新規展開や強化カテゴリとして挙がっており、MMDが「ペット用品を展開する利点」でも取り上げ、注目しているペットアイテムと合わせ、引き続き2020年の動向も目が離せないと感じた。

また、MMD TIMESとしても新たに注目していきたいカテゴリだと感じたのは、掃除や洗濯などのクリーニング系のアイテムだ。「ていねいな暮らし方」というものが一種の流行となった今日、クリーニングアイテムにもこだわりを持つ人が増え、ランドリーグッズ専門ブランドは都内に体験型複合ショップをオープンさせた。

今後もこれまでにはなかったようなジャンルやカテゴリから、新しいショップが誕生していくのは楽しみでもある。

2020年のセレクトショップを考察する

2020年、多くの企業がインバウンドへの期待をしているとともに、その後の景気衰退に懸念している。これはセレクトショップを取り巻く業界だけに限らず、日本の多くの企業に言えることだろう。

どのようにして観光業と繋げたビジネス展開を行っていくか?や、スポーツ関連や夏の暑さ対策グッズなども、景気動向を左右する鍵となっていくのかもしれないが、そこからどう動いていくかということも重要だ。

ショップやメーカーなど、様々な立ち位置で答えは変わっていくとは思うが、MMD TIMESが取材をしていて感じたのは、エンドユーザーや異業種の声などを生かして商品開発やMDを行っている会社は、やはり前向きな見解が見られたという点だ。

例えば、「バイヤーが考える、商品選定と売り場の関係」で紹介した、家具の総合商社である関家具が運営するライフスタイルショップCRASH GATEでは、住宅メーカーとの取り組みを通して幾通りものサイズの組み合わせが可能なシェルフを生み出した。「新たな需要とファンを育てる、アパレル×インテリアの相互作用」のJournal standard furnitureは、アパレルブランド発というファッション的なミックススタイルを生かしつつ、現代人の生活スタイルをヒントに、オフィス家具のような利便性とオシャレなデザインを兼ね備えたソファやテーブルを開発し、顧客からの注目も高まっているという。

セレクトショップを取り巻く業界では、異業種からのヒントを得ることで、まだまだ新たな可能性が見えてくるのではないだろうか。異業種との関わりから得られる発見は、今後のセレクトショップを取り巻く業界に大きな変化を与えてくれると言えるだろう。

オリンピックイヤーとなる2020年、これからもMMD TIMESは業界の動向に注視し、読者にとって有益な情報をお届けしていきたいと思う。

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