未来に向けて“Re-Think”するMONTAGE 29th
- SOLOW
- come and play.
- DAISHO TRADING CORP.
- umeloihc
- Mindart
Contents
アフターコロナに向けたアイテムたち
いよいよ我々は待ち望んできた「アフターコロナ」に足を踏み入れたのかもしれない。たくさんの人々や企業が“この時”のために戦略を練り、希望を見てきただろう。コロナショックにより開催を見合わせていた合同展示会も次々と幕を開け、出展企業や来場するバイヤーも徐々に増え、欧米と同じように以前の姿を取り戻しつつある。今回の2023年SSの展示会に参加した関係者は、それらを感じることができたのではないか。
MMD TIMES取材班も「EXHIBITION 2023SS」で紹介した展示会のいくつかに足を運び、取材を通してその実感を得られた。今回はそれら展示会のうちの一つ、「MONTAGE (モンタージュ) 29th」についてレポートしたい。
同展示会がテーマに掲げたのは「Re-Think」。アフターコロナのスタートラインに立つ今、2019年からのウィズコロナを振り返ると共に、これから先の未来に向けて改めて考えることが必要だ。
環境問題、エネルギー問題、雇用問題、そして各地で起こる紛争とその影響について、モノづくりを通して我々ができることは何なのか。もう長い間この課題と向き合ってきた気がする。少なくとも直近3年間は考えざるを得なかったのだ。
その考えがカタチとして見える場所が、合同展示会である。今回我々は、各ブランドがアウトプットするそれぞれの“答え” (＝商品) を紹介したい。他人の答えに触れることは、また自分とは異なる考えを取り込むきっかけにも繋がり、新たな答えを生み出すヒントにもなる。今期、展示会に足を運ぶことができなかった人も、この記事が自身の「Re-Think」のきっかけになれば嬉しい。
MONTAGE 29th 開催期間：2023年2月15日 (水) 〜2月17日(金) 会場：東京都立産業貿易センター 浜松町館 https://montage-express.jp/ ※MONTAGE 29thの会期は既に終了しています
”エスニックシック”という新提案が伝統を守る
「インテリア業界にもエシカルな消費を」をコンセプトに、2021年に創業した企業「SOLOW (ソロウ)」。同社は「Rock The Kasbah (ロック・ザ・カスバ)」と「CINQ ÉTOILES (サンクエトワール)」の2ブランドをチュニジアから輸入販売している。
MONTAGEには今回が初出展とのことで、大型のランプが会場の目を引いていた。「エスニックシック」という民族的な趣のなかに、上品なモダンさを持つアイテムたちは住宅だけでなく、店舗をはじめとする商業施設とも相性が良さそうだ。
現在展開しているのは、主にランプとミラー。それぞれチュニジアの職人による手編みの作業工程を経ており、使用されるのはヤシの葉や草木の一種であるアルファ、海藻シーグラなどだ。どれも天然繊維で、チュニジアの伝統の手工芸の技術により生み出される。
エスニックシックという新たなスタイルの提案を広げ提供することが、チュニジアの伝統的なモノづくりを守り、現地での雇用創出へと繋がっている。今後はラグなどの他アイテムも、展開予定とのことなので楽しみに待ちたい。
パフォーマンスウェアブランドが作る“鉢”
モノを作る過程で必ず出てしまうゴミ。サステナブルなモノづくりを考えたとき、人はそのゴミをゴミとしない方法を追求するだろう。アパレルブランド「come and play. (カム アンド プレイ)」が自身のメインアイテムであるパフォーマンスウェアではなく、全くの別アイテムとなる“鉢”を展開しているのは面白い。
岡山県の伝統工芸品「備前焼」の生産過程で廃棄される陶器ゴミをリサイクルして作られたオリジナル鉢は、同ブランドプロデューサーである宮里旭 (ミヤザト アキラ) 氏が備前焼に魅了され、廃棄物の存在を知ったところから製作がスタートした。
本アイテムがこれまでの取引先であるアパレルショップから、インテリアショップやグリーンショップへの販路拡大のきっかけになったという。
そこで同時に展開された「オーガニック＆サステイナブルライン」は、ガーデニングを楽しむ方や、フローリストも満足できるような遊び心のあるワークウェアだ。「Tech (テック)」「Work (ワーク)」「Organic (オーガニック)」「Sustainable (サステナブル)」の四つのキーワードのもと、リサイクルボアとオーガニックコットンデニムが使用された本商品は、グリーンブーム到来の今、周辺アイテムとして注目を集めることが期待される。
日常がサステナブルになる日を目指して
2020年の夏、プラスチック製買物袋の有料化が開始されたあたりから、国内での意識変化を顕著に感じるようになったと語るのは「ダイショートレーディング株式会社」。同社は「Enrich Your Life (エンリッチ ユア ライフ)」をコンセプトに、Natural (ナチュラル), Organic (オーガニック),Sustainable (サステナブル), Traditional (トラディショナル) にまつわるさまざまなプロダクトを世界各国から取り寄せた提案をしている。
販売代理店として取り扱いを開始してから20年以上経つという「LA CORVETTE (ラ・コルベット)」の「サボン・ド・マルセイユ」は、本国フランスでは300年の歴史を誇る伝統的なオリーブ石鹸。サボン・ド・マルセイユと呼ぶことができるのは、合成成分を添加していないオリーブとパームから作られる２種類のみなのだとか。伝統的な基準を守る限られた製造社だけが作ることを許されたモノなのだ。
また近年、問い合わせが増加しつつあるアイテムが木製歯ブラシだ。オーラルケア商品については、同社でもいくつかのブランドから展開があるという。これまでは“ただの高い歯ブラシ”という認識であったものが、最近は環境に良いものとして価値が認められつつあるそうだ。
環境に優しいサステナブルな商品は、そこにかける労力や技術を理由に、通常商品に比べ高価格帯に設定せざるを得ない。このことはサステナブルな消費の浸透を妨げている原因の一つといっても過言ではないだろう。世間のエシカル意識の向上と価格帯が相まって、ギフトとしてのニーズは一定数あるものの、デイリーユースへと広めていくことが作り手の本質的な目標達成のための課題と言える。
そのためには、効果や使用感の情報発信が売場やオンライン上で十分に行われること、「まずは使ってみる」という第一歩を促すことができれば今後の期待は大きい。
高まるアップサイクルアイテムへの期待
「MMD TIMESが占う2023年のセレクトショップ」でも伝えたように、業界内では年々サステナブルへの関心が高まり、SDGs関連商品が目立つなかでも、「アップサイクル」の割合は比較的低いように感じている。そんななかMONTAGE 29th内でいくつかのブランドやプロダクトに注目した。
ファーストシューズとして、子どもへ贈る革靴のクラフトキットを展開するブランド「umeloihc (ウメロイーク)」から紹介したいのは、カーペットからできたグリーンアイテム「upcycle planter (アップサイクルプランター)」。同商品は展示会の会場などで使用されたパンチカーペットをアップサイクルしてできたものだ。もともとファーストシューズキットをはじめとする生活雑貨を販売していた同ブランドが、合同展示会出展時に廃棄される予定のパンチカーペットの山を見た際、「なんとか再利用できないか」と考え作られたそう。
タイプは巾着型の「Pollin (ポリン)」、六角形の「Pepo (ペポ)」、豆型の「Pea (ピー)」の3タイプがそれぞれ6色、3サイズ展開されている。
プランターではなかなか見かけないユニークな形のため、売場では植物を入れた状態でのディスプレイがおすすめ。カーペットならではのあたたかみのある可愛らしいビジュアルは、消費者の目にも新鮮なものとして映るに違いない。フェルトの特性を生かし、プランターに必要な耐久性や通気性も抜群だ。
廃棄予定のカーペットを前に、カーペットとしてそのまま再利用することを考えるのではなく、全く違う用途として使われるモノへとアップサイクルしている点が本商品の面白い発想である。
エシカル消費について考える
続いて紹介する「PARAFINA (パラフィナ)」は、スペイン発のアイウェアブランド。なんと全ての製品はリサイクル金属 (アルミ製のソーダ缶)、リサイクルタイヤゴム、リサイクルHDPE (高密度ポリエチレン) プラスチックなどを原料とし、製造されているアップサイクルアイウェアだ。サングラスとリーディンググラスの二つのラインナップがあり、それぞれデザインも幅広い。
購入時に受け取るケースは100%リサイクルHDPEプラスチック製で、メガネケースとしてはもちろん、ペンケースとしても利用が可能だ。さらに、これらの商品を購入すると売上の5%が「Parafina Social Project (パラフィナ ソーシャル プロジェクト)」に寄付され、パラグアイの子どもたちへの奨学金や、学校支援資金に充てられる。環境への配慮だけでなく、これから先の未来を作る子どもたちへの配慮にもこだわったブランドポリシーには共感も多いだろう。
一つのアイテムを作ること・使うことで環境破壊を抑制し、人や国の発展を促せる、これこそまさに「エシカル消費」の本質ではないだろうか。同ブランドを筆頭に、今後もたくさんのブランドの「つくる責任、つかう責任」を体現したアイテムに期待したい。
Re-Thinkするきっかけをもらえる場
「常に未来を見て挑戦していかなければならない」という主催者の言葉と、今回紹介した5ブランドの商品が結びつく。「持続可能な消費のある生活」とはどんなものなのだろう。それと同時に、趣味を楽しんだり、好きなモノで心を潤したり、日々の生活をちょっと楽しくする、そんな「豊かな生活」は可能なのだろうか。
MONTAGEは、各ブランドがその時その時の“いま”出る答えを大きな熱量を持ってアウトプットしている合同展示会の一つであろう。未だないモノやコトを生み出し、新しい今を作り出す、それには勇気が必要かもしれない。しかし、モノが溢れ凄まじいスピードで技術の発展がある現代において、停滞することは後退することに等しいのではないか。
アフターコロナも次第に現実味を帯びてきた。時には手を止めることがあったとしても、今回紹介したMONTAGEのような合同展示会に足を運び、さまざまなブランドのアイテムを見て触れ、何かを感じ取ってみて欲しい。きっと展示会での交流は潜在的なアイデアとなり、再び手を動かす動力となるはずだ。
掲載企業・ブランド紹介
SOLOW (ソロウ)
国内外から独自のセレクトにより集められた商品による、エスニックシックなインテリアライフスタイルを提案する企業。「伝統手工芸の技術継続を担っている」「木の葉や海藻など、持続的利用が可能な天然資源を使用している」「女性や経済的弱者の社会的・経済的地位向上を担っている」など、デザインやブランドだけでなく、その作品のバックグランドを知ることにより、空間に取り入れて、心から心地の良いものをコレクションしている。
取り扱いアイテム：ペンダントライト、ブラケットライト、ミラーなど
公式ホームページはこちら
https://solow.jp/
come and play. (カム アンド プレイ)
エクストリームスポーツとファッションを融合させた「New Street Style」を提案するパフォーマンスウェアブランド。「Tech」「Standard」「Classic」「Carry」の4つのカテゴリーから形成され、様々なシーンの表現、“遊び服”を提供している。“動ける機能服”を表現するために各分野のスペシャリストを集結させ、日本の高機能なファブリックと繊細な縫製技術、そして優れたパターンメイキングを兼ね揃えたモノづくりが特徴。
取り扱いアイテム：パフォーマンスウェア、アパレル雑貨、植木鉢など
公式ホームページはこちら
https://www.comeandplay.jp/
ダイショートレーディング株式会社
化粧品や食品、日用品、衛生用品などの輸入及び卸売事業を行う企業。「Enrich Your Life (もっと生活を豊かに)」をコンセプトに、“Health & Beauty”や“Natural & Organic”といった世界中のストーリーある魅力的なプロダクトを発信している。
取り扱いアイテム：化粧品、食品、日用品、衛生用品など
公式ホームページはこちら
https://daishotrading.co.jp/
umeloihc (ウメロイーク)
umeloihcとは、ネイティブアメリカンのスピリットからの造語で、自然界のすべての根源は生まれてくる新しい生命に込められ、その中でも子供は自然からの大切な贈りものと考えられている。同ブランドが展開するファーストシューズキットは、そのスピリットを踏襲し、天然素材の持つ質感・風合いを生かしたモノづくりにこだわり、革の「鞣し（なめし）」作業を安全性が高いタンニン鞣しで行う。直接肌に触れるものとして素材や製法にこだわり、全ての製造工程を国内に限定し、安心安全なモノづくりを目指している。
取り扱いアイテム：ファーストシューズキット、プランター、生活雑貨など
公式ホームページはこちら
https://www.umeloihc.com/
株式会社マインドアート
「自分らしいスタイルで過ごすために」をコンセプトにヨーロッパやアジア諸国から品質とデザイン性に優れた製品だけをセレクトし、輸入販売する企業。また、オリジナルブランド「cookoo (クークー)」「Fabric mie (ファブリックミー)」「kotomono (コトモノ)」の展開やOEMなど、幅広く事業を展開している。
取り扱いアイテム：アパレル雑貨、キッチン・テーブルウェア、キッズ用品、アウトドア用品など
公式ホームページはこちら
https://www.mindart.co.jp/index.html
