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MONTAGE 28th 的サステナブル

2022年9月7日〜9日、「MONTAGE (モンタージュ) 28th」がTOC有明で開催された。前回の2月開催同様「消費行動が未来を変える」がテーマに掲げられ、環境に配慮した生産プロセスやリサイクル、リユースなどの再資源化までを考えたモノづくりに期待が集まった。

今回は、「消費行動で未来を変えるMONTAGE 27th注目アイテム」に引き続き、MMD TIMES編集部がMONTAGE出展社のなかから注目のブランドを取材。モノづくりのプロセスが「サステナブルであることは前提として、今の時代に求められる機能性、デザイン性、独自性のあるプロダクトを生み出すブランドや、技術の継承、地域の活性化や仕事の創出に貢献するモノづくりを行うブランド、全4社に話を伺った。

持続可能な消費と生産を目指して、「つくる責任」の追求が欠かせない昨今。“サステナブル”や“SDGs”といった言葉が名目になっていないだろうか。「つかう責任」が求められる消費者の目は、年々厳しくなっている。本記事を通して、今一度作り手、売り手が“今あるべき姿”を考え直す機会を作れたら嬉しい。

MONTAGE 28th
開催期間:2022年9月7日(水)~9月9日(金)
会場:TOC有明EAST・WEST 4F
https://montage-express.jp/
※MONTAGE 28thの会期は既に終了しています

MONTAGE 28th 注目4社

「サステナブルなモノづくり」。サステナブルが先かモノづくりが先か、きっかけはさまざまだろう。しかし、“サステナブル”という言葉だけで格好がつく時代は既に終わり、本質的なモノの価値――機能・デザイン・個性と並んで“環境負荷”が見定められる時代となった。

紹介するのは、持続可能な生産プロセスをもつ2社と、資源や技術を守りたいという想いからモノづくりを行う2社だ。

生地の魅力の裏側に

「元々は、この生地のムラとかアタリ (表面に型が付く現象) の独特な風合いが好きで、好きを追った先にあったのが“コーヒー染め”だったんですよ」。そう話すのは、ブランド「Canvascafé (キャンバスカフェ)」を展開するanaloog (アナローグ) の市川健太郎 (イチカワ ケンタロウ) 氏。

偶然出会った生地を調べたところ、それがコーヒーを使って染色された生地だと知ったという同氏。そして、コーヒー染めを知るのと同時に、その先に一つの環境問題があることを知った。それが、期限切れコーヒー豆の大量廃棄だ。

「商品を作り、コーヒー染めの魅力を広めるだけでなく、この問題を少しでも解決できないか」という思いから、Canvascaféでは賞味期限切れのコーヒー豆やチャフ (焙煎時に出る豆の皮) を使って生地を染色。染料抽出後のカスまでを、きのこ栽培の培土として再利用し、最後まで完全にゴミを出さない「循環型ゼロエミッション」を実現している。

煮出しで染料を抽出
アルミと鉄成分で媒染し、染め上がりの色を調整

今回のMONTAGE 28thで商品初披露という同ブランド。現在展開しているのは、エプロン、トートバック、ポーチの3カテゴリ。いずれの商品もコーヒー染めならではのあたたかな風合いと、鉄やアルミで媒染することで変わる“染めあがり”の色の違いを楽しめる。

生地の魅力の裏側に潜むストーリーを含め、消費者の共感を呼ぶ徹底されたモノづくり。今後の商品展開も期待したい。

赤いワンポイントはコーヒーの実をモチーフにしたもの

ゼロから生まれた数々の商品

数年前から“腸活”という言葉がトレンドに挙がるようになったのと同時に、発酵食品に注目が集まっている。そもそも発酵とは、微生物 (乳酸菌、麹菌、酵母など) の働きによりタンパク質や糖質などの有機物が分解され、アミノ酸やアルコールなど特定の物質を生成する現象だ。

株式会社ファーメンステーションは、2009年から発酵技術を活かした事業を展開。未利用資源を発酵・蒸留してエタノールを製造し、自社商品に活用、または原料提供や、これらの原料を用いたOEMを行っている。

今回注目したのは、自社ブランド「FERMENSTATION (ファーメンステーション)」のプロダクトたち。岩手県奥州市の休耕田 (耕作を休止している田畑) で、商品の原料となるオーガニック玄米 (有機JAS認定) を栽培し、お米から発酵粕である「米もろみ粕」まで活用。商品は、そのJASオーガニック米を発酵・蒸留して製造された肌にマイルドなエタノール (アルコール) をはじめ、その過程で残った米もろみ粕を使った洗顔石鹸、ハンドスプレーなどさまざまだ。どの商品も石油由来の原料、合成香料、合成保存料などは一切使用していない。

日本で唯一の国産オーガニックライス・エタノール製品
米もろみ粕と畑で育てたひまわりの種から搾油した油が原料の石けん

また、米もろみ粕は化粧品原料としての機能性だけでなく栄養も豊富に含まれるため、鶏や牛の餌としても活用。その鶏糞を田んぼやひまわり畑の肥料として使い、ゴミを出さない循環型のモノづくりを実践している。

「一度に全てを変えるのは難しいことだけど、少しずつでも身近なところから、自分にも環境にも優しいモノを取り入れてほしい」と語るのは、代表取締役の酒井里奈 (サカイ リナ) 氏。“発酵”や“サステナブル”という言葉がトレンドとして消費されない未来を願う。

資源の利用が島を救う

ANALOG (アナログ) 株式会社は、神奈川県横浜市で一級建築事務所を営む企業。2019年、代表取締役である池田暢一郎 (イケダ ヨウイチロウ) 氏の生まれ故郷である離島・隠岐の島の森林資源を守るために新たにブランドをスタートした。それが、黒文字製品を扱う「瑞枝 MIZUE (ミズエ)」と木製品を扱う「mytreee (マイツリー)」だ。

「神の島」とも呼ばれる隠岐の島の80%は森林で、島では古くから林業が栄えている。島民は木を伐ることで生計を立て、同時に山を守り、次代に向けて植林しながら資源を繋いできた。しかしながら、近年の国産材需要の低下や少子高齢化の影響による担い手の減少で林業が衰退。同社はこの現状に危機感を覚え、島の森林資源貢献のために同事業をスタートさせたという。

瑞枝MIZUE (ミズエ)では、隠岐の島の黒文字という落葉樹から精油や蒸留水を抽出し、それらを原料とした商品を展開。楊枝などに使用される黒文字は、隠岐では昔から「福木 (フクギ)」と呼ばれ、身近な樹木として共存してきた。日本では北海道以外の全土に植生しているのだが、隠岐の黒文字は香りと成分構成が本土のものとは異なり、バランスの良い甘く清らかな深い香りがするそう。同ブランドでは、杉林の手入れの際に足元に生息している黒文字の枝葉や下草を用いて、アロマオイルを抽出。黒文字には香りの良さだけでなく、胃腸や肌を整える成分も含まれている。

抽出の様子
枝葉(左)と木部(右)で異なる香りが楽しめる

また、もう一つのブランドmytreeeでは森林整備のため伐採した植物や、伐採後に未使用のまま用途がなくなってしまった材を使用し、商品を開発。なかでも「丸太プレート」は、フードやファッション、アウトドアなど、幅広いジャンルでのシーン展開が期待できる。

「ブランドを通して、隠岐の島自体の認知拡大や島の資源の魅力を伝えていきたい」と、ディレクターの池田瑞絵 (イケダ ミズエ) 氏は語る。今回で3度目の出展となるが、時間をかけて同展示会での出会いが少しずつカタチになってきているそうだ。これからの新たな展開を待ち望む。

マッチングで生まれる新プロダクト

人口減少や産業の都市集中が原因で、一部のメーカーでは技術があるにもかかわらず、事業縮小せざるを得ないのが現状だ。そこでOsaka Metroは、大阪を中心とした製造企業とブランディングの専門家やデザイナー、小売・流通アドバイザーなどをマッチングし、新たなブランド創出を図るプロジェクトを進行している。

そこで実際にマッチングが成立し、商品化が叶ったブランドが「ROULETTE (ローレット)」だ。金型用部品を製造する「株式会社ビゼン」と「Yu Nomura Design (ユウ ノムラ デザイン)」のデザイナーである野村悠 (ノムラ ユウ) 氏がコラボレートして生み出したのは、高度な金属技術を活かした真鍮製ホームケア商品。

凸凹状のローレット加工を施したアタッチメントに精油を垂らして使用

真鍮製のベースとアタッチメントの組み合わせで、アロマディフューザーやお香立て、キャンドルスタンドにも形を変えるユニークなプロダクト。ブランド名にもなっている「ローレット加工」とは、細かい凹凸を施す加工技術のことで、この加工によってアロマオイルが滞留し、長時間香りを楽しめるようになるのだそう。

株式会社ビゼンでは、金属を回しながら削る技術を持ち、円状・円柱状に特化した部品を製造していることから、パーツとしての形状の制約があったという。「円という形からできるモノを考える、その工程に一番苦労しました」と野村氏。これまでにないデザイン性の高い商品は、会場でも目を引いていた。

一般消費者向けの商品を作るのは今回が初めてという職人の新たなモチベーションに繋がるだろう。同ブランドの今後が楽しみだ。

常識の先の一歩進んだアプローチを

SDGsという言葉も珍しくなくなってきた今、どの企業やブランドも当たり前のこととして「サステナブルな取り組み」に注力している。それは、今回取材したMONTAGE以外の他の合同展示会を見てまわっていても感じる印象だ。このことは展示会場だけでなく、売場においても同じことが言える。つまり、展示会でも売場でも「サステナブル」が“飽和”しているのだ。

「サステナブルなモノづくり」とは、流行りで経過するものではなく、今後終わることなく必然的な要素となるだろう。そう考えると、“飽和” という言葉は正しくないのかもしれない。しかし、どの企業も同様のアプローチに偏ってしまっては、商品や情報の区別が難しく、売り手や買い手も手を伸ばすことが難しいのではないだろうか。

すでに、「サステナブルか、そうでないものか」という選択をしていた時代から、「サステナブルなモノから何を選ぶか」という時代に変化しているのである。消費者にとって、この判断基準や価値観が当たり前になろうとしている今、他ブランドとの差別化を図る、もう一歩踏み込んだアプローチが必要なのだろう。

合同展示会で対セレクトショップに伝えるときは、どのような伝え方がいいのか。また、セレクトショップが消費者に伝えるときはどうすべきか。これらを考えた時に、ターゲットやショップ形態、売場の環境などに合わせてアプローチを変える必要性に気付くはずだ。また、ブランドと相性のいいPRを取り入れたり、ブランドならではのプラスαの個性を押し出することも必要となるだろう。

サステナブルなモノづくりの今後の観点として、コミュニケーションの取り方にも注目していきたいと思えた取材だった。次回2023年2月に続くMONTAGE 29thにも、さらなる期待を寄せたい。

掲載企業・ブランド紹介

Canvascafé (キャンバスカフェ)
「analoog (アナローグ)」が展開する、コーヒー染めで世界を目指すブランド。賞味期限の切れたフードロスのコーヒー豆やチャフを使って染めた商品を展開する。

取り扱いアイテム:エプロン、トートバッグ、ポーチ

Instagram:@ canvascafe68


FERMENSTATION (ファーメンステーション)

岩手県奥州市の休耕田で栽培された無農薬・無化学肥料のオーガニック米を発酵・蒸留してエタノールを製造するブランド。製造過程において、ごみを出さない循環型でサステナブルな取り組みを実践中。

取り扱いアイテム:エタノール、ボディ&ハンドケアアイテム、スキンケアアイテムなど

公式ホームページはこちら
https://www.fermenstation.jp/


ANALOG (アナログ) 株式会社

一級建築士事務所として、建築デザインやインテリアデザインを行う他、黒文字製品を扱う「瑞枝 MIZUE (ミズエ)」と木製品を扱う「mytreee (マイツリー)」を展開する企業。

取り扱いアイテム:木製品、アロマ製品など

公式ホームページはこちら
https://anlg.co.jp/


ROULETTE (ローレット)

Osaka Metroのマッチングプロジェクトから誕生したブランド。金属加工50年の歴史をもつ「株式会社ビゼン」とデザイナーの野村悠 (ノムラ ユウ) 氏がコラボレートし、高度な金属技術を活かした真鍮製ホームケア商品を展開している。

取り扱いアイテム:アロマディフューザー、インセンススタンド、キャンドルスタンド

公式ホームページはこちら
https://roulette.buyshop.jp/

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