2023.01.31.tue

EXHIBITION 2023SS

Contents

“個”の表現が求められるセレクトショップ

時代は既に、「あれば売れる」のフェーズから「良いモノが選ばれる」フェーズへと移行している。商品選定においてトレンドをおさえるだけでは他社との差別化が図れず、独自性だけを追い求めれば消費者のニーズから離れてしまう危険性もある。セレクトショップは自社のブランディングを確立させ、それを体現し、かつ消費者のニーズにも寄り添った商品選定を行っているだろう。しかし、消費者が「これは良いモノだ」と思う理由は商品単体の価値だけには限らない。

消費者はモノの価値に加えて、それによるコト体験や「誰がどのように紹介していたか」にも影響される。パルス型消費といった新しい基準でも「良いモノ」を判断して購入するのである。「STAFF OF THE YEAR 2022が示す令和のカリスマ店員」で紹介したように、時代は再びショップスタッフ、つまり“個”の大切さを見直し始めている。売場に並ぶ商品がショップの持つ独自のカラーに合っていること、そしてそれにショップスタッフ一人ひとりの個性を掛け算して、より魅力的に提案できていることが重要なのではないだろうか。これからはスタッフ個人の魅力を引き出すことが来店促進や購買率向上に対して有効になるといえよう。

それを踏まえ商品選定について考え直すきっかけとして、合同展示会の開催を控えた今は絶好の機会だ。商品選定やトレンドの動向を探るために合同展示会は情報収集に欠かせない。ショップの持つカラーを損なわず、さらに心惹かれる提案を可能にするために、「誰がどのように提案すれば一層消費者に響くか」を考えながら商品選定を行ってみてはいかがだろう。 (2023年1月31日掲載時点での公開情報)

日本最大の国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」

第95回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2023
開催期間:2023年2月15日(水)~2月17日(金)
会場:東京ビッグサイト東展示棟
https://www.giftshow.co.jp/tigs/94tigs/index.htm

Gift Net®
ビジネスガイド社主催見本市『出展社商品情報ポータルサイト』
https://www.giftnet.jp/

第95回目の〔東京インターナショナル・ギフト・ショー〕は「オムニチャネルで、日本経済の再生を PARTⅡ」と題し、前回に引き続きオンラインショップとオフラインショップの双方にとって、販売促進となるオムニチャネルにフォーカスしている。消費者に購入経路を意識させず、ショッピングそのものを楽しんでもらうための店舗作り、ひいては小売業全体の発展を目指す。

コロナ禍でオンライン取引が増えたとはいえ、それはあくまで一過性の取引であると考えているのが同展示会だ。SNSやオンラインショップで商品情報を受信して、購入後には自らがSNSで拡散をするという一連の流れ。それをオンライン上のみに留めず、消費者にさらなる楽しさを提供できるのはオフラインショップでのショップスタッフとの交流や、試着などの体験があってこそだろう。顧客行動の多様化が進むなかオムニチャネルの活用が必要不可欠といえる。

暮らしのなかのさまざまなカテゴリにまんべんなく触れられるのは、ギフトショーならではの最大の魅力ともいえる。是非活用してほしい。

展示品の魅力を引き出すインスタレーションを演出する「MONTAGE」

MONTAGE 29th
開催期間:2023年2月15日(水)~2月17日(金)
会場:東京都立産業貿易センター 浜松町館
https://montage-express.jp/

会場を浜松町へと移し開催される今回の〔MONTAGE 29th (モンタージュ)〕のテーマは「Re-Think (リ シンク)」。目まぐるしく変化する世界に対し、変革と改革が必要となる時代へと移行していると捉え、SDGsの目標12にある「つくる責任、つかう責任」が求められているなか、同展示会は持続可能な消費と生産に対しライフサイクル全体を通じて資源の利用及び再利用を促す。

売場での商品展開のお手本を示されているのがMONTAGEの特徴だ。トレンドを意識したコンセプトの設定により、会場に統一感を作り出している同展示会では、多種多様なカテゴリを展開するセレクトショップにとって売場の指標にしやすいだろう。

基本となるお手本が分かれば、そこにスタッフ一人ひとりの個性をつけ加えたり、自社内で取り扱う他商品と合わせた提案方法などの応用も効かせやすい。自社の個性をより発揮できるアイテムと見せ方を探ってほしい。

日本のいいものと、いい伝え手を繋ぐ「大日本市」

大日本市
開催期間:2023年2月15日(水)~2月17日(金)
会場:イベントスペース EBiS303
https://www.dainipponichi.jp/shop/pages/exhibitions202302.aspx

今回で第10回目の開催となる〔大日本市〕は「新しいものづくりが集まる場所」をテーマに、日本の工芸を中心とした全国のモノづくりメーカーが集う。同展示会では産地の一番星を目指す工芸メーカーと、モノづくりに共感の深いバイヤーが集まり、双方の需要に当てはまるマッチングを可能にした。

会場内には地域色豊かなモノづくりが集まり、産地を巡るように商品を探すことができる。50社前後の選ばれた作り手が、新商品提案・実演・試食など、さまざまなアプローチで商品の魅力を伝えてくれるという。モノづくりの良さを伝えるための接客勉強会や小売店の学びになるトークイベントを開催するなど、出展社は実際の売場での展開やSNSで情報発信するうえで活用できる知恵をたくさん収集できる。

情報収集が容易な今、感度の高い消費者のなかにはモノづくりの背景に注目し、購入の決め手とする人々も多くいる。商品のことをより深く知り、どのような背景で作られたか、そこにどのような想いが込められているのかを理解し、消費者に積極的にバトンを繋ぐようにして伝えていくことが集客へと繋げられるだろう。

新時代を創るクリエイションの祭典「NEW ENERGY TOKYO」

NEW ENERGY TOKYO 2023
開催期間:2023年2月25日(土)~2月28日(火)
会場:新宿住友ビル三角広場
https://new-energy.ooo/

展示会、マーケット、メディアを内包した複合型イベントが〔NEW ENERGY TOKYO (ニューエナジートウキョウ)〕だ。同展示会は従来の合同展示会としての機能を保ちながら、幅広い来場者との交流を通して参加ブランドの思想や創造性を多くの方に伝え、エンゲージメントの高いコミュニティーの醸成へと繋げることを目的としている。

四日間開催されるうちの前半二日は、一般の方も来場が可能なMARKET DAY (マーケットデー) となり、後半二日のBUSINESS DAY (ビジネスデー) では消費者の反応を確かめながら売場での展開を検討することもできるだろう。

そして、NEW ENERGY TOKYO の見どころとして、クリエイターの発掘や育成をサポートするインキュベーションプロジェクト「EMERGING (エマージング)」もある。厳格に行われるオーディションを通過するのは創造の幅を拡げ、飛躍に向けて挑戦を止めることがないクリエイターたち。他では無い出会いを探してみてほしい。

また、さまざまな企業とのタイアップにも注力していることから、商品展開のみならずイベントの共催など多方面での繋がりを作るのも面白いかもしれない。あくまで自社の個性を一層引き出すために、商品のみに焦点を絞らず広い視野で臨んでみてはいかがだろうか。

“ごちゃまぜ”な世界観を提供する「JUMBLE TOKYO & WELLNESS MARKET」

JUMBLE TOKYO AUTUMN / WINTER 2023
開催期間:2023年3月8日(水)~3月10日(金)
会場:ベルサール渋谷ファーストHALL B1
https://jumble-tokyo.com/

毎回多種多様なテーマ別の企画展示が魅力の〔JUMBLE TOKYO & WELLNESS MARKET (ジャンブルトウキョウ&ウェルネスマーケット)〕。今回もそのなかから注目のテーマを二つ紹介する。

日本国内の新しい商材を発掘する展示はシリーズ第三弾となり、今回は日本でも独特なカルチャーを持つ四国にフォーカスした。メインコンテンツは四国で最大級のアウトドア、キャンプイベント「Setouchi Days (セトウチデイズ)」とのコラボレーション。アウトドアグッズ以外にも陶器、藍染や雑貨、4県の特徴的なビールなど、四国の魅力をたっぷりとキュレーションしている。

二つ目は「“Enjoy your field life” 〜Sauna meets the outdoor (“エンジョイ ユア フィールドライフ” サウナミーツアウトドア)」。ブームからライフスタイルの一部になりつつあるアウトドアカルチャーのなかでも、急速にアウトドアでのサウナ施設が広がりつつあることに着目し、同展示会では日本のバレル (丸い樽) サウナ文化のパイオニアである「ONE SAUNA (ワンサウナ)」協力の元、新しいfiled sauna (フィールド サウナ) の世界観を展開する。

長く続くアウトドアブームは、新規でアウトドアブランドを取り扱うセレクトショップも増加させた。付け焼刃の取り扱いではなく、自社ならではの強みを付加させたうえで何を選んでいくべきか見極めてみてほしい。

ショップスタッフが愛着を持つ重要性

セレクトショップの商品選定において他社との差別化をどのように行うか、そこに正解は無い。例えば「“プリミティブ”な商品が持つ魅力」のように独自性を出すために専門性を突き詰めるショップがあれば、「ギフトのセレクトショップ BIRTHDAY BAR」のように“ギフトとして”購入者も贈られる相手もみんなが喜べるモノを選定するショップもある。

自社のコンセプトを体現する商品を選定し、他社との差別化を可能にしても、次はそれらを求めている人に向けた情報発信にも工夫をしなければならない。SNSの発展は売り手の情報発信を促進させた反面、情報の海に埋もれないよう、なおかつ消費者に的確に届けなければならないからである。ではその情報発信において独自性を表現するにはどうすべきか。

繰り返しになるが他社との差別化を図るうえで欠かせない最後の要素が、そこで働く“ヒト”ではないだろうかと思う。なぜなら冒頭で述べたネットで直感的に買い物をするパルス型消費においては6つの直感センサーが働くとされる。価格や安全性など従来の価値観も存在するなか、「フォロー」と呼ばれる新たなセンサーは「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応する直感センサーである。まさに人の推薦が購買行動に大きな影響を与える時代になったといえるのだ。

一つのモノに対して、その最たる魅力は何か、消費者にどう見せていくか、どう感じてもらいたいか。それらを消費者へ伝えるためにはショップスタッフがモノへの愛着を持ち、伝えたいと思うことこそが大切なのである。これこそがセレクトショップの持つ強みにも発展するだろう。

合同展示会では、新商品やそれまで知らずにいたブランドと出会えることが価値の一つである。しかし既に取引のあるブランドであっても、その商品を誰がどのように売場で展開し消費者へ伝えていくか、ショップスタッフの個性を引き出すことを意識しながら探せば、今までにはない視点の商品を選定できるかもしれない。

BEAMSのメディアコマース『B印MARKET』」でも紹介したように、ショップスタッフ一人ひとりがモノに抱く愛着を発信する取り組みを行っている企業は既にある。好きなアイテムの良さは自然と人に伝えたくなるもの。売場で展開するうえで「売れそうなモノ」としてではなく、「自分なら消費者に必ず良さを伝えられるモノ」として自信を持って扱えるものを見つけてほしい。

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