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DESIGNART TOKYO の発起人の想い

DESIGNART TOKYO

2017年に始動した日本最大級のデザインとアートの祭典〔DESIGNART TOKYO 2019(デザイナート・トウキョウ)〕が2019年10月18日(金)よりスタートした。今年も初日から多くの来場者が訪れ、会場は連日賑わいを見せている。

これから来場する方は、DESIGNART TOKYOの発起人で代表を務める青木昭夫氏に見どころなどをインタビューした「DESIGNART TOKYO 2019 vol.01 〜DESIGNART TOKYO 2019まもなく開催!注目コンテンツは?〜」も、ぜひ一読していただきたい。今回のDESIGNART TOKYOをより楽しむための一つの道標となるはずだ。

この「DESIGNART TOKYO 2019 vol.2」では、“30年続けていきたい”と語る青木昭夫氏から伺った、DESIGNART TOKYOの活動をはじめた背景や、理念、今後の展望など詳しくお届けしたい。

DESIGNART TOKYO (デザイナート・トウキョウ)とは?

DESIGNART TOKYO 2019
DESIGNART TOKYO 2019
http://designart.jp
2019年10月18日(金)~10月27日(日) 
会場:表参道・外苑前 / 原宿・明治神宮前 / 渋谷・恵比寿 / 代官山・中目黒 / 六本木 / 新宿 / 銀座 
DESIGNART 発起人:永田宙郷(EXS) / 川上シュン(artless Inc.) / 青木昭夫(MIRU DESIGN) / アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture) / マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture) / 小池博史(NON-GRID/IMG SRC) 
※DESIGNART TOKYO 2019の会期は既に終了しています

DESIGNART TOKYO(デザイナート・トウキョウ)の歩み

DESIGNART TOKYO 2017

DESIGNART TOKYOの開催に至った経緯を教えてください

− 主催者コメント: 今までデザインイベントに15年以上関わってきましたが、その中で“会場となる店舗と作品を発表したいクリエイター双方に無理のないタイアップ型のイベント”ができないかと考えたのがきっかけです。

DESIGNART TOKYOの構想を巡らせていた2016年は、東京オリンピックのエンブレム騒動や競技場のデザイン問題、それと東京で開催されたデザインイベント中に起こってしまった事故が重なり、世の中が“デザイン業界に対する不信感”を持っている時でした。

本来デザインやアートというのは、人々の暮らしを豊かにするために存在するものですが、このままではデザインとアートが持つ本来の意味が消滅してしまうのではないかという危機感を抱きました。

そこで、同じ志を持つ5組6人の発起人が集まり、株式会社デザイナートという会社を立ち上げたんです。単なる委任団体ではなく法人化したのは、イベント運営の責任を取る覚悟を表明するという意味が大きかったですね。

− 主催者コメント: 発起人の5組6人は、グラフィックアーティストや建築家、インタラクティブアートのパイオニア的存在、工芸品のプロデューサーなど、それぞれ持ち味の違うスペシャリストで構成されており、ひとつの業界に縛られずジャンルレスに業界も人種も超えて、横断的に国内外を渡り歩けるチームです。

これにより、印刷物やWEB、空間、編集などのイベントに関する物が関係者内で制作可能なため、イベントの費用を抑えながら運営ができます。それぞれが得意な分野で役割を無理なく担当できるので、DESIGNART TOKYOを継続しやすい仕組みになっています。

DESIGNART発起人
インタビューにご協力を頂いた青木氏(左から3番目)をはじめ、多彩なスペシャリストで構成される発起人たち

今年で3年目の開催となりますが、何か変化はありましたか?

− 主催者コメント: 世の中で求められているモノが変わってきていますね。今は、世界的に「アノニマス」か「アートコンシャス」か、という両極端な流れがあります。まず一つ目の「アノニマス」ですがプリミティブだったり、純真無垢だったり、よりシンプルなモノを求める傾向があります。

これは、リーマンショックや震災などの影響もあり“原点回帰”の思想が広まっているんです。余分なものを削ぎ落としたシンプルで美しいものが好まれています。

その一方で、二つ目の「アートコンシャス」が好まれているのは、多くのものがシンプル・素朴化していくと、アノニマスが飽和状態になっていくので、そのカウンターパートとしてアートコンシャスやデコラティブなものが好まれています。自分を取り巻く全てのものをシンプルにするのではなく、その中で何か一つでも「輝くもの、心から欲しいと思うものを取り入れたい」となるんです。

「アノニマス」か「アートコンシャス」かの二つの流れがある事で、市場動向は変わってきたと感じています 。

DESIGNART TOKYO 2018 TODD JAMES at NANZUKA

変わってきた市場に対して、DESIGNART TOKYOはどのようにデザインとアートを発信していくのでしょうか?

− 主催者コメント: まず考えたいのが「なぜ僕らはモノを生み出すのか?」ということです。モノが溢れている世の中に対して、同じようなモノを重ねていっても意味がないと思うんですよ。

デザイン上すでに形状が固まってきているものを単にコピーしたりリピートしたりして増やしていくのではなく、どうせ生み出すのならば“ありそうでなかったもの、感動を与えられるもの”を作る必要があるのではないでしょうか。

デザインやアートの本当に気に入ったモノを所有することで、毎日が楽しくなったり、心が癒されたりすることの大切さや豊かさを伝えていくのが、私たちの使命だと思うんです。

− 主催者コメント: 市場全体としては、安くて機能も満たしているモノも多く、人々がデザインに触れることが多くなってきています。しかし、本当の価値・感動を与えられるモノとの出会いはまだまだ少ないと感じています。

世界中には様々なモノがあり、それを自身が所有することで得られる喜びがあります。DESIGNART TOKYOのグランドコンセプトは“Emotions ~感動の入り口~”です。DESIGNART TOKYOでは、世界の良質な伝統産業やものづくりのアイデンティティをデザインやアート、アイデアで明確にして発信しています。

会場では今まで出会ったことのない、マインドリセットされるような特別な高揚感を与えてくれるモノを、ぜひ見つけて欲しいと思います。

期間限定の作品やインスタレーションの取り組みの意味

ここでしか見られないインスタレーションや期間限定のコラボレーション
話題のクリエイターを起用した五感を刺激するインスタレーションや空間とクリエイションのマッチングは見逃せない見どころだ

DESIGNART TOKYOでは期間限定の作品やインスタレーションがありますが、どのようにして出展者を決めているのでしょうか?

− 主催者コメント: 期間限定の作品やインスタレーションは公募で決めています。出展者を募集してプレゼン資料から審査を行っています。期間限定の作品やインスタレーションの最大の見どころは“マッチング”です。

コンテンツを求める店舗や貸しスペースと、展示場所を求めるデザイナーやアーティストを引き合わせることを目的に行っています。昨年は約50のマッチングが実現しました。マッチングでは、家具×ファッションなどまったく違うジャンルを掛け合わせることで、今までとは違う視点から新しい気づきを発信し、イベント中に色々な場所で同時多発的に新しい化学反応を起こすことができます。

このマッチングをすることによって、店舗にとっては新しい顧客の開拓プロモーションになり、クリエイターにとっては発表の場になり、ブランドにとっては新しいデザインへ挑戦できる機会になるという、多方面にメリットがあるような仕組みになっています。

今年ミラノサローネで公開された「THE NATURE OF TIME」の東京展。
グランドセイコーが追求する“時の本質”「THE NATURE OF TIME」

出展者の選定基準はありますか?

− 主催者コメント: 明確な基準があります。それは“感動”です。DESIGNART TOKYOのグランドコンセプトである“Emotions ~感動の入り口~”に、則しているかどうかで決定をしています。“感動”は明確な基準ですが、且つ曖昧な部分でもあるので、発起人や事務局で心が動くかどうか?を吟味して決めています。

例えば、売り場の演出の延長だったり、既存の商品を展示会のようにディスプレイしただけのものだったり、単にお金をかければできるようなものは選定から外れます。

来場者には、どんなモノに出会えるかわからないワクワク感を与えたいと考えていますので、シンプルなモノでも既製品でも構わないのですが、マッチングした時のリアルな現場で感動を与えられる工夫のあるものかどうかが重要な選定ポイントです 。

デザイン・アートの30年後を見据えて

今後のDESIGNART TOKYOの展望を教えてください

− 主催者コメント: 私は常々“30年続けていきたい”と言っています。この“30年”というのは、このくらいの年数を続けないと日本の文化として根付かないと思っているからです。東京は世界においてもテクノロジー、伝統、アニメなど様々なモノや価値観が存在する“稀有”な都市です。

パリだったらファッションを中心としたデザインがあり、ミラノだったら家具を中心としたデザインがあるなど、各国にそれぞれの特徴がありますが、DESIGNART TOKYOを続けることで東京のミックスカルチャー加減を突き詰めて、東京の持つ“何が起こるかわからない、ワクワクするような楽しさ”という価値観を伝えていきたいです。

現在、DESIGNART TOKYOが見込んでいる来場者数はのべ20万人です。2030年には世界的な展示会で有名なミラノサローネの50万人を超えたいと思っているのですが、まだまだ課題もあります。

ミラノサローネに追随するイベントになるための課題とは?

− 主催者コメント: 日本人の民族性や、言葉のコミュニケーションの壁が邪魔をして、国外に対してクローズな印象を与えてしまっているのが問題だと考えています。もっと国を超えた関わりというものが当たり前になっていかなければ、グローバルなイベントに成長していくのは難しいと感じています。

そのためには「自主性」というものがとても重要です。ミラノサローネでは、出展者が展示場所の交渉からプロモーションまでを自主的に行っています。作品を出展するために、展示会やイベントが用意してくれたツールを使って全て運営側に任せるのではなく、作品を表現する為により良い環境や告知方法を、出展者自ら追求しているんです。

東京は海外からの関心が高いので、DESIGNART TOKYOの主催者である我々を含め、もっと日本人全体が「自主性」を持つことができれば、海外の人々が日本に対して感じるクローズな印象や敷居が高いという印象を払拭していけると思います。DESIGNART TOKYOを通じて“デザインやアートの敷居は低く、クオリティーは世界トップレベルのもの”にしていきたいですね。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

これからのビジネスに必要なものは「人と人との深い繋がり」

青木昭夫氏は、これからのデザイン・アートを含め、ビジネスにおいて一番重要なのは「人と人との深い繋がり」だと言う。デザイナー・クリエイター・アーティストにとっては、活動の幅を広げる時に「人と人との深い繋がり」が重要な役割を担う。

例えば、自ら海外の店舗に作品を置いて欲しいと口説きにいく時、どのように交渉を進めるかは知識や経験が必要だが、様々な人とコニュニケーションをとることで得た「繋がり」は、自身に足りない部分を補ってくれるだろう。

セレクトショップ・小売店にとっては、独創性のある編集がされた売り場を作る時に「人と人との深い繋がり」が重要な役割を担う。売れるビジネスを優先した店舗編集をしていくと、どこにでもあるような売り場になってしまうが、そこにオーナーやスタッフの顔が見えるような独創性があることで、唯一無二のブランドへと成長していけるのではないだろうか。独創的な編集をするために、どういったモノを仕入れるべきか?と考えた時、ものづくりをしている人との「繋がり」や、情報を持つ人との「繋がり」が重要になってくるのだ。

青木昭夫氏の話を聞き、これまでボーダレスに繋がれる機会がなかった人にとって、”DESIGNART TOKYO”は新しい価値を創造するデバイスにもなり得るのだと感じた。

ブランディングをする上でのプロモーションは、今まで活動をしてきた舞台から領域を超えていく必要がある。先の記事でも述べたが、DESIGNART TOKYO 2019では、ぜひ遠慮や臆することなく、会場内で出会う多くの人々と積極的にコミュニケーションを取り、新たな繋がりを創造して欲しい。

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