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PRのためのマッチングプラットフォーム

アイデアをカタチにする力とスピード――昨今急成長を見せている企業のほとんどに共通する強みだろう。これまでMMD TIMESでは、長く信頼を築き上げてきた老舗企業から、若くて業界に新たな風を吹き込むベンチャー企業まで、実践力とスピード感を持つ企業を多く取材してきた。
株式会社ひなたライフもその企業のうちの1社。実店舗を持たないECサイト「Hinata Life (ヒナタライフ)」を立ち上げ、設立からわずか3年で月商1億円を達成するほどの勢いのある会社だ。
その先陣を切るのは江戸 英雅 (エド ヒデマサ) 氏。代表取締役である江戸氏が自ら切り開いていく道は、アパレルのEC業界という他業界にいたからこそ見出せるものであり、インテリア業界にとっては新鮮で斬新なものである。

「ECの概念を変える『ひなたライフ』の戦略」でも紹介したように、同社の成長に拍車を掛けているのは、サイトコンテンツの強化とP Rとしてのインフルエンサーマーケティングの成功だ。ひなたライフの成功事例は、他業界と比較して後れを取るライフスタイルEC市場に希望を与えるニュースだといえる。
前回の取材直後に公式アプリをリリースし、初月はなんと9万ダウンロードという業界として驚異的な数字を出した同社。また、強みであるInstagramのフォロワーは、前回取材時から今に至るまでに15万人ほど増加し、現在は50万人を超えているようだ。
この驚くべき成長の理由とは一体何なのか。あれから1年経たずとして新たなPR施策「hina友 (ヒナトモ) プラットフォーム」の始動を耳にした。この施策、広告費0円という破格でインフルエンサーにアプローチができるというからには、ブランドにとっては願ったり叶ったりの企画なのではないか。早速取材班は江戸氏の元へ訪れ、そのアイデアの根源と構想を伺った。

Hinata Life (ヒナタライフ) https://www.gpdl2020.com/ 株式会社ひなたライフが運営するインテリア雑貨ECサイト。「ひなたぼっこのような温かい暮らしのお手伝いをしたい」というコンセプトをもとに2018年1月にオープン。2021年6月現在Instagramアカウント (@hinatalife) のフォロワーは50万人を超え、「ひなたライフ公式アンバサダー」、「hina友」と称されるライフスタイル系インフルエンサーを合計1000名以上抱えている。
「PRしてほしい」と「PRしたい」のマッチング

新たなPR施策について教えてください
− 江戸氏コメント:一言で表すと「インフルエンサー広告を無償でできる施策」です。これまでは、我々がブランドとインフルエンサーの間に入って、ひなたライフからインフルエンサーへPR依頼をするようなスタイルでした。
一方この施策は、両者のマッチングプラットフォームを作ることによって、両者での直接的なアプローチを可能としました。
プラットフォームはクローズドサイトで作っていて、「hina友」と呼ばれるインフルエンサーのみログインできる仕様です。

− 江戸氏コメント:ブランドは、Hinata Lifeに出品している商品であれば、プラットフォーム上に商品をアップでき、インフルエンサーに対して好きにPR募集をかけることができます。
hina友は、プラットフォームに出品されている全てのアイテムの中から好きな商品を選び、実際にモニターとして利用することができるんです。これまでの、「ブランド側からPRを“依頼する”」という形式から「インフルエンサーから“申し込みをしてもらう”」というスタイルに変えられた点は大きな変化ですね。
それによって、両者のコミュニケーションにストレスが発生することなく「PRしてほしい」「商品を実際に使ってみたい」というWinWinな関係が成立します。
限られたリソースをどこに注ぐか

立ち上げのきっかけは何だったのでしょう?
− 江戸氏コメント:物理的にPR依頼の件数が増加したことが理由の一つです。Hinata Lifeというサイトの認知も広がって、出店企業もアイテム数も増加し、それに伴いユーザーの数も増えました。我々もやるからにはクオリティを落としたくないと思う一方、リソースには限界があります。
それはインフルエンサーにも同様のことがいえて、我々が抱えるインフルエンサーである「ひなたライフ公式アンバサダー」も当時300名と、出品アイテムと比較すると人数が少なく、PRの需要と供給が成り立たなかったんですね。それに、受動的に受けるPRはアンバサダーとしてのポストの質を下げることにもなりかねません。
であれば、ブランドとインフルエンサーが直接マッチングできるような、且つインフルエンサーが能動的にPRをしたくなるような仕組みを作ってしまおう、と考えたのが始まりです。
「やる!」と決めてからは社内の全リソースをプラットフォームの制作に注ぎ込みましたね。素案から実行まで2週間くらいでしょうか。リソースの矢先を変換して、新たな仕組みを作ったことで、これまでPR管理・対応に充てていた時間をサイト強化や新しい企画の考案に充てることができるようになりました。
能動的インフルエンサーを作る

「公式アンバサダー」と「hina友」との違いは?
− 江戸氏コメント:従来のひなたライフ公式アンバサダーは、マイクロインフルエンサーを中心にお声掛けしていて、厳密にいえばInstagramのフォロワーが3万人以上の方々が中心でした。一方で、hina友はフォロワーが1〜2万人の方々も範囲に入れています。
選定の基準は、フォロワー数だけでなく、いいねやコメントの数も含まれます。単純にパイを広げただけではなく、フォロワー3万人と同等のエンゲージを持っている“見込みのある”インフルエンサーにお声掛けしています。
サイト立ち上げ当初から多くのインフルエンサーと接しながら公式アンバサダーを増やしてきたことで目利きには自信があるので、今ある実績を信じてhina友を増やしていっている最中です。

通常行っているPRとの違いを教えてください
− 江戸氏コメント:通常我々が行っているPRは、公式アンバサダーへ毎月一定のポイントを付与して、そのポイントで購入したモノを実際に使用していただき、使用後の感想やイメージをInstagramに投稿していただく形式を取っています。
今回の施策では、アンバサダーだけでなく、hina友まで利用者の幅を広げ、できるだけ多くのインフルエンサーに幅広く様々な商品を利用してもらうことを目的にした形式を取りました。
ブランドだけでなく、インフルエンサーの出費も0円なので、家電などの高額商品のPR機会もグンと上がります。ブランドは商品を無償で提供することになりますが、PR費用が0円という点を加味するとむしろ安いのではないでしょうか。
また、プラットフォームを介して直接PR商品の申し込み数を把握できるので、その後のインフルエンサーの行動やその先のエンドユーザーの反応をブランド側でタイムリーに追跡、把握できるのは従来の施策との大きな違いですね。
業界活性化のための“無償”運営

今回の施策を無償で開始した理由は?
− 江戸氏コメント:インパクトが強いということもありますが、全ては早くローンチさせるためですね。無償が一番早いんです。ルールを設けて複雑化すると時間がかかりますよね。たぶん、他に同じようなことを考えている人ってたくさんいて、誰が早くカタチにするかが要だと思うんです。他にやられちゃう前に「思いついたらすぐやる」が重要です。
また、費用を頂いて運用することは「現時点では業界の活性化には繋がらない」と思っています。ライフスタイル業界は、モノづくりへの愛が溢れた魅力的な業界です。だからこそ、ECやSNSのリテラシーで他業界に後れを取っていることが、とても勿体なく感じます。
その問題を解消するためにも新しいことをどんどん行って、まずはたくさんの人に良いブランド、良い商品を認知してもらう、そうすることで業界を盛り上げたいです。そのためにも、活性化を狙うなら無償でやるべきだと思ったんです。
私としては、この施策に掛けるリソースに投資をしてでも、ライフスタイル業界の活性化を優先したいという気持ちがありました。まずは会社が存在する土台 (=業界) を盛り上げていくべきであって、その結果として、多くの人がHinata Lifeに訪れ、商品に触れてもらえると嬉しいなと思います。
インフルエンサーを見極め、新規ユーザーを掴む

今後どのような展開を想定されていますか?
− 江戸氏コメント:公式アンバサダーも含めたPR施策についていえば、今後は多種多様なインフルエンサーの方々にHinata Lifeを知っていただき、認知拡大に協力いただければと思っています。
今協力いただいている方々は、ほとんどがインテリア系のインフルエンサーですが、例えば、アパレルや料理、ママ系のポストを中心とするインフルエンサーなど、ライフスタイルを軸に横展開して新しいユーザーへとコンタクトポイントを広げていきたいですね。洋服や料理が好きな方々にもお洒落な雑貨や小物を見てもらって、そこからHinata Lifeの輪が広がっていくと嬉しいです。
インフルエンサーマーケティングは今、最も注目度が高く重要なマーケティング手法の一つであることは間違いありません。まだまだ伸び代のあるインテリアというジャンルで、ひなたライフが第一人者として道を作っていきたいと思っています。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。
PRの新しいカタチ

「#PR」――この言葉に、ブランド、インフルエンサー、そしてエンドユーザーが、三者三様の思惑を巡らせる。その結果、ステルスマーケティングなどの問題が発生し、ユーザーはインフルエンサー一人ひとり、ポスト一つひとつまで、信頼できるのかどうか疑わざるを得なくなった。
今回のひなたライフの施策は、業界活性化と“コスト0”として打ち出したことが様々な方向にプラスに働いているのが面白い。
まずは、この施策に参画するブランドやインフルエンサーの母数の拡大だ。これは江戸氏が一番に願う業界活性化に大きく貢献していくであろう。

また、コスト0がもたらす従来のPR施策との大きな変化は、たびたび問題視される承諾動機“PR費用”が0だということだ。これはエンドユーザーにとってかなり好印象な信頼基準になるだろう。
インフルエンサーが能動的にPRしたいと思える仕掛け、それは「お金がもらえるから」「稼げるから」といった理由ではない、「欲しい」「使ってみたい」という純粋な“モノの良さ”を評価できるプラットフォームであり、その仕組みによってアウトプットされた商品情報はエンドユーザーにとっても純度の高い情報であることは間違いない。
ブランドにとっても、ニーズのある先へ商品を届けられること、ユーザーとしての声が聞けること、その先の潜在客へのアプローチができることは大きな収穫となるだろう。
「モノの良さを伝えること」を大切にするひなたライフのその想いは、同社と関わるインフルエンサーやブランドにも通じるものがあるのかもしれない。今後の展開にも注目していきたい。