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DtoC専業のライフスタイルブランド

EC市場は年々その勢いを増し、2019年には市場規模は年間10兆円を超えた。過去5年で1.5倍になったことを考えると、このペースで成長すれば2025年にはおよそ15兆円になることが予測されている。

元々、家具やインテリアは単価が高く耐用年数も長いことから、買い替え需要が高いわけではないが、それでも世のEC需要に合わせたライフスタイル業界のEC化率は高まっている。

今後も様々なブランドやショップがEC市場への参入を図るのであれば、より多くの販売機会を獲得する為に他社との差別化を考える必要があるだろう。

「企画開発から販売までの期間が非常に短いのは、大手には無い強みだと思います」デザイン家具の製造・販売を中心にDtoCのインテリアサービス事業を行う「bydesign (バイデザイン) 」のプロダクトマネージャーである福丸 真美 (フクマル マミ) 氏のその言葉からは、確かな自信を感じられた。

2016年設立のbydesignは創業5年の新しいインテリアブランドを運営しながら、エンドユーザーの需要を的確に押さえた商品展開により急成長を続けている。

自ら情報発信することが必須となり、高いPRスキルを持たない限り認知されることの難易度が高くなるDtoC事業において、顧客を獲得し市場を確立させた同社の他社には無い強みとは何か。今回はモノづくりにフォーカスしながら紐解いていく。

株式会社bydesign (バイデザイン) 
https://bydesign.co.jp/
2016年に「空間から豊かな人生をデザインする」を企業理念として設立。「Kanademono (カナデモノ) 」、「Gemone (ジモーネ) 」、「Favrica (ファブリカ) 」の3ブランドを展開。自社プロダクトを製造しながら、他社商材の仕入れも行い、販売まで一貫して行う。サイズオーダー家具をリーズナブルな価格帯で提供している。

bydesignだからできること

「bydesign」について教えてください

− 福丸氏コメント:主にデザイン家具の製造・販売を中心に、インテリアサービス事業を展開しています。

立ち上げ当時からサイズオーダーの家具を承っていて、当初は自社スタッフがテーブルを中心に作っていたのですが、徐々にオーダーが増加して人手が足りなくなってきたことをきっかけに、国内工場と提携して天板を作ってもらうようになったんです。

その後、鉄脚も合わせて自社で製造するようになりました。そこから更にテーブルに合う椅子や照明の製造・仕入れを行うようになり、今のインテリアブランドへと変わっていったんです。

テーブルに合わせた家具を組み合わせて作り上げられた空間

− 福丸氏コメント:取り扱う商品の幅を広げていくのと併せてブランドの展開も増やしていきました。今展開している3つのブランドが持つイメージやテーマは異なりますが、「その家具を使うことで生まれる体験や暮らしの質が向上する」という目的は共通しています。

「売れる商品を作りたい」のではなく、「お客様に価値を感じてもらえる商品を作る」ことを意識したbydesignならではのモノづくりは、創業当初から変わっていません。

商品開発は必ず、今ある課題を解決することを前提としています。これは創業者が、自分が求めているモノにぴったりと合致するモノが無くて、家具探しに苦戦した経験があるからなんです。

例えば質の高い商品であってもコスパが良くなかったり、そこをクリアしていても住宅環境によってサイズ感が問題になったりしますよね。

bydesignではそうした様々な課題に対して解決策を考えて、商品の企画段階からコンセプトを設定しています。

販売機会を逃さない戦略

商品開発はどのように行っていますか?

− 福丸氏コメント:社内で独自に定めたワークフローを用意しています。まず、コンセプトやどのような課題を解決するのか、その為のマーケティングやリサーチ方法はどう行うのか、そして課題はどのように解決するのか、といった項目にそれぞれ選択肢があり、それらを決定して進めていくんです。

このようなワークフローを設定していることで、商品開発の都度、複数のチームを跨がず、最後まで方針がぶれることのなく一貫した理論でスピーディーな進行が可能になります。

このワークフローは商品開発のチーム編成が変わるタイミングや定例MTGの際に、今後の改善点などをチーム内外問わず挙げていって、それを基に随時アップデートしています。

それぞれプロジェクトを立てる段階でアサインするメンバーを絞り、その人の得意分野を加味しながら担当を割り振っているため、メンバーの強みを生かしながら商品開発を行うことができるんです。

どのくらいのペースで商品を出していますか?

− 福丸氏コメント:2020年は60SKUくらいのPBを開発しました。オプションを含めずアイテム数でいうなら20~30くらいでしょうか。一種類の鉄脚に対してカラーバリエーションや材質等を多数用意して、一気に展開しています。

形が同じでも、カラーや材質で雰囲気はガラッと変わりますよね。好きな組み合わせを選ぶ時間も楽しんでいただけると思います。

一般的な売れるタイミングは考慮せず、とにかく重視しているのはスピード感です。例えば、春の新生活シーズンは、業界的には新商品が多く販売される時期ですよね。

ただ、直前になって家具を探す人ばかりではないと思うんです。既に販売できる商品は春を待たずに出すことで、前々から探している人の目に留まってくれるかもしれない。

このように市場には無い、エンドユーザーから求められている商品をスピーディーに開発し、機会ロスを作らず最短で出せることがbydesignの強みです。

ECであることにもメリットがあるのでしょうか?

− 福丸氏コメント:課題の一つであるコストパフォーマンスを解決するとなると、ECでの販売が最適であるという結論に落ち着きました。

テーブルを中心に商品の展開をしているので、サイズオーダーが可能なテーブルをなるべく安くお届けする為に、コストを最低限抑えるにはECでの販売が現状、最も理想的だと考えています。

DtoCというビジネスモデルは、商品開発をする立場でもお客様の声をダイレクトに聞けるというのが利点の一つです。良くも悪くもダイレクトに届く声に対してクイックな対応をしていくことができるのも、DtoCならではだと思います。

お客様からいただいたご意見やご要望がまた次の商品開発へと繋がっていくので、良い循環が出来上がっているんじゃないでしょうか。

課題を解決したモノづくり

それぞれのブランドはどのような商品展開をしているのですか?

− 福丸氏コメント:現在はKanademono (カナデモノ)、Gemone (ジモーネ)、Favrica (ファブリカ) の3ブランドの展開をしています。元々はKanademonoをメインブランドとしていましたが、取り扱う商品が増えていくにつれて、できることの幅を広げたいということもあってGemoneとFavricaが誕生しました。

それぞれメイン商材も異なっているんです。まず、Kanademonoはダイニング・ワークスペースを中心としています。その中で最も人気なのが「THE TABLE (ザ テーブル) 」です。

名前の通り、これぞKanademonoを代表するテーブルですね。bydesignの立ち上げ当初から作り続けてきたもので、脚やオプションの選択、1cm単位でのサイズオーダーができます。

創業当初から変わらず人気のTHE TABLE

− 福丸氏コメント:最近だとホームオフィスでの需要が増えたこともあり、デスクチェアの人気が高まっていますね。

特に「STYLISH MODERN DESK CHAIR (スタイリッシュモダンデスクチェア) 」はインテリアにも馴染みやすいデザインなので、いかにもなオフィスチェア感があまり無いことが世の中にはまっているようです。

また、「SIMPLE IRON HANGER RACK (シンプルアイアンハンガーラック) 」も人気が高いです。これは幅90cmと120cmのツーサイズ展開なのですが、今まで市場に120cmのハンガーラックって探しても全く無かったんです。

デザインにこだわっているのは勿論ですが、「このサイズが欲しかった」という声を多数いただけたことからも、ニーズを汲み取れたことが実感できました。

シンプルながらインテリアに馴染みやすいSTYLISH MODERN DESK CHAIR
ユーザーの需要にぴったりとハマり人気となったSIMPLE IRON HANGER RACK

− 福丸氏コメント:Gemoneはリビングやラウンジ向けの商品が中心です。

オススメは「THE CAFE TABLE (ザ カフェテーブル) 」ですね。脚は全てステンレスでヘアライン加工を施しています。落ち着いていて高級感がありながら、指紋が目立ちにくいというのもあって使い勝手の良いテーブルです。

Favricaはボヘミアン系のスタイルで小物や装飾等をメインに扱っています。特に人気のラグはアメリカの特定地域から直接仕入れているんです。

どの商品も入荷を待っている人が常にいるので、ありがたいことに仕入れた後でもすぐに売れていきます。

デザインだけでなく機能面にも優れているTHE CAFE TABLE
Favricaの人気のラグであるHandmade Floral Melange rug

価値あるモノをライフスタイルの中心に

NBではどのような商品を選定していますか?

− 福丸氏コメント:自社商品を中心にモノ単体ではなく空間全体を提案できるように、それらに合うような他社商品の仕入れも行っています。

そもそも便宜上呼び分けてはいますが、空間全体へアプローチをする事を目的にしているので、正確にはそのような線引きをしているわけでもありません。

NBの商品選定はインテリアチームが担っています。モノを作るからプロダクトチーム、インテリア商材を選定するからインテリアチームと括っているわけではなく、アメリカや欧米の美大、芸大で使われている学位の流土に倣っているんです。

人が暮らす建物を最も大きなくくりとして、その中にインテリアがあり、インテリアの中にプロダクトがある、という考え方を基にしています。

私たちが提供しているのはインテリアという空間と、その中の一つ一つのプロダクトなんです。

− 福丸氏コメント:インテリアチームにはKanademonoをはじめとした自社ブランドが訴求したい部屋を作るためにアイテムを引っ張ってきてもらっています。

私たちが提供する暮らしには何が必要かを考えてアイテムを集めてくるので、多い時には百点近くにもなります。

それでもブランドコンセプトがしっかりと決まっているため、作りたい空間からぶれずに商品訴求ができているんです。

ぶれないモノづくりによってできることはなんですか?

− 福丸氏コメント:ざっくり言ってしまえば、Kanademonoの要はテーブルです。天板と鉄脚だけでもバリエーションが豊富ですし、ECサイトの見せ方もテーブルを中心にすることを意識しています。

しかし、bydesignが最も大切にしていることは、bydesignでお買い物をしてくださるお客様にどのような価値を与えられるのか、ということです。

テーブルって何かを行う際に必要な事が多く、暮らしの中心になるものですよね。その周りには椅子やラグも必要です。新しい商品を作る上でも、他社から仕入れる上でも、お客様の抱える課題を解決するためのモノづくりを徹底しています。

そうして作られたbydesignの商品を暮らしの中に取り入れることで、お客様の生活に新たな価値を生み出していけるのだと思います。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

選択肢を増やすための強みを理解する

国内外問わず様々なブランドが存在するものの、「ミドルレンジの面白い家具はまだまだ少ない印象がある」と言っていた福丸氏。

誰しもが十分な財源や情報源を持っているわけではない中で、いざ家具を購入しようと思った時にお金を掛けられなかったり、安さに比例した質のモノしか知らないエンドユーザーは確かに存在するだろう。

そうした選択肢を絞らざるを得ない人たちに対しても、より多くの選択肢を提示することを妥協していないことが、福丸氏の話の端々から感じることができた。

今はモノが溢れ、飽和状態であるといわれている。しかし、モノが増えることに比例してエンドユーザーの選択肢も増えていくわけではない。

バリエーションを豊富にすることを目的とするのではなく、今、市場に出ていないモノは何か、エンドユーザーが求めているモノは何かを汲み取って商品開発をすることが、真の意味での「選択肢を増やす」ということではないだろうか。

そして、求められている需要に応えることを前提にしながら、それ以上の価値を提供していくために必要なことは何か、エンドユーザーへさらなる付加価値を提供できるのは、モノを作り出す側のみなのだ。

ユーザーの課題が異なるように、その解決のためにできるアプローチもショップによって様々だろう。

それぞれのセレクトショップが他社には無い独自の強みを持って、モノづくりをしていくことでライフスタイル業界全体が一層多彩になり隆盛していくことに期待している。

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