2020.07.14.tue

セレクトショップが導くホーム・フィットネス

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巣ごもり需要で、フィットネスが伸びる

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) <以下:コロナ>を契機に、我々のライフスタイルは大きく見直す時が来ている。withコロナの時代が始まり、ライフスタイル業界は新たにどんなプロダクトを打ち出せばいいのか。

日本経済は厳しい状況が続く中、コロナ以前から年々増加傾向にあったのがスポーツクラブ業界だ。好調の理由として挙げられているのは、シニア層を中心とした健康志向と小・中学校のダンス必修化だ。(出典:業界動向サーチ)

コロナ禍以降、感染拡大防止の目的からフィットネスクラブやジムは休業に追い込まれた。その影響で自粛による在宅時間が増えたエンドユーザーからはコロナ太り回避やストレス解消のため、自宅でできる筋トレやストレッチ、近所の散歩・ランニングのニーズが高まった。

直近の傾向を分析し、セレクトショップにおけるフィットネス関連アイテムの位置付けについてMMD TIMES 独自の見解を交えて探ってみた。

フィットネスもオンラインの時代

非常事態宣言が解除され、フィットネスクラブやジムは営業を再開したが、感染拡大防止の観点からオンラインでのトレーニング指導に切り替えるところも多い。人々がトレーニングする場所は、自宅へと移行しつつある。その影響でヨガのライブレッスンをオンラインで提供するサービスや、フィットネスアプリなど、セルフフィットネスをサポートするオンラインサービスが、コロナ禍以降に利用者を増やしている。

巣ごもりフィットネスアイテムの需要も伸びている。「2020年後半のセレクトショップの動向」でも紹介したように、MMD TIMESの業界関係者へのコロナ禍売上アンケートでも「ヨガアイテム」「ダンベル」「バランスボール」といった場所を選ばずに使えるセルフフィットネス器具が売れているとの回答が出ている。

フィットネスアイテムや健康器具を展開するセレクトショップのサイトをのぞいても、売上上位に位置するのは「家庭用トランポリン」や「バランスボール」「フィットネスチューブ」といったフィットネスアイテムだ。

La-VIE(ラ・ヴィ)のホームサイズのトランポリン

株式会社ジョイナスの運営するLa-VIE(ラ・ヴィ)ではホームサイズのトランポリンが人気だ。同社オンラインサイトを見ると、他の上位ランクイン商品の4~5倍の価格にも関わらず、巣ごもりフィットネス需要にはまり売上第3位と動向は良い。

フィットネスにもファッション性を

自宅をフィットネスクラブ・ジム化する流れは、今後ますます加速すると予測できる。その理由を挙げてみたい。

ひとつめは、欧米ではコロナ禍以前から高まりつつあった、自宅にトレーニングスペースを作る「Home Gym(ホーム・ジム)」というフィットネストレンドだ。これは大型トレーニングマシンを設置するなどして、自宅の一角をジムのようにするものだ。

姿見のような矩形に様々なトレーニングプログラムが搭載され、トレーナーと対面している感覚でトレーニングできる「MIRROR(ミラー)」といった目新しいガジェットにも注目されている。

これまでの例を見ても、日本のフィットネス業界に欧米でトレンドになったものが上陸するのは2~3年遅れる傾向にある。コロナ禍でそのスピードは増すだろうが、欧米に比べ日本の住宅は狭小住宅が多い。「Home Gym(ホーム・ジム)」ほど大規模なものではなく、日本の住宅事情に即した「Home Fitness(ホーム・フィットネス)」にリサイズされて広がっていくのではないか、と予測する。

出典:「MIRROR(ミラー)」

ふたつめは、コロナ以前よりも在宅時間が長くなった人が増えたこと。 リモートワークが普及し在宅時間が増えること、またワクチンが十分に流通するまではジム通いに不安を感じる人がいることから、セルフフィットネスアイテムのニーズは高まるだろう。

特に在宅時間の増加に伴い、これまでは外出先での出来事が中心だった。InstagramをはじめとするSNSなど発信するトピックスにも変化が起きている。自宅からの発信が増える今、フィットネスアイテムの中でも“見せたくなる”が消費のキーワードになると推察する。

リデザイン手法で、魅せる

インテリアに馴染むデザインのトレーニング器具を展開するMizuno Healthy Interiorのアイテム

この10年、アパレルメーカーは苦戦する本業を補強するようにスポーツラインを立ち上げたメーカーや、ゴルフラインの展開を開始したセレクトショップやバッグブランドもある。スポーツアイテムにアパレルメーカーの強みであるデザイン性を加味し、ファッション化させ、販売カテゴリーを拡大させてきた。

最もわかりやすいアイテムはメガネだろう。従来は視力矯正器具、医療補助器具であった無味乾燥なアイテムをファッションアイテムとして進化させた。機能性重視で、デザインまでは踏み込めていないフィットネスアイテムが多いが、今後はインテリアの一部にしてもなじむ、デザイン感度の高いフィットネスアイテムを求める声はますます増えるだろう。

TRANITUREの木製ダンベル「MOKKIN」

「デザインでトレーニングを身近に」をコンセプトとしたトレーニングアイテムブランドTRANITURE (トラニチャー) では、インテリアのような木製のダンベルMOKKIN (モッキン) を展開している。リビングやダイニングなど生活空間に置いても馴染むデザインで、しまい込む必要がなく気が向いた時すぐにトレーニングが始められるのが特徴だ。

Mizuno Healthy Interiorのトレーニングできるクッション「RINGRETCH MODE」
Mizuno Healthy Interiorのスクワットをサポートするスツール「les plie squat」

Mizuno Healthy Interior (ミズノヘルシーインテリア) では、インテリアとして活用できるデザインのトレーニング器具を展開している。カリモク家具とコラボしたRINGRETCH MODE (リングレッチ・モード) は一見クッションに見えるが、クッション内のリングを押し戻す運動で、上腕や腹筋を鍛えられる優れものである。

またオリジナルのles plie squat (ル・プリエ スクワット) は、シンプルなデザインでありながらスクワットをサポートしてくれるスツールだ。どちらもまるで普通のクッションやスツールのようなデザインでありながら、フィットネス機能が付加されている。

これらはすべてインテリアとフィットネスを上手く掛け合わせた商品だ。既存のアイテムに機能性やデザイン性を加え、付加価値を創り出している。既存の生産ラインにのせやすいこの方法は、日本のセレクトショップやメーカーが得意とするリデザインの手法であるため商品開発もしやすいのではないだろうか。

またワークアウト用フレグランスや、運動後のボディケア、今注目されているプロテイン食など、既存アイテムを再編集して新たにフィットネスカテゴリーとして展開することも可能だろう。

手に取りたくなる、SNS動画でのPRを

リデザインによる商品開発は比較的手頃な手段であるため、競合が多くなることが予想される。パイの奪い合いになる前に、スピードが求められるだろう。

ロケットスタートを切るには、PRでいかに集客できるか、だ。そこにSNSは欠かせない。コロナ禍拡大後、Instagramのストーリーズ投稿の平均表示回数は31%増加し、ストーリーズの閲覧時間や閲覧頻度が上昇していることが判明した。

アパレル、雑貨関連に絞ると、外出自粛が呼びかけられ始めた3月初旬からストーリーズ投稿の平均表示回数は上昇し始めている。

ストーリーズの特性を考えると、「憧れる」「真似したくなる」をキーワードに、フィットネスのある暮らしをどのような動画で提案するかが鍵になるだろう。

商品紹介の動画はもとより、プロトレーナー監修の本格フィットネス動画、広くユーザーをすくうため関連した食の低糖質レシピ配信なども有効かもしれない。

セレクトショップが扱う次世代のフィットネス

「Apple(アップル)」からiMacこと「iMac G3」発売されたのは1998年のこと。無機質なデザインが一般的だったパソコンをファッショナブルにデコレーションし、パソコンが広く一般に浸透するエポックメイキングなアイテムとなった。

モノの定義や価値観は目まぐるしいスピードで変化し、コロナの影響でそれは加速されるだろう。今後の拡大が見込めるフィットネス市場を、セレクトショップがどのようなライフスタイル提案で牽引していくことができるのか。

感度の高いフィットネスアイテムを集積させた売場を展開し、香りや食、ボディケアなどの関連商材とともにカテゴリーを確立する。そしてエンドユーザーへ“フィットネスに強いショップ”とイメージ付けをするところから始めたい。認知されることで、セレクトショップのフィットネスカテゴリーの売上は期待できるはずだ。

ユーザーの消費マインドが変わった今だからこそ、イノベーションを起こせる可能性のあるフィットネスカテゴリーで、未来を切り拓いていけるのではないだろうか。

フィットネスと同様に、新たなイノベーションの可能性を持つマスクに着目した記事「顧客創造となり得るマスクアイテム」 も合わせて読んでみてほしい。

掲載ブランド紹介

La-VIE(株式会社ジョイナス)

フィットネス・スポーツ・健康用品・トレーニング用品を各種取り揃えた通販サイト。

公式ホームページはこちら
https://www.joinus1980.com/


TRANITURE

「デザインでトレーニングを身近に」がコンセプトのトレーニングアイテムブランド。デザイン・制作を担当するHAND Creative Factoryと協業。

公式ホームページはこちら
https://traniture.jp/


Mizuno Healthy Interior(ミズノ株式会社)

スポーツブランドのミズノが展開する、インテリアとして活用できるデザインのトレーニング器具ブランド。

公式ホームページはこちら
https://www.mizuno.jp/traininggoods/healthy_interior/

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