2020.12.15.tue

“プリミティブ”な商品が持つ魅力

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「ここにしかないを作り出す

多くのセレクトショップが乱立し、差別化を図るのが難しい今の時代、エンドユーザーに「ここにしかない」と思わせるMDやバイイングとはどのようなものか。

アーティストが作る一点ものや、個体差が生まれる海外のハンドメイドなどのプリミティブな民芸品もその一つだろう。

プリミティブが意味する通り、原始的で素朴な生産方法で西アフリカやインドの職人とモノづくりを行う企業がある。東京都世田谷区にオフィスを構える株式会社東京かんかんだ。

1977年に代表の小川氏がバックパッカーとして世界を飛び回っていた際、パリの骨董通りで出会ったアフリカの仮面に感銘を受け、西アフリカのプリミティブアート雑貨がまだ知られていない当時の日本で会社を立ち上げた。

セレクトショップへの卸しを行うほか、現在4つのインテリアやアパレルブランドを展開している。

プリミティブアートやインド、アフリカ諸国からセレクトした民芸品や、手仕事を活かした温かみのあるオリジナルの商品が特徴で、エンドユーザーのみならず卸先のバイヤーも「ここにしかない」商品を見る為、それぞれの店舗に足を運ぶ。

株式会社東京かんかん
http://www.kankan.co.jp/
アジア・アフリカのプリミティブアート、民族工芸品の輸入卸や直営店の運営を行い、主にプリミティブアート作品、古美術品、家具、インテリア装飾品、テキスタイル、生活雑貨、服飾雑貨を取り扱う。販売以外でも美術館での展示やイベントを行うなど、文化の発信にも力を入れる。
artipur COTTAGE (アルティプールコテージ)
http://www.kankan.co.jp/brand/artipurcottage.html
青山の裏通りにひっそり店舗を構え、『楽しく暮らす 豊かに暮らす 私時間の物選び』をコンセプトに「手仕事」の温もりを重視しセレクトした、世界中の暮らしの道具が並ぶライフスタイルショップ。現地で買い付けたヴィンテージ品と、職人とつくるオリジナルの2種で構成され、取り扱いアイテムは家具や道具、アクセサリーなど、多岐にわたる。

伝統手法と現代デザインの掛け合わせ

artipur COTTAGEについて教えてください

− 小川氏コメント:会社は創業43年目ですがインテリアのブランドとして立ち上げたのは4年前です。設立当時の日本ではまだプリミティブアートの認知度が低く、一部の骨董品好きな人にしか知られていませんでした。

その点ヨーロッパなどでは、歴史的背景なども含めアフリカやインドが身近なこともあり、一般のエンドユーザーにもプリミティブアートが日常的にインテリアに取り入れられているんです。

同じように日本のユーザーにももっと我々の世界観を身近に感じて欲しくてセレクトショップを始めました。

商品選定の際に最も気に掛けている事は、今の日本のライフスタイルに取り入れやすいデザインや色を選ぶようにしています。

民族っぽくなりすぎないように、あえてヨーロッパの蚤の市にありそうな雰囲気を意識してアンディーク感やヴィンテージ感を出しているんです。

− 小川氏コメント:買付けはインドがメインですが、コートジボアール、ケニヤなどのアフリカ諸国やアジアにも及びます。商品に何の手も入れずにそのままの状態で仕入れるのは民芸品や骨董品のみです。

多くはオリジナルの商品で、例えばクッションは柄が近いものは現地にありますが、良い布を見つけて色・刺繍の太さ・デザインを変えて日本の住空間に合うようにテイストを調整しています。

エンドユーザー以外のバイヤーからはどんな声がありますか?

− 小川氏コメント:他にない手仕事のアイテムを見つけられると評価をいただいています。エスニック雑貨と表現されることもありますが、市場に競合が多いいわゆる ”エスニック” とは少し違うテイストなので、商品の被りが少ないのだと思います。

市場のエスニック雑貨は原色使いや柄の出し方が特徴的で、インパクトが強いので合わせるアイテムを選びます。そのためエスニックの世界観が好きな人だけに間口が狭まってしまうんです。

それに対して我々は、民族テイストが好きじゃない女性が持っても違和感がないように商品のデザインを決めています。

模様が同じ伝統刺繍でも、色味が違うだけで全くイメージが変わるんですよ。エスニックへのリスペクトは持ちつつも、日本のライフスタイルに馴染むよう落としどころを常に模索しながら商品化することがポイントでしょうか。

実際、エスニック業界外の ”他とちょっと違う手仕事の温かみがある商品” を探すバイヤーからの引きも多いんです。

間口が広いという意味では、逆にプリミティブアート、骨董品や布を探しているエスニック玄人バイヤーもいらっしゃいます。

知識がある方でも、伝統手法と日本向けにアレンジしたデザインの組み合わせを新鮮に感じて、新しい目線で商品を選べるとコメントをいただきます。

オススメの商品があれば教えてください。

− 小川氏コメント:インド刺繍のハンドメイドのポーチでしょうか。インドの伝統工芸は今でも活発で、家業として代々受け継いでいる職人が多いんです。

そうやって今も変わらず伝えられているインドの伝統を、日本の若いユーザーでも取り入れやすい色味やモチーフのデザインに落とし込んでいます。

モチーフも通常の売れ筋となるネコやウサギではなく、今回はトラを選んだところに当社の”らしさ”が出ていますね。分かりやすく売り上げを取りに行くことも大事ですが、トライする気持ちが重要だと考えています。

売る側が作っていてワクワクできないものは、それが買い手にも伝わってしまうと思うので、ちょっと面白いモノを展開していく方が結果的に売り上げは良いんです。

トラがモチーフのインド刺繍のハンドメイドポーチ

− 小川氏コメント:そうやって、モノづくりにトライできる環境を大切にしています。工芸品と人間、どちらにも共通することなんですが、ひとりひとりの個性に面白みが出ると考えています。

せっかくこのショップを選んで働いてくれているスタッフが熱を持ってやりたいと考えていることであれば、多数の賛同を得られなかったとしてもカタチにできる環境を意識的に作ることで、会社として個性を育てていければいいですね。

インドの職人が手作業で作る真鍮のアイテムは一点一点個性がある

民芸品だからこその商品ストーリー

民芸品の魅力はどんなところでしょうか?

− 小川氏コメント:その民族ごとに生活のルールがあるんです。日本にはない生活様式や宗教観、美的価値観、歴史が垣間見えるところが魅力なのだと思います。

インドの家庭で使われていた生地をリサイクルしたチュニック

− 小川氏コメント:例えばこのミラーに使われているタイルは、大正時代〜昭和初期にかけて日本で作られていたものです。

当時日本のタイルが人気で海外に輸出されていたのですが、それが最近インドの骨董品屋で大量に見つかったんですよ。

そういうモノが経てきたストーリーってとても魅力的だと思うので、そのタイルを使ってミラーを作りました。

昔の日本のタイルを使ったインド製のミラー

− 小川氏コメント:いわゆるエスニックアイテムは色遣いやデザインを重視しているところが多く、宗教観やストーリーの面白さを落とし込んだ商品を作っているところはあまりないと思います。

そういうところでエスニック業界内でもインテリア業界内でも、結果的に差別化を図れているんじゃないでしょうか。

ただ、そのストーリーはまずは単純にモノとしての商品に興味を持って、手に取ってもらった方に伝えるようにしています。

SNSなどで先にこちらが言いたいことを無理に発信しても、説明的になってしまって結局はあまり読まれないんですよね。

実際の接客でもそうですが、自分たちが言いたいことを言うだけではなく、お客様が知りたいタイミングで伝えていくくらいの距離感を大切にしています。

ニッチマーケットの強み

今後チャレンジしていきたいことはありますか?

− 小川氏コメント:インテリア業界だけにこだわらず、他の業種ともコラボしながらインドやアフリカの手仕事を広めていきたいと考えています。

カフェやウェディングなど、女性のライフスタイルに寄り添う表現ってインテリア以外でももっとあると思うんです。

西アフリカの暮らしぶりが分かるツアーを組むとか、一般のユーザーが未開の地を知ることが出来るってニッチなコアファンが喜んでくれそうですよね。

コロナ渦で打撃はあったのですが、思ってたよりはインテリアや骨董品の売上への影響は少なかったんです。それはニッチだからこそ、ファンがついてくれているのだと思います。

手仕事を広めていく活動もしているんですが、artipur COTTAGEがきっかけで手仕事のモノが好きになってくださったファンの方たちをとても大切にしています。

どこにでもあるモノを扱う必要はなく、私たちだから出来ることを考え、そしてトレンドも意識はしますがメジャーにはしない…、”他にはない”モノを発信し続けたいですね。

これからもニッチを日本のマーケットで使いやすくしていく活動をしていくつもりです。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

「絞込み=選別」で生まれる強いメッセージ

独自性のある商品で他社との差別化を図りたい、多くのショップが今直面している課題ではないだろうか。

アパレル、インテリアに関わらずセレクトショップでは似たようなアイテムが立ち並ぶ昨今、エンドユーザーが求めていて、かつ自社の独自性となりうるものは何なのだろうか。

今回小川氏はインタビューの中で、「ここにしかない」というフレーズを何度も語ってくれた。

プリミティブアートやインド・アフリカの民芸品がそもそもニッチなマーケットであることに加えて、手仕事の良さを広める活動はしつつもマスマーケットに媚びた商品開発はしない。

手仕事の温かみや、媚びないモチーフ選びに魅了されたartipur COTTAGEファンが「ここにしかない」と感じる商品を発信しつづけているのだ。

独自性を出したいが専門を絞りすぎると売上が心配、そんな声もよく聞くが、ECで何でも買えるこの時代に「なんでもある」セレクトショップを誰が求めているだろうか。

強烈なメッセージを発信するには、商品もユーザーも絞込みが必要となってくる。「絞り込む」とはすなわち「取捨選択」することなのだろう。

無駄を削ぎ落し、独自性を磨き上げた先にしか創り上げることのできない「ここにしかない」ブランドがもっと増えて、このライフスタイル業界全体が更に活性化することを願いたい。

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