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男性市場に踏み込むことで開く販路
どこで何を売るか ― 変化が耐えない現代で事業存続のための販路開拓・拡大は、多くのライフスタイル業界関係者にとって大きな課題だろう。
ITの発展や人々の生活様式の多様化に伴い、販売チャネルは増加している。実店舗とECサイトというこれらの販路はコロナショック以降、より対比されるようになった。実店舗の売上の落ち込みから、販路の見直しを行なった企業も多いことだろう。
しかし、実店舗とECサイトの“どちらか”を判断する前に、“それぞれ”で販路を見直す手立てもあるのではないだろうか。
今回MMD TIMESは、「店舗」という枠組みの中で新たな販路開拓のために「タオル美術館グループ」と「川辺株式会社」が共同で立ち上げたブランド「WARP (ワープ) 」に注目した。
同2社はそれぞれにタオル、ハンカチやバッグなどの服飾雑貨の製造卸を行なっており、これまでのメインの取引先は百貨店だった。緊急事態宣言中は相次ぐ休業により打撃を受けた企業のうちのひとつである。
コロナウィルスが流行する以前から販路が百貨店だけに集中していることを課題としていたという同社。2020年春に立ち上がったばかりの新ブランドWARPの挑戦と、その戦略を探っていく。
メンズテイストなプロダクト
WARPのプロダクトはタオルと来春リリース予定のバッグの主要2ラインをはじめ、ライフスタイルに寄り添う服飾雑貨を展開している。メインターゲットは男性だが、ユニセックスで使えるラインナップとなっている。
もともとライセンス商品を得意としている共同2社のメインの取引先は百貨店であり、その商品のほとんどは女性向けだったという。
今回のブランド立上げはそこから一変、男性向けの完全オリジナルブランド。商品開発から売場の開拓まで、これまでにない新たな市場開拓となる。
メンズライクなデザイン表現はもちろん、使い心地への配慮も女性視点の商品との違いを感じることができる。
例えば、一部のタオル商品は「しっかり」と「やわらか」からパイルが選べ、女性と比べると男性はしっかりとした硬めの質感を好む人が多いことを反映した心配りが見て取れる。
シーン提案で新たなニーズを得る
デザインは単に男性向けなだけでなく、彼らの生活シーンをイメージさせるプロダクトデザインとして仕上がっていることにも注目したい。
例えば、この来春からリリースされるバッグラインでは、ショッピングバッグを意識してつくられている商品が目を惹く。
「顧客創造となり得るマスクアイテム」で紹介したマスク同様、需要と供給の増加によりショッピングバッグが淘汰される未来は近いだろう。
従来のモノに新たな価値を与えたい時、デザインの力は大きく作用する。
WARPのプロダクトにはショッピングバックのこれからのイノベーションを感じさせるアイデアが随所に見られた。
ターゲットに寄り添った機能性
ターゲット層や利用シーンに合わせた細かなデザイン性に加えて、男性からも支持を得るであろう機能を備えている点が同ブランドのプロダクトの大きな特徴だと言える。
それが「ハイドロ銀チタン®︎加工」だ。WARPから展開されるほとんどの商品に、ニオイを分解してくれる本加工が施されており、汗や加齢臭、男性特有のニオイ対策となる。
高性能な独自の機能はモノ自体の価値を上げ、競合との差別化だけでなく、価格競争から外れ適正価格での販売を可能とする。
それに加え、機能に劣らないデザイン性を持ち合わせることで、感度の高いターゲットへのアプローチが望める。
WARPの場合、アウトドア・スポーツ・ライフスタイル・アパレルなど複数の市場に跨って男性ユーザーへの展開が可能となるだろう。
新たな売上をつくるための戦略
近年急激に規模が広がりつつあるメンズコスメ市場。
コロナウィルスの影響で落ち込みを見せているコスメ業界だが、メンズコスメは右肩上がりである。
新しいモノや評判のモノなどをいろいろと試してみたいと考える女性と比べ、男性は一度気に入ったものをずっと使い続ける人が多い傾向にある。
上手くハマれば長く愛用してくれるファンを獲得できるのだ。
ターゲットが変わればその特性に合わせたアプローチが必要であり、プロダクトが変わり売場も変わる。
新たな販路を開拓する道はいくつもあるだろう。WARPのようにアプローチの届いていない消費者や市場に目を向けてみるのは手段の一つとして面白い挑戦だ。
コンセプトを変える、デザインを変える、ターゲットを変える—角度を変えて自社の製品を見つめると、そこに新たな道が見えてくるかもしれない。
掲載ブランド紹介
WARP (ワープ) - 価値をとどける、これからの道具 –
日々の暮らしをワンランク上にワープさせる機能系プロダクト。技術、素材、科学をユーモアとクリエイティブの力で融合し、これからの道具を探究・提案していく。
タオル美術館グループと川辺株式会社が共同する、メンズテイストでギミックの効いた、シンプルでいて遊び心もあるブランド。DR.C医薬株式会社が開発したニオイを分解する「ハイドロ銀チタン®︎加工」を施した機能に加え、デザインや使い心地にもこだわっている。デザインはクリエイティブユニット「&ELEMENTS (アンドエレメンツ) 」がプロデュース。
主なアイテム: タオル、ハンカチ 、エコバッグなど
タオル美術館グループ
タオルの企画・製造から卸、小売までの一環運営を行う全6社 (一広株式会社/株式会社タオル美術館/株式会社TTL/大連一広毛巾有限公司/一広ベトナム株式会社) からなる組織企業。店舗である「タオル美術館」は全国に約80店舗展開。同店オリジナルの刺繍サービスが特徴。
川辺株式会社
1923年にハンカチ、スカーフ、マフラーなど服飾雑貨の製造卸販売を行う企業として創業。時代の変化とともに事業を拡大し、現在はフレグランスの輸入販売事業やバッグ専門店「プレイヤーズ自由が丘」の店舗経営など、主に女性をターゲットとして事業展開を行う。