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ライフスタイルを提案する企業の強み

衣食住、これらを主軸とするライフスタイル事業の垣根は年々なくなりつつある。なかでもアパレル業界の事業展開は活発で、飲食事業やインテリア事業への参入はここ数年で急増している。

今回MMD TIMESは、複数のアパレルブランドの運営を行う株式会社アーバンリサーチのBtoB向けのインテリア事業を取材した。アパレル事業だけでなく、飲食、ライフスタイル事業など幅広く事業展開する同社は、SDGsへの取り組みにも積極的であり、企業方針としてその姿勢を表すなど業界の中でも先立って推進していることが特徴だ。

株式会社アーバンリサーチ
http://www.urban-research.co.jp/
大阪に本社を構えるアパレル企業。URBAN RESEARCH (アーバンリサーチ) 、URBAN RESEARCH DOORS (アーバンリサーチドアーズ) 、KBF (ケービーエフ) など国内外で270店舗以上を展開する。「すごいをシェアする」を企業理念に、流行りに左右されず「すごい」と言ってもらえるような価値あるものの提案を行っている。

話を伺ったのは、URBAN RESEARCH DOORSブランド販促 千葉一孝 (チバ ヒデタカ) 氏。これまでは対消費者への商品販売、ライフスタイル提案を主軸に行なってきたブランドが、法人向け事業を始動することの強みは何か、またそこから図る未来像とはどんなものなのか。セレクトショップが行うBtoBビジネスを掘り下げていく。

衣食住に「遊」をプラスしたセレクトショップ

URBAN RESEARCH DOORSについて教えてください

− 千葉氏コメント:「今の暮らしをここちよく」をコンセプトに展開しているブランドです。洋服だけでなく、「着る・食べる・住む」という日々の暮らしを内面から心地よくする“コト”の提案を行なっています。さらに我々はその衣食住に「遊」を含めた暮らしを提案することが特徴で、商品やスタイリングへはもちろん、店舗でのワークショップや野外フェスティバル開催などの活動にもそのマインドを反映しています。

URBAN RESEARCH DOORS (アーバンリサーチドアーズ)
https://media.urban-research.jp/brand/doors/
株式会社アーバンリサーチが展開するライフスタイル提案型セレクトショップ。「環境」と「心地よい暮らし」をテーマに、デザインへのこだわりだけでなく、環境にも良いロングライフ商品を提案するブランド。洋服の他にも家具、日用雑貨や食品なども取り扱っている。展開する店舗のなかにはカフェやキュレーションスペースを併設するところもあり、消費者の暮らしに寄り添ったコトの提案を行なっているのが特徴だ。

法人向けのインテリア事業を立ち上げた経緯をお聞かせください

− 千葉氏コメント:プライベートレーベル「DOORS LIVING PRODUCTS」内で家具を取り扱い始めた当初はセレクト商品がほとんどでしたが、次第にオリジナル商品も増え、URBAN RESEARCH DOORS<以下DOORS>のブランドイメージが定着してきました。

そうなると企業からお声掛けいただくこともあり、法人事業発足前も家具のオーダーやスタイリングの依頼を受けることも徐々に増えました。その需要も受けて、店舗という縛りから外れたフィールドで“DOORSらしい”空間提案を行なってみようということで2020年4月から法人向け事業が本格的に始動しました。

今は企業に向けて、DOORSオリジナル家具を対象に、オフィスやモデルルーム、飲食店内、グランピング施設などへの家具販売やコーディネートを行なっています。

URBAN RESEARCH DOORS らしさ

DOORSで叶えられる空間とは?

− 千葉氏コメント:トレンドに流されすぎないベーシックな空間ですね。「ベーシックな空間」って意外と難しいと思うんです。シンプルで流行り廃りのない基本とされる形や機能、一見簡単に思えますが、やってみると平凡になり過ぎてしまいます。

DOORSではどこか今らしさを感じる、だけどベーシックで長く愛用できる“プロの考えるベーシックなスタイル”が提案できます。定番シリーズの「Bothy (ボシー) 」にもDOORSらしさが現れています。ソファもダイニングセットも素材やディテールにこだわった奇を衒うことないベーシックな形です。

「山小屋」という言葉の意味からも連想させる“木”、無垢材の良さを活かしたデザインになっています。現在はこのシリーズに共感いただいてオーダーを受けることが多く、グランピング施設やディベロッパー、住宅業界からの依頼がメインです。

山小屋を意味する言葉「Bothy」。木そのものの良さを楽しめる素材感と飽きのこないデザインが特徴。

− 千葉氏コメント:また、家具・雑貨だけでなく、洋服も含めたスタイリングやライフスタイルの提案ができることはアパレルが母体の企業としての強みです。DOORSではキッズ商品の取り扱いもあるのでファミリー層をターゲットとするスタイル提案も対応できます。洋服まで統一して世界観を表現できるのはインテリアショップとの違いでもありますね。

企業に向けた“コト提案”

DOORSの世界観はどのように訴求されるのでしょうか

− 千葉氏コメント:まずは店舗を見ていただくのがわかりやすいと思います。どの店舗も一貫してDOORSの世界観を反映していますし、全国各地に70店舗以上あるので足を運びやすいと思います。

そういう意味では、現状ある店舗がショールームのような役目を果たしてくれるため、店舗を全国に展開できている点は対企業にもプラスに働きます。例えばFORK&SPOON URBAN RESEARCH DOORS 玉川高島屋S・C店は、家具の取り扱いが多いので、法人向けにもイメージしやすい店舗になっていると思います。

FORK&SPOON URBAN RESEARCH DOORS 玉川高島屋S・C店。

千葉氏コメント:また、DOORSでは「TINY GARDEN FESTIVAL」という野外フェスティバルを開催していたり、南船場店に併設するキュレーションスペース「DOORS HOUSE」で定期的に催事を行なっていたり、小売店という領域から出たURBAN RESEARCH DOORSのコトの提案や表現を、実際に見て体験できる機会もたびたびあります。

これまで提案型のライフスタイルショップとして、“コトの提案”を行なってきたブランドだからこそ、店舗ではできない小売以外の表現もブランドイメージを持って行うことが可能です。消費者個人だけでなく、企業に対しても、そこを強みとしたオリジナルな提案をしていきたいと思っています。

DOORS HOUSE」では、様々なテーマで「この場所で・その瞬間」しか体験できない催しを行う。

小売としての基盤が法人事業へプラスに働くことは?

− 千葉氏コメント:店舗を見て共通の理解がありながら商談に臨めることはお互いにとっていいことだと感じます。また、商談はかなり踏み込んだ会話にも対応できます。

法人事業のメンバーは、ショップスタッフの経験だけではなく、VMDやバイヤー、PRの経験がある経験豊富なスタッフで構成されているのでライフスタイル業界のトレンドについてはもちろん、商品のネットワークからプロモーションまでお話ができるので、どんなことでもご相談いただければと思います。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

店舗を越えて生きるブランド

「ブランド力」が力を発揮する時、それはどんな時だろう。“らしさ”として定着したブランドイメージは、店舗の外でも生き続ける。商品はもちろん、ブランド名、スタイリングを見ただけでそのブランドを彷彿させる、そうなるとその力はビジネスの可能性を圧倒的に広げる。

URBAN RESEARCH DOORSは継続的に行ってきた“コト提案”が消費者へブランドイメージを定着させた。今回の法人事業の立ち上げはそのブランド力が立ち上げのきっかけとなっており、今後の事業拡大にも拍車をかけるエネルギーとなることは間違いない。

店舗という限られた範囲の中では、表現できること、ビジネスの可能性を大幅に広げることは難しい。“らしさ”を追求することで、ブランドイメージを定着させ、ブランド力を使って店舗の外までビジネスの幅を広げてみてはどうだろう。

顧客の幅が個人から法人へ、またその逆も然り。ビジネスの場が店舗から、別の会場やオンラインに。そうして事業継続・拡大することで新たなビジネスチャンスに出会えるかもしれない。

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