Contents
出生数に反比例し好調なベビー・キッズ市場

厚生労働省によると2020年の出生数は87万2,683人で過去最低を記録した。だが、その数に反してベビー・キッズ市場は概ね好調だ。
要因のひとつに市場参入企業の増加が窺える。アパレル企業がベビー・キッズラインをリリースしたり、OEMで製品製造していた企業が自社開発の雑貨や玩具を販売したりと、企業にとってはビジネスチャンスと捉えられる市場なのだ。
なんといっても、ベビー・キッズ市場は「6ポケット」市場と呼ばれ、子どもの両親、その両方の祖父母の6つの財布が潜在していると考えられるため、レッドオーシャンでありながら、各社その市場規模を放っておくわけにはいかない。
また、出生数減少により内需の急激な高騰は望めずとも、品質の良さが評価されるインバウンド需要やEC経由での海外販売などによって市場拡大の伸び代は十分にあり、これらの背景により市場動向は伸張傾向にある。
その中で市場拡大に歯止めをかけたのは、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)<以下コロナ>だ。外出自粛による旅行やママ会の減少から、ベビーカーやチャイルドシートなど外出用品は打撃を受けているカテゴリのひとつである。また中国をはじめとする訪日客を相手に売り上げていたメーカーやショップも観光客が来ない今、苦戦しているに違いない。

一方、玩具などの巣ごもり需要アイテムや、食品などの買いだめ需要アイテムは好調と言える。そして、セレクトショップで扱うベビー・キッズアイテムの多くは、こうした衣食住に纏わる洋服や食品、玩具などを含めた雑貨である。
さらなる特徴は、「来店するエンドユーザーが必ずしも子どものための雑貨を買いに訪れる人ばかりでない」ということだろう。セレクトショップは、子ども用品以外のライフスタイルグッズを購入しに来たユーザーへも商品認知を広げることができる場なのだ。こうしたユーザーは将来の潜在客や6ポケット“外”のギフト購入客になる可能性を秘めている。
今回MMD TIMESでは、ベビー・キッズの市場動向とセレクトショップの特徴を踏まえて、3つのベビー・キッズブランドを紹介しながら市場のこれからを考察していく。
6ポケット市場で勝つための付加価値

さまざまなブランドがベビー・キッズラインの開発に着手する中、「アートが身近に感じられる場所」で紹介した村上美術株式会社のオリジナルブランド「amabro (アマブロ) 」もベビーラインを展開している。なかでも、オフィシャルショップ「Giving Store (ギビングストア) 」監修のもと作られたアイテムに注目したい。
Giving Storeが顧客やエンドユーザーから寄せられる意見を吸い上げ開発されたアイテムは、デザイン性だけでなく赤ちゃんの身体や、それをサポートする親の負担軽減が考慮されている。


これらの商品は、アイテムそのものだけでなく、パッケージにも一工夫あるのが特徴だ。ガーゼロンパース&ビブSETには小物入れとして利用できるオーガンジー巾着が、リブソックスには母子手帳・マスクケースにもなるポーチがそれぞれ付いており、ギフトにも喜ばれる仕様となっている。
デザイン性の高さだけでなく、機能やパッケージの二次利用などの付加価値は、贈り手のセンスが問われるギフトにとって特に求められる要素だ。6ポケット市場の中で抜きん出るための工夫として、“ならでは”の付加価値を考えてみてはいかがだろう。
レッドオーシャンの中にブルーオーシャンを見つける

同じ衣類でも、扱うアイテムやコンセプト、戦略が違えば全く異なるアウトプットがされる。株式会社ソウルフードが展開しているブランド「chocolatesoup (チョコレートスープ) 」は、ありそうでなかった“ニッチ商材”を扱うことでエンドユーザーの心を掴む。
ベビー・キッズのアパレルデザインは、今でこそバラエティに富んでおり、ポップで愛らしいものからクールでスタイリッシュなものまで展開が見られるが、以前はデザインの幅がそこまで広くなかったのではないか。
もともとキッズアイテムをセレクトし販売していた同社は、キッズ向けの雨傘やレインコート、レインブーツなどを探していた際に、デザイン性を兼ねたグッズが市場にないことから自社開発に至ったという。
立ち上げのきっかけともなったレイングッズは、今ではブランドの売れ筋定番アイテムのひとつだ。

そこから、ハットやキャップなどの服飾雑貨をはじめ、歯ブラシやサングラスなどの細かなアイテムを展開。モノトーン調のパターンが特徴の洗練されたブランド定番のデザインを含め、他ではなかなか探せないアイテムの数々は、店舗でもエンドユーザーの目を引くに違いない。

激しい競争があるからこそ、市場に潜むブルーオーシャンを見いだすことが人気に火をつけるキッカケになるかもしれない。
子どもたちのための“やさしい”選択

ベビー・キッズ商品は、意思表示が明確でない乳幼児が使用するモノだからこそ、より一層安心・安全に注意を払うべき商材だ。株式会社キララが展開する「Lien de famille (リヤンドファミーユ) 」からは、地球にも人にもやさしいベビー食器&カトラリー「bien mange (ビヤンマンジェ) 」がリリースされた。

デザイナーの多くが育児中の女性である同社では、親目線での商品開発が強みだという。ブランド初の食器&カトラリー商品の開発にあたって、0~3才の乳幼児をもつスタッフやユーザーの意見をヒアリング。そこで強化したポイントが「地球と人にやさしいサステナブルなモノづくり」だ。
実際に、bien mangeに使用されている52%は竹由来の自然素材。製造や処理過程でも環境負荷が少ないエコな素材なうえ、素材そのものに抗菌効果があるため、まさに地球と人にやさしい安心・安全な商品だと言える。

近年では、企業のみならず商品を使用するエンドユーザーにもその意識は広がり、「サステナブルなモノであること」がモノを購入する際のひとつの指標となっている場合も多くある。将来を担う子どもたちに与えるモノだからこそより一層、素材の安全性はもちろん、この先の環境を考えたサステナブルなアイテムであることが欠かせない事項となるだろう。
アップデート必須のベビー・キッズ市場

コロナショックの影響や出生率の減少はあるものの、保育施設市場活性化への見込みや少子高齢化対策を鑑みて、今後も期待できる市場と言える。比例して、この先も参入企業は増加し、商品はさらに多様化するだろう。そこで、これからの商品展開において考慮すべきは「育児環境の変化」ではないか。
例えば、共働き世帯の増加や保育施設市場の活性化だ。現代社会において、共働き世帯は珍しいものではない。共働き夫婦をサポートするベビー食品や、家庭内・保育施設での玩具・雑貨用品へのニーズは高まるだろう。
環境の変化と合わせて、商品のアップデートやオリジナリティをもった開発が必然だ。母親目線だけではなく、父親を考慮した兼用のデザイン、成長の著しい乳児期から幼児期でも長きに渡り可変的に使用できるサステナブルなアイテムなど、現代の新たな技術をもって、これからの未来を創る子どもたちへのモノづくりに取り組んでみてはいかがだろう。
また、その理解と意識は作り手のみならず、そのモノを子どもたちの元まで届ける売り手にも必要だ。作り手であるメーカーやブランドと売り手であるショップが、商品のもつストーリーを理解し、ユーザーへ伝え、新たな価値提案をすることで、少子化による縮小が懸念されるこの市場を盛り上げていってほしい。
掲載ブランド紹介
amabro (アマブロ)
「表現の再構築」をコンセプトに2006年からスタートしたブランド。すでに存在している創造物を見つめ直し、amabroが考えるアートの視点から作品を企画し生産している。
取り扱いアイテム:テーブルウェア、ベビー・キッズ用品、生活雑貨など
公式ホームページはこちら
http://www.amabro.com/
Giving Store (ギビングストア)
生まれてはじめて受け取る贈り物「ベビーギフト」をコンセプトにしたショップ。いちばん最初の特別な”Giving”に、いつか親子で語り合えるような思い出を紡ぐギフトを提案している。
取り扱いアイテム:ベビー・キッズウェア、雑貨、スキンケア、玩具など
公式ホームページはこちら
https://givingstore.official.ec/
chocolatesoup (チョコレートスープ)
東京中目黒にあるベビー・キッズのセレクトショップ「chocolatesoup」が展開するオリジナルブランド。モノトーンのレイングッズがブランド定番の人気商品。
取り扱いアイテム:子ども服、子ども用レイングッズ、雑貨など
公式ホームページはこちら
https://www.chocolatesoup.info/
Lien de famille (リヤンドファミーユ)
ブランド名であるLien de familleは「家族の絆」という意味。株式会社キララのママデザイナーが立ち上げた“ママ目線”のアイテムが特徴。
取り扱いアイテム:ベビーウェア、スタイ、雑貨など
公式ホームページはこちら
https://lien1860.thebase.in/