2020.03.31.tue

いま求められているエプロンとは

Contents

エプロン=老若男女が着られるユニフォーム

春になると需要が増える商材の一つとして、エプロンが挙げられる。新生活を機に新調する人が増えるという理由もあるが、何より影響を及ぼすシーズナルイベントが、5月の「母の日」だ。日頃家庭を守ってくれている母親に、感謝を込めてカーネーションと一緒にエプロンを贈る。今の時期は、母の日に向けて売り場の拡大や、ギフト提案を行う予定を立てているショップも多いのではないだろうか。

一方、晩婚化が進み共働きも当たり前になっている現代において、料理や掃除といった家事をするのに性別や年齢はあまり関係なくなってきている。料理が得意な男性もいれば、DIYにハマる女性も珍しくない。ガーデニング、絵画などの創作、洗車など、エプロンが必要なシーンは家事や趣味の活動の中で日常的に訪れる。今やエプロンは、男女問わず幅広い層が愛用できる「ユニフォーム」としての位置づけという方がしっくり来るのかもしれない。

そうした幅広いニーズに応えるために、セレクトショップはどのようなエプロンを店頭で扱っていくのが良いのだろうか。MMD TIMESが注目する3つのブランドのエプロンを軸に考察したい。

購入者に使い方をゆだねる“余白”のあるアイテム

「未完成だからこそ生まれる商品価値」で取材したVOIRYのエプロンは、使い込まれたような、くったりとした風合いが特徴だ。ブランド自体が古着風のアイテムを得意としており、必要になったらいつでもバサッと着られるようなラフさが魅力になっている。

また、余計な装飾をしないシンプルな作りも特徴的だ。金具やジッパーなど、利便性を考えれば付けた方が良いようなパーツもあえて付けないことで、ブランドの持つカジュアルな世界観をキープ。さらに購入者には自分で自由にカスタマイズをして楽しめるという“体験”が生まれるため、より商品への愛着がわきやすくなっているのだ。

究極のシンプルである「無印良品」が多くの人に支持されているように、使う人間が使いやすいようにアレンジできる余白があるからこそ、VOIRYのエプロンは人気商品になっているのだろう。

プロ目線×デザインでエプロンをファッショナブルに

「はたらく姿、シックに。」というコンセプトで今年デビューしたエプロンブランド「TELCO」が、今年2月に開催された合同展示会:MONTAGE 23RDで初披露となった。立ち上げたのは、静岡県浜松市で居酒屋兼甘味処を営む岩崎照子氏だ。

TELCOのエプロンは、70歳を超える岩崎氏が長年店を切り盛りしてきた経験をもとに、カフェなど飲食店での利用をメインに考えて作られている。まさに店で働く際に着用するコスチューム(制服)という位置づけだ。

現在は3種類3色で展開。いずれもシンプルな無地だが、ポンチョのように頭からすっぽりかぶるものや、ノースリーブワンピースのように着られるものなど、従来のエプロンのイメージとは一線を画すファッショナブルなデザインになっている。若い人の目にはおしゃれに映り、エプロンを着慣れた年配のユーザーには新鮮に感じられるだろう。

デザインだけではなく、プロ仕様の生地を使って着心地や機能性にもこだわった。従業員が揃って着用することで、店全体に統一感を与え、利用客は信頼感と洗練された雰囲気をエプロン姿から感じ取ることができそうだ。

洋服を選ぶようにエプロンを選ぶ

ファブリックの製作・企画等を行う「アズマファブリック」と、大阪発のブランド「SUNNY LOCATION」のコラボユニット「SUNNY LOCATION design by アズマファブリック」のエプロンは、ファッション性が高く、よりギフト向きのプロダクトといえる。

素材は日本国内で染色した国産リネンを使用し、洗いざらしたような自然な風合いが特徴だ。形もスタンダードなエプロン型だけでなく、前と後ろが2wayになっており割烹着や羽織のように着られるコート型、巻きスカート型など多彩なラインナップのデザインになっている。

ワンマイルの外出なら着たまま気軽に出かけられるようなデザインを意識しており、「洋服を選ぶようにこだわりを持ってエプロンを選びたい人」をターゲットにしているという。

水色や茶色などやさしい色合いのものや、赤、緑、黄色など目を惹くようなビタミンカラーなど、豊富なカラー展開・配色も魅力だ。家事や作業時に着用して気分を上げ、日々の暮らしを楽しく過ごしてほしいという思いが込められている。

なぜ人はエプロンを着るのか?

三者三様の特徴から見えてくるのは、エプロンは水濡れや汚れから衣服を守る作業着としての役割だけではなく、身に着ける人の情緒にも大きく影響しているということだ。

自分でカスタマイズできるエプロンは“世界に一つしかない自分だけのエプロン”を作れることへの高揚感が生まれ、プロ仕様のエプロンをファッショナブルなデザインで着られることは自信や自己肯定につながる。洋服のように着られるビタミンカラーのエプロンは、着るだけで気持ちを明るくしてくれるはずだ。

そして何より、エプロンを身に着けることで気持ちにスイッチが入るという人もいるだろう。頭にハチマキを巻いて気合を入れるように、家事や作業を始める前に、エプロンに袖を通し、腰ひもをキュッと結ぶ感覚が、着用する人間の脳や体に「これから作業を始める」という合図を送ってくれる。エプロンは作業着であり、日常着であり、人によっては戦闘服にもなるのだ。

セレクトショップに置くエプロンをどう選ぶか

冒頭でも述べた通り、ライフスタイルの多様化やジェンダーレス化が進む現代において、エプロンは「女性が家事をするときに身に着けるもの」とは限らなくなってきている。セレクトショップで扱うエプロンも、そういった固定概念を持たずに広い視野で選ぶことが必要ではないだろうか。

もちろん女性向けのかわいらしいデザインのエプロンもニーズがあるが、それだけではなくユニセックスで着られるデザインやサイズ感のものを揃えたり、カラーバリエーションを増やしたりと、より多様性を意識したエプロン売り場の需要はますます高まりそうだ。

また、アウトドアグッズが多い店舗なら薪で火をおこす際に着られる防火性のある素材のもの、ナチュラル系のアイテムを扱う店舗ならコットンや麻などやさしい風合いの素材を選ぶなど、店の世界観や客層にマッチするものを選ぶのもいいだろう。

陳列方法に関しても、ただハンガーラックに掛けるだけ・一角にまとめて並べるだけでは、「なんとなく目に留まった」という消費者とエプロンの偶然の出会いを起こしにくい。

あえてラフに吊り下げたり、テーブルや椅子に掛けて置いたり、商品の雰囲気が伝わり、利用シーンをイメージできるような工夫が必要だ。メーカーやブランドとコミュニケーションを取って、魅せ方を相談してみてはいかがだろうか。

エプロンで叶える「ていねいな暮らし」

エプロンは、決して生活必需品というわけではないかもしれない。しかしながら、何か作業をする際に、着の身着のままではなく「エプロンをつける」という工程を挟むことは、いわゆる“ていねいな暮らし”をしたいという消費者のニーズにもマッチするはずだ。

身に着けることでわずかでも気持ちがプラスに動くのであれば、店舗でエプロンを取り扱う意義は大いにありそうだ。“日々の生活がほんの少し潤うもの”、それを求めて多くの人はセレクトショップに足を運んでいるのだから。

掲載ブランド紹介

VOIRY(ヴォイリー)

古着風のデザインを意識したアパレルやエプロン、トートバッグ、長靴など、ありそうでなかったオリジナル雑貨の開発・販売を行うメーカー。目黒区の閑静な住宅街で、店舗兼ショールーム「VOIRY STORE」を営業中。 店舗およびオンラインショップではヴィンテージデニムやミリタリーデッドストックなどの古着や古道具も取り扱っている。

取り扱いアイテム: エプロン、バッグ、雑貨など

公式ホームページはこちら
http://voiry.tokyo/


TELCO(テルコ)

「はたらく姿、シックに。」をコンセプトに、静岡県浜松市で居酒屋兼甘味処「酒処 昭和31年」を営む岩崎照子氏が、カフェなど飲食店で働く人に向けたエプロンを作るべく立ち上げた、2020年デビューのエプロン専門ブランド。

取り扱いアイテム:エプロン


SUNNY LOCATION(サニーロケーション) design by アズマファブリック

アズマファブリックとサニーロケーションのユニットによるプロダクト。生産背景の持つ優れた加工技術や素材の特徴を活かしながら、独自の視点でアプローチし、新たな価値を見出すモノ作りを追求している。

取り扱いアイテム:エプロン、バッグなど

Recommend