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前進し続ける企業「ZOZO」

SNSや動画配信サービスの普及により、さまざまな業界の企業がDtoCに力を入れはじめている。正確には、企業のみならずインフルエンサーなどの個人までもがDtoCのモデルを採用しビジネスを行える時代が到来しているのだ。

代理店や小売を介すことなく、作り手が直接エンドユーザーへと働きかけるこのモデルは、現在のIT社会において比較的容易に取り組めるカタチである。一方で、集客や売上といった成果を出すために、モノの良し悪しとは別のスキルとなる情報発信力や企画力が必要であり、そこを課題とする者も多いはずだ。

そんなDtoCに積極的なアパレル業界での、興味深い事業が株式会社ZOZO (ゾゾ) が提供する「YOUR BRAND PROJECT (ユアブランドプロジェクト) 」だ。

ZOZOがインフルエンサーとともに、ブランドの立ち上げを全面的にサポートする当事業。併せて、ZOZOTOWN (ゾゾタウン) の出店ブランド向けに、同社が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR (ウェア) 」で活躍するインフルエンサーを紹介し、ZOZOTOWN内にDtoCブランドを拡充する取り組みも行っており、業界の活性化にさらに拍車をかけそうだ。

そこでMMD TIMESは、EC推進部 WEARブロック ブロック長 水橋龍介 (ミズハシリュウスケ) 氏を取材した。同社の成長戦略として発表された、“商材拡張”の施策の一つとして開始されたという今回のプロジェクト。クライアントの課題、それに対する解決、エンドユーザーにとってのメリットなど詳しく話を伺った。

株式会社ZOZO (ゾゾ) 
https://corp.zozo.com/
「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を企業理念にファッション通販サイト「ZOZOTOWN (ゾゾタウン) 」の企画・運営をはじめ、ファッションコーティネートアプリ「WEAR (ウェア) 」の企画・運営など、ファッションとテクノロジーを軸にサービスを展開。

テクノロジーでボトルネックを解決

株式会社ZOZOについて教えてください

− 水橋氏コメント:ZOZOTOWNは「想像 (SOZO) と創造(SOZO) を行き交う街」をコンセプトに2004年にオープンしたファッション通販サイトです。オープン当初は17ショップ・250ブランドほどでしたが、2020年12月現在で、1,400以上のショップ、8,100以上のブランド出店にまで拡大しました。

ZOZOTOWNでは出店企業の商品をカッコよく見せることにこだわりを持っていて、エンドユーザーが「購入したい」と思うきっかけをオンライン上にどれだけ作れるかを日々考えています。

近年強化していることは、テクノロジーの活用です。例えば、3D計測用ボディースーツの「ZOZOSUIT 2 (ゾゾスーツ 2) 」、スマホで簡単に足の3Dサイズが計測できる「ZOZOMAT (ゾゾマット) 」、それから今年リリースしたフェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS (ゾゾグラス) 」、これらはいずれもインターネットでモノを購入する際の“ボトルネック”を解消するために開発したものです。

ZOZOGLASS (ゾゾグラス)

ボトルネックとは?

− 水橋氏コメント:例えばコスメで言うと、オンライン上では自分に合った色味の判別が難しいという点ですね。そこに肌の色やパーソナルカラーを診断するZOZOGLASSを提供することで、購入までのアシストを行い、オンラインでも安心してお買い物ができるような仕組みを作っています。

既存のサービスに留まらず、今後もテクノロジーの力を活用して、新しいサービスを展開していきたいです。ユーザーに満足いただけるという実績は、出店ブランドの拡大にもつながりますしね。

ZOZOTOWN (ゾゾタウン)  
https://zozo.jp/
日本最大級のファッション通販サイト。若者に人気のブランドからラグジュアリーブランドまで幅広く取り扱う。アイテムの即日発送や「ツケ払い」などのサービス他、計測テクノロジーを活用した業界きっての斬新な取り組みを行う。

共にブランドを作っていく「YOUR BRAND PROJECT」

YOUR BRAND PROJECTについて教えてください

− 水橋氏コメント:「YOUR BRAND PROJECT」は昨年新たに始めたDtoC事業で、大きく分けて二つの方向で事業を展開しています。まずひとつは、個人とZOZOで一緒にファッションブランドを作ること。もうひとつは、個人と出店企業を繋げて、協業による新ブランドの立ち上げや新商品開発のサポートを行うことです。

“個人”とは、「センスや才能のある個人」のことを指していて、僕らが運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」をはじめとするSNSなど、人気のインフルエンサーを皮切りに開始しました。

YouTuber、スタイリスト、ものまねタレント、女優など様々な「個人」が参加

− 水橋氏コメント:昨年6月に本プロジェクトにご参加いただく方の一般公募オーディションを開催いたしました。その合格者のブランドをはじめ、現在はYouTuberやモデル、会社員、WEARISTAなど個性豊かなインフルエンサーによるブランドが多数誕生しています。

企業と個人を“熱量”が結ぶ

出店企業と個人のマッチングは企業から要望があったのでしょうか?

− 水橋氏コメント:インフルエンサーとの接点の持ち方、関わり方については、企業からいただくご要望として多くありました。我々はサイト運営だけでなく、各ブランド様とコミュニケーションを取って商材を選定し、売上を伸ばすためのターゲティングからPRの内容までサポートする、言ってみればコンサルティング業に近いことを行うのですが、インフルエンサーの力も掛け合わせてモノづくりをしたいというニーズにお応えするからプロジェクトとも言えます。

このプロジェクトでは、出店企業とインフルエンサーをマッチングし、そこから発生する相乗効果で、企業と個人、そしてZOZOの三者にメリットがあるカタチを実現しました。

「バロックジャパンリミテッド」の展開する「y/m (イム) 」と「WEARISTA」によるコラボレーション

マッチングする際のポイントを教えてください

− 水橋氏コメント:YOUR BRAND PROJECTの一環として人気のあるインフルエンサーと出店ブランドを繋げて、商品企画やブランド立ち上げを行っています。それぞれの相性なども考慮しますが、一番重視するのは各々の持つ熱量です。

企業と個人、それぞれに主体性が無いとうまくいきません。両者が同じ熱量を持ち、お互いが手を握るような関係づくりが重要だと考えます。

協業するコトのメリット

企業と個人のメリットや相乗効果は?

− 水橋氏コメント:企業にとっては興味はあるものの、接点のなかった、インフルエンサーとの商品開発が可能になることが最大のメリットではないでしょうか。

本プロジェクトで開発された商品は基本的にZOZOTOWNのみの限定販売なのですが、即完売することもあります。

即完売したプロジェクト商品

− 水橋氏コメント:また、インフルエンサーが直接ターゲットとなるエンドユーザーとコミュニケーションを行い、熱量をもって商品の説明をするので、届くべきユーザーに正しくかつ早く、商品理解・認知がされていく点がDtoCならではの強みです。

インフルエンサーとしても、憧れのブランドと協業して自分で商品が作れることそのものがメリットですし、お互いのファンが両者を認識するので、ブランドとインフルエンサーそれぞれに新たなファンが生まれることも利点だと考えます。

YOUR BRAND PROJECTは、まだ新しいプロジェクトではありますが、プラットフォーマーとしての僕らにも新しいお客様との出会いの創出やZOZOTOWN限定にすることでの差別化など、単なる商品拡張とは別のメリットもあり、今後も継続することで更なる成果を目指しています。

挑戦し続ける会社

新しいコトへ挑戦するその勢いはどこからくるものなのでしょう?

− 水橋氏コメント:共通して言えることは、社員の誰しも が「ファッションが好き」ということですね。好きだからこそ気がつけるニーズがあって、ニーズを自分ごと化できるからこそ生まれる企画があると思うんです。

社風としても、新しいコトに挑戦する姿勢や世の中にまだないものを創ろうとする想いは強いですね。そして、それをちゃんと推進する力、社員の意思を尊重するカルチャー、それらの相乗効果で現状のサービスやプロジェクトがあると思っています。

YOUR BRAND PROJECTも昨年開始したばかりの新しいプロジェクトです。この挑戦でこれからのアパレル業界に新たなムーブメントを起こしていきたいですね。

水橋さんの今後の目標を教えてください

− 水橋氏コメント:モノを買うときに誰もがはじめに思い浮かべるECサイトがZOZOTOWNになるようにしたいです。とにかくいろんなブランドの商品が揃っていて、オンラインという理由でモノを買うことに躊躇いが生まれないようなサービス提供を考えていきたいと思っています。

現在はWEARの部門に所属しており、出店企業やWEARユーザーと関わる機会が多いので、ZOZOが運営するサービスをより好きになってもらえるよう働きかけたいですね。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

成功の鍵は第三者としての視点

ファッションを軸に次々と新たなサービスを展開していくZOZO。アパレル業界で盛んにDtoCが行われている中、同社が本事業を開始したことは、もはや必然とも思える。

しかし、いくらトレンドとはいえ、成功モデルを築くことはそう簡単なことではない。これは挑戦と進化を重ね、常に前進するZOZOの企業姿勢が築いた功績と言える。これまでにプライベートブランドで培った生産のノウハウや物流やカスタマーサポートセンターを自社運用、WEARで得たネットワークやインフルエンサーの育成経験、そして年間900万人がお買い物をするファッション通販サイトとして、出店企業や個人を説得する信頼を得ているのだろう。

今回取材したYOUR BRAND PROJECTの取り組みでは、ZOZOがセンスや才能のある個人とブランドをつないでDtoCを全面的にサポートする。DtoCの成功の鍵は、発信者と受け手、どちらの立場に偏る訳でなく、客観的に両者を見る視点なのかもしれない。

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