2019.11.12.tue

購買意欲を掻立てるファニチャーの展開例

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これからのセレクトショップで求められるファニチャーとは?

1点の単価が高く、ショップ内での展開面積も要するシェルフやソファー、テーブルなどの家具商材を仕入れる際、セレクトショップバイヤーはいつにも増して慎重にならざるをえない。なぜならば、家具商材はサイズでいえば、セレクトショップのブランドイメージを左右する大きさであり、金額でいえば、1点で売り上げを左右する大きさの商材だからだ。

今回MMD TIMESは、ファニチャーを取り扱うメーカーに、今求められているテイストやセレクトショップでのディスプレイ方法を取材した。

「顧客に“選ばれる店”のインテリア商材とは?」 でも、ブランドイメージを伝えるインテリア商材の売り方、見せ方について述べているが、今回はサイズも金額も“大物”である家具商材にフォーカスして、購買意欲を掻立てる陳列方法やセレクトショップが考えるべき仕入れ基準に迫りたい。

比較購買できるような陳列で“この中から選びたくなる”仕掛けを

ライフスタイルショップやアパレルショップへ卸しをしている市場株式会社の営業担当者は、“他ブランドと並べて陳列をする”ことを提唱している。

顧客が比較購買できる陳列をすることで、「買うか買わないか」ではなく「どれを買うか」という前向きな購買検討意欲を高められるからだ。

並行陳列には、同等の価格帯や品質のものを並べる方法、素材の異なるものを並べる方法、価格の全く異なる商材を並べる方法など、様々な組み合わせ方がある。自店の顧客が求めそうな組み合わせ方ができれば、商材同士の相乗効果で“この中から選びたくなる”売り場になるだろう。

また、比較購買できる陳列をしたら、それぞれの商品の特徴と、店としての一押し商品をスタッフが共通認識として持つことが重要である。

「どれを買うか」で悩んでいる顧客にとって、信頼できるスタッフ(店)か?ということが、最後の決め手になることは非常に多い。

市場株式会社の家具は30〜40代のニューファミリー層をターゲットにしている。9月に東京で開催された合同展示会:MONTAGE 22ndでは、店舗の坪数が狭い都心部の小型店でも展開できそうな商材をセレクトして展示をしていた。今後はライフスタイルショップやアパレルショップに留まらず、ハウスメーカーとの新規取引や海外取引を狙っているそうだ。

家族のライフステージの変化が目まぐるしいニューファミリー層は、数年後の生活を踏まえて商品を検討する。その場合、比較購買しやすい売り場は訴求力が高いと言えるだろう。

ライフスタイルシーンを“まるごと”売り出すディスプレイ

1000社ほどの取引先を持つ東谷株式会社が展開するROOM ESSENCE(ルーム エッセンス)では、ライフスタイルシーンを“まるごと”演出したディスプレイを提唱している。

生活の中心になるファニチャーは、単品ではなく小物と組み合わせることで、より身近に購入後の暮らしをイメージでき、購買意欲を高められるからだ。

東谷株式会社は自社製品が非常に豊富である。 そのため、ライフスタイルシーンを自社商品のみで作りやすく、セレクトショップへ提案する際は、商品を複数組み合わせたディスプレイの提案をしている。

メーカー側から提案されたディスプレイを基に商品を展開すると、商品に統一感があるため世界観は作りやすい。

提案されたディスプレイを基に、自店の顧客ニーズに合う商品と入れ替えたり、自店の特徴的な商品を混ぜたり、独自の色をつけることも、1からディスプレイを考案するよりも容易にできるのではないだろうか。

今求められているテイストとは?

今メーカーへの問い合わせが増えているのは、アウトドアインテリアだ。アウトドアブームの影響もあり、ルーフバルコニーで使用できそうなテーブルや、室内でアウトドア気分を楽しめるロッキングチェアなど、外のものを家の中に持ち込んで楽しむスタイルが求められる傾向にある。

「アウトドアブームの行方」で紹介したHang outのアウトドアインテリア

だが、「アウトドアブームの行方」 でも述べたように、アウトドアビジネスは熟成しつつあるため、顧客が商品を見定める基準が高くなっているのも現状だ。

市場株式会社も新商品としてアウトドアインテリアを展示していた

メーカーは、プロダクトが飽和状態の市場に対して、海外の展示会を参考にしたり、ファッションの流行をリサーチしたり、次にトレンドとなりそうな柄やテイストを取り入れたりして、新商品を生み出している。

セレクトショップでは、今求められているテイストを揃えるだけでなく、こういったメーカーの“こだわり”を店頭でPRすることで顧客への訴求力は格段に上がるのではないだろうか。

“狭く深く”を意識した売り場作り

ライフスタイルが多様化する中、全ての人に求められる商品というものは、もはや存在しないと言える。今あるプロダクトは、「なるべく多くの人にウケそうなモノ」か「一部の人にウケるモノ」だ。

もし、セレクトショップで「なるべく多くの人にウケそうなモノ」ばかりを集めたら、店舗の独自性が薄まり、“ファン”に響かない売り場になってしまうだろう。セレクトショップで商品を選びたいと考える顧客は、「ライフスタイルに自分らしいこだわりを持つ」人が多い。

モノがあふれ、類似品も多く存在する中で、セレクトショップの売り場編集には、「多くの人にウケそう=広く浅く」ではなく、店舗のファンにターゲットを絞った“狭く深く”が重要だと言える。

ターゲットを絞ることで、顧客が減ってしまうことを懸念する店舗もあるかもしれない。しかし、「○○専門店」や「メニューはこだわりの3品だけ」など、ターゲットを絞った繁盛店は少なくない。

これは、ターゲットを絞ることで、店舗の商品知識や編集のノウハウが高まり、顧客の心に響く提案ができているからである。

その結果、顧客は減らずに、逆に行列のできる人気店に成長することもあるのだ。これは、セレクトショップでも同じことが言えるだろう。

モノも情報も溢れ、SNSでの情報発信が活発な現代では「情報は数時間で古くなる」とも言われている。トレンドを捉えることも重要だが、それだけではない店舗の独創性、独自性がさらに重要だ。

ファニチャーは、店舗全体のブランディングに大きく貢献する商材である。上記で紹介した購買意欲をそそる展開例やトレンド情報を、ぜひ売り場作りの参考にしてほしい。

掲載ブランド紹介

市場株式会社

木製家具を中心に、ミラー、照明などのインテリア小物まで多彩に揃えた、家具製造・ 販売メーカー。多彩なテイスト、デザインを揃え、B to B向けサービスも充実している。

取り扱いアイテム:テーブル、チェア、ソファ、デスク、ベンチ、インテリア雑貨など

公式ホームページはこちら
https://ichiba-web.com/


東谷株式会社 AZUMAYA Co.,LTD
ROOM ESSENCE(ルームエッセンス)

顧客の多様なニーズに柔軟に対応し、時代の変化に合った商品の企画開発をする、大正2年創業の家具インテリアメーカー。豊富な商品ラインナップで、空間を総合的に演出し提案をしている。

取り扱いアイテム: ダイニングテーブル、チェア、ソファー、ラグ、リビング用品、オフィス家具など

公式ホームページはこちら
http://www.azumaya-kk.com

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