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注目される新たなビジネスモデル、サブスクリプションサービスとは?
昨今、様々なジャンルに取り入れられている「サブスクリプションサービス」。サブスクリプション(subscription)とは、製品やサービスなどの一定期間の利用に対して、代金を支払う方式のビジネスモデルのことだ。
音楽ではストリーミング配信を行うApple MusicやSpotify、映像サービスではNetflixやHuluなどをはじめ、雑誌の読み放題が人気の楽天マガジンやdマガジンなど、これらはすでに利用している人も多いだろう。その他にも洋服やブランドバッグが借り放題になるファッションのサブスクリプションや、コスメに美容室、食品や飲食店など多岐にわたって広がりをみせている。
MMD TIMESでは、今注目のビジネスである「サブスクリプション」が、インテリア業界では現在どのように展開され、また今後どのように成長を遂げていくのかを知るべく、家具や家電のサブスクリプションサービスを提供する「subsclife(サブスクライフ)」の代表を務める町野健氏から話を伺った。
subsclife(サブスクライフ)とは?
subsclife(サブスクライフ) https://subsclife.com 取り扱いアイテム:家具 / 家電 / インテリア雑貨 / グリーンなど 主な取扱ブランド:ACME Furniture / journal standard Furniture / NOWHERE LIKE HOME / BALMUDA / cado
subsclifeは、人気ブランドの家具やこだわりのデザイン家具、デザイン家電やインテリア雑貨などの新品商品を、手頃な月額利用料金で利用できるサービスだ。
利用期間中は生活環境の変化や気分などに応じて、自由に家具を変更することも可能。利用期間もプランによって選べ、それぞれのプランの期間経過後は、継続・返却・購入のいずれかを選ぶことができる。
個人向けサービスのほか、オフィスや店舗などの法人向けサービスも行っており、家具導入時の初期費用を抑えながらこだわりの家具を選びたい人や、いわゆるオフィス家具ではないデザイン家具などを使ってオフィスを作りたい人など、新しいインテリアライフスタイルのカタチを提供している。
subsclife(サブスクライフ)を立ち上げたきっかけ
家具のサブスクリプションサービスを始めようと思ったきっかけについて聞かせて下さい。
− 代表コメント: 自分自身が引っ越す機会があり、家具を選びに東京の目黒にある家具通りに行ったのですが、30~40店舗の家具屋を巡った際、あることに気が付きました。それは、良質な家具をひと通り揃えようとすると、大きな金額の初期費用が必要だということと、良質な家具を揃えている販売店に活気がなく、どこか元気がないように感じたことです。
初期費用を減らすため、代わりに質を抑えたモノを買うかというと、そういったモノには心を動かされない人が多いでしょう。しかし、日本のインテリアの現状や景気のことを考えると、「高価で良質なモノ」よりも「質を抑えたまあまあなモノ」で妥協している人、せざるをえない人が少なくはないはずです。そのため、良質な家具を揃えている販売店があっても、消費者は高価な商品になかなか手を出せず、商品の回転数が落ち、活気がなくなってしまっているのではないかと考えました。
− 代表コメント:売る側も買う側も元気がないという状況を感じ、ビジネスで変えることができたら面白いのではないか、そんな事を考えていたタイミングで、アメリカで開催された100社以上が集まるベンチャーイベントで「サブスクリプションサービス」の仕組みを知る機会がありました。
日本でも家具ビジネスに、お金の回収手段としてこのサービスを導入すれば、先に述べたような現状を変えられるのではないかと思い、subsclife(サブスクライフ)を立ち上げることにしました。
「買う」でも、「借りる」でもない、新たなモノの所有の仕方
subsclifeのメリットや、他社との違いを教えてください。
− 代表コメント:通常かかる大きな初期費用を抑え、手軽な月額利用料金と配送料のみで、人気のデザイン家具やこだわりのブランド家具を使い始めることができるというのが一番のメリットではないでしょうか。お金の支払い方、買い方が変わると考えてもらうとわかりやすいと思います。
高価で手を出しにくい商品も、サブスクリプションサービスを利用する事で、手軽に使い始める事が可能になり、それが良い商品を知る機会にも繋がっていくのではないかと思っています。
− 代表コメント:他社やレンタルサービスとは全く異なり、定価を超えない月額料金を設定しているので、選んだ利用期間が過ぎたら、その後どうするかは購入・返却・継続から選択ができ、継続する場合は商品の交換も可能です。不要になった家具を捨てるのではなく、返却という形で処分できることは消費者にとってもメリットになります。
サービスリリースから1年ということで、今はまだ返却されてきた家具はわずかですが、二次利用やリペアをして中古販売を行うなど、循環させることで廃棄の全く出ないサスティナブルなカタチを目指しています。サービスを利用することで地球全体での廃棄問題にも必然的に貢献できるということも大切なポイントです。
取り扱いブランドの選定や、仕入れをする際に大切にしていることはありますか?
− 代表コメント:まずは各ブランドやメーカーとしっかりと話をしてコミュニケーションを取ります。その上で、品質はもちろんですが、デザインやバリエーション、こだわりを持って商品の生産や仕入れに取り組まれているか、などを判断の基準としています。生産体制がしっかりしているということも大切ですね。
そういったことを見極めるという意味でも、コミュニケーションは重要です。会社というのは人が動かしているものなので、人と人との繋がり、人の想いなどを大切にしながら、本当に良いモノを見極め、これからも取り扱っていきたいと思っています。
主な利用者や人気のテイスト・ジャンルはありますか?
− 代表コメント:主な利用者ですが、件数の割合でいうと、エンドユーザーと法人などのオフィスや企業ユーザーの数は大きく変わりません。ただ、法人は主にオフィス向けが多いのですが、1社で100〜200台という利用もありますので、結果的には法人の利用が多くなっています。
エンドユーザーの利用者は、新居を建てたり引越しをしたりというライフスタイルの変化のタイミングで利用される方が多いですね。男女問わず、年代も20代から50代以上までと、幅広い年齢層の方が利用されています。
テイストやジャンル、ブランドによる人気の偏りというのはあまりなく、選ばれているアイテムは様々です。あえて挙げるならば、オフィスはカフェスタイルが人気でしょうか。わかりやすくオシャレでカッコイイ、自然でカジュアルな雰囲気ですね。会議室や執務室などにもそういったスタイルを取り入れられる企業が増えています。
B to B 向けサービスと今後の展望
subsclifeのB to B 向けのサービスとは、どのようなものですか?
− 代表コメント:法人向けのサービスとしては、家具や家電、インテリア雑貨のほかにグリーンなどを展開しています。家電製品にはお店で購入した時と同じようにメーカー保証があり、グリーンに関しては交換や水やりなどのメンテナンスサービスも行っています。
また、プロのインテリアコーディネーターによる、オフィスなどのインテリアコーディネート提案も可能です。イメージを持っていても、実際にそのイメージを実現するオフィス空間を創るために、どのような家具を選べば良いかわからない、というようなスタイリングの需要も多いので、予算や好みなどを伺いながらイメージと照らし合わせてコーディネートを行うサービスも好評です。
大きな企業だけでなく、個人でお店を経営されている方も、家具や什器にこだわりたいという方は多いと思うので、そういった方にもぜひ利用していただきたいですね 。
セレクトショップとの関わりや、今後の可能性について教えてください。
− 代表コメント:現在、ACME Furnitureやjournal standard Furnitureとは、商品の取り扱いという形で関わりを持っていますが、今後は様々な可能性や関わり方を模索していきたいと思っています。ショップ側からすると、「店で買わない」ということに繋がる我々のサービスは、対極にあるように感じられるかもしれません。しかし、サブスクリプションがもっと一般的になっていけば、消費者側がお店で選んだ商品を「サブスクしたい」と考えるようになっていくでしょう。そうしたときにセレクトショップの新しいサービスのカタチとして、一緒にサブスクリプションを取り入れ、共存していくことが出来れば良いと思います。
今年はサブスクブームという大きな追い風もあり、サービス開始からわずか一年ですが、業績についてはオープン時から約32倍という数字が出ています。2年後、3年後と今後も右肩上がりに5倍、10倍と伸びていくと予測しています。
今後も想いを共有出来るブランドやメーカーと手を組み、様々な顧客のニーズに対応できるように、取り扱いブランドやアイテムをさらに増やしていきたいですね。他にも、個人向けサービスの拡大や、法人向けでは、オフィスなどのインテリア提案に留まらず、セレクトショップ、カフェやレストランなど飲食店との関わりも広げていくことができればと考えています。
インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。
移り変わるライフスタイルと「家の中を、世界一、豊かな国へ。」
人々のライフスタイルの移り変わりとともに、モノの所有の仕方はこれからもどんどん変化していくだろう。若い世代の車離れやブランド離れなど、世代間での所有欲やステータスという価値観の違いも、「ただモノを売るだけでは売れない」時代のひとつの要因であり、売る側が様々な取り組みを行っていくために、考えていかなければならないテーマでもある。
物を売るセレクトショップとは一見対極にあるようにも思えるサブスクリプションというサービスだが、町野氏へのインタビューからは新しい関わり方が見えてきた。
例えば、店舗で商品を展示する什器としての利用や、来店客がゆったりと寛げるスペースに設置する家具など、ショップやブランドのイメージに合わせたアイテムを大きな初期費用を掛けずに導入することができれば、費用を抑えながら世界観にこだわった店づくりが可能になっていく。
subsclifeでは、部屋の中・家の中をもっとオシャレで豊かにしていきたいという考えから、「家の中を、世界一、豊かな国へ。」というビジョンを掲げている。これはライフスタイル業界としても共感するところが多いのではないだろうか。
今後も想いを共有出来るブランドや取り扱いアイテムを増やしていきたいというsubsclifeと手を取り、サブスクリプションというサービスを通じて新たな顧客へのアプローチを考えていくのも面白いかもしれない。
セレクトショップがサブスクリプションとの差別化だけでなく、どのように関わり、交わっていくのか、MMD TIMESとしても今後の動向を注視していきたい。