2020.07.07.tue

顧客創造となり得るマスクアイテム

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マスクのイノベーション

イノベーション創出の機会は突然やってくる。モノを売る側として、その大きなチャンスにいち早く気づき、変革の波に乗ることができるか。MMD TIMESではこれまでも、ヒト・モノ・コトのあらゆる角度から、ライフスタイル業界における新たなプロダクトやその価値、サービスなどを探り、考察や取材を行ってきた。

コロナでセレクトショップが抱える課題」では、「メガネ」の変革について触れた。当初は医療器具として普及していたメガネに、新たな機能やファッション性など、プラスαの価値を持たせることで、従来の利用者以外からのニーズを掴み、見事に市場拡大に成功した事例だ。

今回MMD TIMESでは、同様のイノベーションの可能性を持つアイテムとして「マスク」を取り上げたい。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) <以下コロナ>の影響で需要は日本全国・全世界へと広がっており、そのニーズに応えるべく各社が、新商品や改良品の開発を急いでいる最中である。

withコロナの時代、マスクはセレクトショップに適する価値創出ができるのか、そしてそれらはアフターコロナに渡って定着していくのか。セレクトショップにおけるこれからのマスクの可能性を探っていきたい。

多様化するマスクのニーズを知る

そもそもコロナ以前から日本を含め東アジアなど一部の地域では、マスクをすることは花粉症対策や風邪等の感染予防およびエチケット、大気の粉塵対策などのアイテムとして定着している。

今回、中国で発生した新型コロナは、パンデミック (世界的大流行) とされ世界各国に拡がり、これまで着用に抵抗を持っていた欧米諸国の人々にさえもマスクを必要とさせることになった。感染拡大に比例しマスクの需要が高まる一方で、供給が追いつかず、各地で価格の高騰や品薄状態が続いたことは記憶に新しい。

国内初の緊急事態宣言が発令された頃、解消されないマスク不足を補うために異業種企業が続々とマスクの生産を開始した。中でも大手企業の参入は大きく貢献し、使い捨てマスクの供給はようやく世界的に安定し始めた。

そうしてマスクの着用が当たり前となった“新しい生活様式”が広まり、ファッション性やデザイン性のあるものなど、マスクにオリジナリティが見られるようになってきたのもこの頃だろう。

国民のほとんどがマスクの着用を日常の習慣として受け入れるようになったことで、マスクニーズは多様化したと言える。これまで一般的に流通していた不織布の使い捨てマスクだけではカバーしきれない、新たな機能を望む人々が増えてきた。

着け心地にこだわったものや、洗濯しても型崩れしにくく何回も繰り返し使えるもの、高温多湿な日本の梅雨や夏の時期でも快適に使えるものなど、多様化し続けるニーズに合わせて、新たな機能性マスクが生まれている。

“ならでは”のマスク

各社が自社の得意技術を駆使し、機能性マスクの開発を進める中、目立つのはアパレル企業の参入だ。不要不急の外出自粛が求められる中で、洋服をはじめとしたファッション関連の売上が減少する一方、同企業らが発売するマスクの売れ行きは好調だという。

考えてみれば、身に着ける繊維を扱う企業なのだから親和性の高さは確かである。さらに、アンダーウェアやスポーツウェアをメインとする企業であれば、普及率も高く国民に馴染みのある生地でつくる商品がファンにとって魅力的に映るのは最もだ。

また、デザインや色柄がウリのアパレルブランドであれば、洋服の評価と同じだけの期待や需要を持たせることも難しくはないだろう。

必要なのは興味を惹く目新しさ

では、セレクトショップで扱うべきマスクとはどんなモノか。既に市場に出回ってしまっているようなマスクであれば、これから扱うメリットはさほど得られないだろう。なぜなら、消費者がセレクトショップで出会う商品に期待することのひとつに“目新しさ”があるからだ。

同じく欠かせない要素として、“独自性のあるデザイン”や“他とは違うファッションセンス”などが挙げられる。

マスクが日常に欠かせないアイテムになりつつあるとは言え、恐らくマスクを購入する目的でセレクトショップを訪れる人は、現時点ではほとんどいないだろう。

となれば、他の目的で訪れた消費者が店頭で予期せず“新しいマスク”と出会い、興味を惹かれて購入する、ということになる。そのためには、セレクトショップだからこそ気付ける新しい機能性と、そのショップならではのデザイン性やファッション性を兼ね備えていなければならない。

その付加価値が消費者のインサイトを掴めるかどうか、それが重要だ。消費者にとっての価値が上がることで、他社との価格競争を心配する必要もなくなる。

デザイン性を取り入れたマスクの例として、抗菌ファブリックマスク「Suriv」がある。ニッセイエブロ株式会社は、同商品の新シリーズとして、クリエイターとのコラボした「Suriv CREATOR Series」の展開を始めた。

それぞれのクリエイターがデザインするパッケージが特徴のひとつともなっているこの商品には、“今、逆境をはね返そうと進む一人一人の背中を押していきたい”というメッセージが込められている。

医療用ガウンやスポーツウェアなどにも利用される素材を使用したマスク自体の抗菌機能に加え、パッケージデザインにも価値を持たせることで、ギフトとしても喜ばれる商品に進化を遂げた。

コロナ以前にはギフトアイテムとしての需要があるなど誰も考えもしなかったマスク。だがそこに人々の生活週間の変化とデザインや機能性が加わったことで、ギフトとして贈るという選択肢が生まれたのだ。
これはまさに“目新しさ”として消費者の目に映るのではないだろうか。

効果的なマスクVMDとは?

マスクの取り扱いを開始するならば、売場作りの強化についてもぜひ考えてもらいたい。関連商品をまとめてヘルスケアのコーナーを作って購買意欲を高めたり、美容関連商品と合わせて展開し、マスク着用時のメイクやヘアスタイル、スキン・リップケアなどを楽しめるような構成にするのもアリではないか。

ヘルスケアとして見るのか、ファッションとして捉えるのか、マスクをどのカテゴリとして扱うかで、売場構成は全く変わってくる。これまではヘルスケア(衛生商品)としての扱われてきたマスクだが、今後は美容との結びつきも強くなっていくことが予想される。

実際に美容室では、マスク着用時に似合うヘアスタイルのアドバイスやヘアアレンジのサービス提供が人気となっているようだ。他にも様々なマスクをした時の“自身の見た目”に重点をおく商品やサービスが次々と登場してきている。

このような観点からマスクとファッションを掛け合わせて売場を広げていくことは、なかなか面白いのではないだろうか。マスクの色や柄に合わせた帽子やヘアバンドなどヘアアクセサリーや、マスクと相性の良いピアスやイヤリングなどのイヤーアクセサリーを一緒に提案をしてみるという手もある。

美容やファッションなど、健康・医療からは一見離れて見える別カテゴリでの展開ができることもセレクトショップならではの特徴と強みといえるだろう。

その他のマスク周辺アクセサリにも注目したい。株式会社MEDIKから出ている「ULTRAWAVE 除菌マスクケース ver.2」はマスクを収納するケースとしての役割を果たしつつ、マスク自体を除菌することで使い捨てマスクであっても繰り返しの使用を可能にしてくれる。

飲食の際などのマスク着脱時の取り扱いに悩んでいる人や、毎日マスクを取り換えることが困難な場合など、ターゲットが複数に渡り、“誰にとっても嬉しい機能”が付いていることが大きな特徴だ。

紫外線で除菌と乾燥ができる、ULTRAWAVE 除菌マスクケース ver.2
A.Y.Judie の“なんでもマスク”

株式会社A.Y.Judieからは、ハンドメイド需要に応える商品として「なんでもマスク」が発売されている。ガーゼやクロスなど生地の供給が飽和する中、留め具に焦点を当て、規格や色違いのクリップを商品化するという発想だ。

脚光を浴びるアイテムだけでなく、その周辺グッズと合わせて構成することで、単にモノを置くのではなくコーナーとして売場に力が生まれる。その規模や魅力が増せば、メイン商品以外でも売場にある消費者インサイトを掴んだアイテムの売上が見込めるだろう。

販売促進ツールとしてのマスク

マスク着用の習慣は、少なくとも対コロナのワクチンが開発・普及するまでは続くことが予想される。withコロナの時代では“マスクの提供”がひとつの社会貢献として確立し始めている。

医療現場でのマスク不足に対して、アパレルハイブランドをはじめとする企業のマスク寄付は話題となりブランドのイメージアップにもつながった。このようなマスクによる社会貢献活動も単なる慈善活動で終わらせるのではく、ビジネスと結びつけて考えてみてはどうだろう。

実際に目にするマスクビジネスとしては、マスク不足の施設や個人に対して需要と供給をマッチングさせるオンラインサービスが運営されていたり、マスクを店舗や施設への来店・来場ノベルティにしていたりと、その形はさまざまである。

セレクトショップでもマスクを利用したビジネス展開、つまり販売促進を行うことができるのではないだろうか。例えば、マスクそのものをノベルティとして渡すという方法だけではなく、商品を購入することでマスク不足の現場にマスクが寄付されたり、売上の一部が新たなマスク開発の資金の一部として使われたりするような仕組みをつくることは、ショップや会社の規模に関係なく実践できそうな施策だ。

コロナショックの影響で今後もモノの買い控えは続くと予想される。しかし、買い物と社会貢献を繋ぐことによって、ショップやブランドイメージの向上と同時に、セレクトショップで懸念される“不要不急の買い物”という考え方をポジティブに捉えるユーザーマインドを創ることが可能になる。マスクを商品とするだけではなく、その他の商品の販売促進のためのツールとして考えることもできるのだ。

イノベーションに拍車をかけるのはセレクトショップ

マスクはドラッグストアに買いに行く、というこれまでの常識が変わろうとしている。医療用品であったマスクが、アフターコロナの時代にもファッションアイテムとして市場を広げ、存続していくのか。その鍵の一端はセレクトショップにあるのではないか、MMD TIMESではそう考えている。

今回紹介した商品やサービスを参考に、マスクを展開商品やビジネスにするアイデアをぜひ考えてみてほしい。アパレルショップや百貨店だけでなく、セレクトショップがマスクを扱うことで、このイノベーションが助長されることは間違いないだろう。

前回のメガネ、そして今回のマスクの事例から、セレクトショップにはモノにイノベーションを与えられる潜在的要素があるということを改めて認識してもらえたのではないだろうか。斬新で独自性のあるデザイン・機能を持った商品の追求は、モノの価値創造やイノベーションに繋がっていくのだ。

MMD TIMESでは今後もセレクトショップが扱うことによって、イノベーションを起こせる可能性のあるカテゴリや商品を引き続き探っていきたい。

掲載ブランド紹介

抗菌ファブリックマスク Suriv(ニッセイエブロ株式会社)

抗菌ファブリックマスクのSuriv(スリーヴ)は、バクテリア飛沫ろ過率99%、ウィルス飛沫ろ過率92%に加え、アパ レル製品や医療用ガウンにも使用される機能素材「CVC60/40」を採用した三層構造マスクブランド。

取り扱いアイテム: マスク

公式ホームページはこちら
http://suriv.jp/


ULTRAWAVE(株式会社MEDIK)

ULTRAWAVEは、医療機器メーカーの株式会社MEDIKが手掛けたブランド。医療機器の観点から安心安全のヘルスケアアイテムを展開している。

取り扱いアイテム: 除菌グッズ

公式ホームページはこちら
https://medik.co.jp/ultrawave/


A.Y.Judie

機能をまとい自由を愉しむA.Y.Judieは、ライフスタイルの変化を機敏にとらえ、少し未来の働き方や生き方にもフィットする、一歩先ゆくスタンダードを想像し続けているブランド。

取り扱いアイテム: ファッション雑貨

公式ホームページはこちら
https://ayjudie.com/

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