2023.01.17.tue

goldie H.P.FRANCEで見つける特別な宝物

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goldie H.P.FRANCEとは

子どもの頃、隠された財宝を大冒険の末に見つける映画や、一攫千金を目指し旅に出る漫画でワクワクし目を輝かせた記憶は多くの人にあるのではないだろうか。その映画や漫画の主人公はいつも“特別ななにか”を探していて、そこに共感し一喜一憂していたはずだ。

そんな娯楽で得られるドキドキとはまた違う、大人になってからも楽しめる“宝探し”がある。それは“買い物”だ。

ビンテージを扱う古着屋やフリーマーケット、蚤の市などわかりやすく“一期一会”を楽しめる場所にワクワクしながら出かけて、探していたものや好みのものと出会えたときの嬉しさは計り知れない。

そんな買い物で得られる特別感を大切にしているセレクトショップがgoldie H.P.FRANCE (ゴールディ アッシュ・ペー・フランス) だ。平成以降、ファストファッションブランドが増え、飽和状態が続くアパレル業界で顧客競争が激しくなるとともに、セレクトショップでもPB商品の取り扱いが多く見られるようになった。

良いものを安く買えるようになることは消費者目線でなら嬉しいことだが、そうなると業界内では差別化が難しくなる。価格競争が起き、似たようなデザインの商品を取り扱うショップも増え、結果自分にとって特別なものと出会える本来のセレクトショップが減ってしまったようにも思える。

今回、アッシュ・ペー・フランス株式会社セールスチャネル事業本部で本部長を務める坂根潤一 (サカネ ジュンイチ) 氏と、プロダクト事業本部でバイヤーを務める高橋悠平 (タカハシ ユウヘイ) 氏に話を伺った。彼らの話のなかに今のアパレル業界の“宝”ともいえる特別なこだわりを見た。それらを紹介していき、今後のセレクトショップの在り方について考えていきたい。

H.P.FRANCE (アッシュ・ペー・フランス)
https://www.hpfrance.com
1984年に原宿で設立以来、ファッションを中心に、インテリア、アートなど生活と文化に関わるさまざまな事業を展開。日本はもちろん、パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、ベルリンなど世界中のクリエイティブな才能や個性との出会いを大切にし、それをエネルギーにビジネスを成長させている。
goldie H.P.FRANCE (ゴールディ アッシュ・ペー・フランス)
https://www.hpfrance.com/shop/goldie
アッシュ・ペー・フランス株式会社が運営するブランド、goldie H.P.FRANCEではヨーロッパのクリエイターズブランドを中心に、人生を豊かにするクリエイティブなアクセサリーやファッション雑貨、インテリアまで幅広くセレクトし紹介している。

インポートセレクトへのこだわり

goldie H.P.FRANCEについて教えてください

高橋氏コメントgoldie H.P.FRANCEはアーティストとアルチザン (職人) が愛を込めて作るアイテムをセレクトし、お客さまが自分にとっての”gold (特別)”を見つけて暮らしが豊かになることを願うセレクトショップです。

具体的にはフランスなどのヨーロッパからセレクトしたジュエリーや服飾雑貨を中心に取り扱っているのですが、今となってはPBの展開がなく、アパレルの取り扱いも少ないインポートのみのセレクトショップは珍しいかもしれません。

プロダクト事業本部 バイヤー 高橋悠平 (タカハシ ユウヘイ) 氏

どのようにして生まれたんですか?

− 坂根氏コメント:goldie H.P.FRANCEが生まれたきっかけは30年前までさかのぼります。当時、H.P.FRANCEはパリのバイヤーとの繋がりからヨーロッパのクリエイターたちの作品と出会い、ショールームで卸売事業を行っていたのですが、海外の珍しい作品が多かったこともあり、リース依頼などの引き合いが増えていきました。露出が増えていくうちに直接購入したいというお客さまからのお声も増えてきたので、H.P.FRANCEの1号店を原宿に出店したんです。

その後、少しずつ店舗展開を増やしていきました。当時は現地の海外バイヤーが主体となりバイイングしたアイテムを販売するという体制でしたが、もっとマニアックで日本人の感性を織り交ぜた女性向けセレクトショップで、事業を広げて独自性を出していきたいという想いから、2000年にウィメンズ向けインポートセレクトショップとなるgoldie H.P.FRANCEを立ち上げたんです。

セールスチャネル事業本部 本部長 坂根潤一 (サカネ ジュンイチ) 氏

ウィメンズブランドに男性スタッフは多いんですか?

− 坂根氏コメント:goldie H.P.FRANCEにメインで関わるオフィスチームでは私たち二人だけですが、ショップによっては男性スタッフが在籍しています。ただ、1店舗に1人いるかいないかという状況で、全体からみればかなり少ないです。

だからこそ店舗で働いていたときは覚えられやすいというメリットがありましたね。また、ウィメンズアイテムを男性が売ることは一見デメリットにも感じられますが、接客面でのメリットはあります。

お客さまのなかには自己満足として洋服を選ぶ方も多いのですが、人に見られることを意識して考える方もいらっしゃるので、異性ならではのスタイリング提案や意見が重宝されるといった強みもあるんです。

− 高橋氏コメント:今でこそ女性だけの職場やお客さまにも慣れましたが、入社時は二十歳で接客慣れしていなかったこともあり、お客さまにネックレスをお着けするだけでも手が震えたのを覚えています(笑)

そこから色々と経験していくなかで、坂根が伝えたような男性目線での提案など、男性ならではのメリットも見つけていきました。今ではこの環境で、男性の存在が良い意味でのつなぎ役になっていると思っています。

独自性のある商品セレクト

具体的な業務内容を教えてください

− 坂根氏コメント:主に事業計画の舵取りを中心にどのように店舗の営業利益を獲得していくかといったビジネス視点から、ブランディングやマネジメントの方向性や決定まで行ってきました。

− 高橋氏コメント:私はシーズンごとの買い付け、適正在庫の移動、全店での企画進行、自社ECの対応や店舗への研修まで、一般的な「バイヤー業務の買い付け」という枠を超えて、商品に関わることを多岐にわたってやっています。坂根がマネジメントや事業計画などを担ってくれているので、自分が商品軸に集中できるというのは大きいですね。

働くうえで大切にしていることはありますか?

坂根氏コメント:広く業務を行っていくなかで、本部スタッフ、店舗スタッフ、今まで関わったことのない外部の方などと会うことも多いため、コミュニケーションをしっかり取ることを大切にしています。

会社として事業計画のコントロールはもちろん、現場での数字も求められる立場でもあって大変ではありますが、関わる方々がどういう考えで、どう仕事して、どういうビジョンを持っているのかをしっかり汲み取って、その想いを形にしていくのが事業部長としての責任だと思って行動に移しているんです。

− 高橋氏コメント:私はアーティストとお客さまを繋ぐということを絶対的に大切にしています。そのためにはオリジナリティのある商品をセレクトして、お客様に気に入ってもらうことが必要です。

例えばクリエイションという観点でとてもユニークな商品だったり、独特な感性が感じられたり、そのアーティストが考えるモノの在り方や人となりまで感じられるアイテムをセレクトするようにしています。

そして、生産背景やアーティストの考えなど精神性まで熟考してみて、やっとその価値がお客さまに繋がるんです。うちではアーティストの商品をたくさん取り扱っていますが、どれも“goldie H.P.FRANCEらしさ”が表れた独自性のあるものになっていると思います。

左:「Jamin Puech (ジャマンピュエッシュ)」23SS XRAY DINO (エックスレイディノ) バッグ
右:「MUHLBAUER (ミュールバウアー)」23SS Sinamay Bucket Hut (シナメイ バケットハット)
国内ではgoldie H.P.FRANCEでのみ取扱いの「The Magpie & The Wardrobe (ザ マグパイ&ザ ワードローブ)」
「ZOE SHERWOOD (ゾイ シャーウッド)」の3Dプリンタで制作されたアクセサリー

goldie H.P.FRANCEならではの強み

お二人が考える店舗の役割とは?

− 坂根氏コメント:アーティストたちの想いをお客さまに届ける場所としての役割が店舗だと思っています。想いが詰まったモノを高橋が買い付けてきて、スタッフが商品の見た目だけじゃなく、制作背景やストーリーまでもきちんと理解した上でお客さまに伝える場所としての店舗が大切だと思うんです。

− 高橋氏コメント:お客さまから見て他に無いようなアイテムを扱っているのがgoldie H.P.FRANCE なので、屋号に入れている通り、店舗は常にお客さまにとって特別な“gold”になりうる商品を見つけてもらえる場所でありたいですね。

そのために背景まで魅力的な品揃えをして、また来たいと思ってもらえるようなお店にすることがオリジナリティに繋がると信じています。

goldie H.P.FRANCEならではの特長はありますか?

− 高橋氏コメント:オリジナリティあるセレクトアイテムの価値を伝えるための接客です。私たちが扱っている商品は決して安くないですし、まだ知られていない海外アーティストのブランドなども多いので、簡単に売れるものではありません。そこに“価値”を見出してもらうためには、それを伝えるための“接客”を大切にしています。接客力を上げることで顧客満足度も上がり、お店のリピーターである顧客さまも増えるんです。

− 坂根氏コメント:goldie H.P.FRANCEは顧客率が極端に高く、別業態のショップの顧客比率が平均30 %程度であるのに対して、50 %〜60 %を中心にお店によっては80 %〜90 %のところもあり、基本的に顧客さまで成り立っています。この数字は今までの積み重ねでもありますが、ショップのスタイルがお客さまに支持されてきたということです。

顧客率の高さは店舗の強みになりますね

− 高橋氏コメント:はい、接客による顧客率の高さはもちろんなんですが、他にない高揚感みたいなものを商品から感じてもらっていることもファン作りに影響していると思います。

昔の話になりますが、H.P.FRANCEがヨーロッパからのインポート事業を始めた時は、ジュエリーといえば18金やプラチナ、ダイヤなどの素材がほとんどだったなか、ガラスや針金というようなどこにでもある普通の素材が使用されたものをセレクトしてきました。

そこにはアーティストのクリエイションという“魔法”がかかっているので、ありふれた素材を使ったものが素敵な商品になっているんです。

そういった魔法がかかった商品を身に着けてもらい、今までにない高揚感をお客様へ提供し続けているので、お店もここまで発展してこられたのだと思います。一般的なモノの価値観じゃないところに価値を見出し、よりファッション分野の開拓に繋げることができました。

− 坂根氏コメント:例えば、接客力の高さにはバイヤーが現地で聞いてきた商品の背景やアーティストの想いを、各地にある店舗へ赴いてスタッフに直接伝えたり、動画を作成して YouTube (ユーチューブ) で配信しているのも影響していると思います。

そういう十分な商品資料が用意されているので、バイヤーの声を直接聞いたスタッフが自分で理解したうえでお客さまに商品の良さを伝えられるんです。

接客するうえで私たちの商品は競合他社とのバッティングも少なく、見たことがないアイテムも多いので、先入観なくお客さまにオススメできるというのも良い点だと思います。

スタッフ一人ひとりがコミュニケーションを大切にすることで長い対話が生まれて、時には商品に詳しいお客さまから逆に教わることもありますし、それで経験の浅いスタッフが学ぶこともあるんです。そうやってお客さまと一緒にお店を作ってきたところも、goldie H.P.FRANCEの強みかもしれません。

2022年10月新宿西口ハルクにてリニューアルオープンしたgoldie H.P.FRANCE新宿店
新宿店内の“MANIAC (マニアック)”をテーマとした売場

セレクトショップとしての未来

ファッション業界としての課題はありますか?

− 坂根氏コメント:SNSの発達によってお客さまから見ても売れているものが何なのか情報を収集しやすく、今まで以上に審美眼も厳しくなっているように感じます。ただ売れるからといって商品を仕入れていると、どこでも買える品揃えばかりになってしまいますし、商品のバッティングも起きてしまうので、今後はより店舗での買い物に付加価値を見出してもらうことが課題です。

それはショップスタッフの接客だったり、アーティストとのワークショップだったり、ショップで生まれる体験を楽しんでもらうことが店舗の価値を上げていくので、そういった課題を解決する方法を常に考えています。

− 高橋氏コメント:goldie H.P.FRANCEは商品面でのバッティングが少ないんです。仮にバッティングしてしまう商品があっても、お客様とショップスタッフが一緒に商品を選んで、結果うちで購入してくれることも多いとよく聞きます。

品揃えはもちろん大切なんですが、“人”や“接客”というセレクトショップの基本を大切にして、お客さまが「ショップに行きたい」「スタッフから接客されたい」と思えるような付加価値を生んでいくことが必要だと思っています。それこそが魔法になるのかもしれません。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

クリエイションという“魔法”をお客さまに伝える

今は昔に比べて、欲しいと思う情報は自由に得られる反面、そうでない情報まで受け取ってしまうほど情報過多な時代といえる。モノを選ぶにも似たようなものや選択肢も多く、本当に自分が欲しいモノと出会うには情報を整理する必要がある。

そのために、ライフスタイル業界でもDXなどのデジタル化を推し進めるショップも増えているが、あくまでもDXは手段であって目的ではないからこそ、実店舗の存在価値や本質は “接客”だということを忘れてはならない。

お客さまが的確に商品を選ぶためには、お客さまの志向を汲みとり販売員として過剰な情報を整理し、道先案内をすることが本来の在り方なのではないだろうか。

時代の流れでPB商品を取り扱うセレクトショップも増えているが、 goldie H.P.FRANCEは20年間ずっとインポートセレクトショップという姿勢を変えず、独自のセレクトとそれをお客さまにちゃんと伝えるための努力をし、その結果が店舗によっては80 %〜90 %にもなるという顧客率の高さに表れているのだ。

時代は何度も巡るというが、多様化し似通ったショップが増えているライフスタイル業界で、今こそ“人の温度感”が求められている。実店舗で見つけた商品の背景やこだわりを聞き、気に入って手に入れたものは、より“大切なモノ”になり暮らしを豊かにするだろう。

今回の取材を通して、昔買い物のときに感じたドキドキやワクワクを思い出し、好きなものを発見する喜びを改めて感じたくなった。

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