2023.01.10.tue

アパレル×インテリアの売場作り

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イエナカとイエソトの垣根を越えたセレクトショップ

「ライフスタイルショップ」という言葉を頻繁に耳にするようになったのは2015年頃。我々の生活に欠かせないものとして「衣食住」という言葉がよく使われるが、ライフスタイルショップとは、これら衣食住にまつわるファッション、食品、インテリアの関連商品を垣根なく集めたショップのことを指す。

その言葉の定着とともに既存セレクトショップの取り扱い商品の幅も広がり、アパレル中心であったショップが家具や生活雑貨を置いたり、インテリア中心であったショップが洋服や服飾小物を取り扱ったりと、核となる商品から各社が段々と裾野を広げているのもわかる。

では売り手として、これまで扱ってきた商品カテゴリとは異なる新たなジャンルの商品群を扱う際に留意することはどんなことだろう。今回MMD TIMESでは四つのブランドに話を聞き、アパレルショップが導入しやすい生活雑貨、インテリアショップが導入しやすいファッションアイテムを紹介していく。アパレルとインテリア、両方に顧客を抱えるブランドだからこそ見える売場の特徴や編集のヒントが窺える。

同じアイテムであるにもかかわらず、売場が違えばモノの動きも働きも変わってくるのが面白いところ。セレクトショップの台頭から30年以上が経過した今、さまざまなブランドイメージが確立し、ファンが定着しているからこそ、アイテムのカテゴリに捉われないニーズが発生しているともいえる。

今選ばれるのは、ライフスタイルという大きな枠でモノを捉え、既存の概念を飛び越えつつもブランドのカラーに合ったアイテムや売場で光るアイテム、そして顧客が喜ぶアイテムをセレクトできるショップではないか。そんな“今を生きる”ショップであるために、本記事が新たなカテゴリの商品を扱うきっかけになれば嬉しい。

インドアにもアウトドアにも活躍するアイウェア

「Ciqi (シキ)」は1984年に原宿で生まれたアイウェアブランド。顧客の大多数が女性で、ウィメンズのメガネ、サングラス、リーディンググラスなどを展開している。展開先はアパレルショップをはじめ、ライフスタイルショップや文房具店、書店と幅広い。

そして各展開先によってセレクトアイテムに特徴があるようだ。アパレルショップでは大きめなフレームにカラーレンズの入ったサングラスが取引の中心となる一方で、インテリアショップや文具店・書店ではフレームが華奢なリーディンググラスを中心に取引があるとのこと。

また、アイウェアは売場作りの良きアイテムとして一躍買うという。アパレルやアウトドア用品を扱うショップでは、帽子と合わせてサングラスを。インテリアショップや文具・書店では、ブランケットや書籍にリーディンググラスを添えることで、季節感のある使用シーンが演出できるそうだ。アイウェアは売場のアクセントとして目に入るため、セレクトショップ向きのアイテムの一つといえる。

ワンマイルウェアにもgoodなルームウェア

最近ではインテリアショップのアパレル展開も珍しくない。しかし、販売するには一つ大きな壁がある。それは、インテリアが“内向き”の商品であることに対して、洋服は“外向き”の商品であることだ。購買目的が家の中にあるか、外にあるか、両極端なアイテムを同じ売場で扱い、さらに売るとなるとハードルが高くなるのは言うまでもない。

インテリアショップでは、ルームウェアやエプロン、パジャマなどの“イエナカ需要”のあるアパレル用品が多く取り扱われる傾向にある。ということは、他のショップよりも一つでも多くイエナカ需要のあるアパレル用品を見つけることができれば、差別化が図れるのではないだろうか。

そんななか株式会社ヘミングスから発売されたのが「DAN-TEN (ダンテン)」である。名前からも想像ができるように、日本伝統の生活着である「はんてん」の形状や特徴を活かした家でも外でも活躍するライフウェアだ。

アパレルショップから注目が集まるのは、ミリタリーウェアの機能的なディテールが特徴のシリーズ「WEEKEND(ER)」や「COM-FLY (コンフリー)」。アウトドアシーンやワンマイルウェアとして取り入れやすい点が選ばれるポイントだ。

また、「COTON (コトン)」シリーズはリブ仕様の袖口が特徴。はんてんのあたたかさを取り入れながら、割烹着から着想を得たデザインで、寒い季節のおうち仕事がはかどる冬の新しいルームウェアだ。

(左) WEEKEND(ER)&Co.シリーズ (右) COTONシリーズ

ライフスタイルという観点で見れば関係性が強い「衣」と「住」ではあるが、売場でそれらを結びつけるのは意外にも工夫が必要である。自社の世界観にフィットしないモノを無理に取り入れようとするのではなく、ショップとの親和性が高いアイテムを取り入れることで、消費者への自然な提案に結びつくだろう。

ショップとの親和性を見極める

家の中に家の外のモノを持ち込むのが難しいというのなら、生活雑貨をアパレルショップに取り込むことも難しいのではないかと考えるだろう。しかし意外にもこちらの方がハードルは低いように思う。

なぜなら我々は家を中心に生活しており、生活雑貨であれば利用シーンが容易に想像できるからである。洋服であればTPOや手持ちのものとのコーディネートを考えながら買い物をするが、雑貨に対する購入判断は、毎日の暮らしの中で必要かどうか、欲しいかどうかという極めてシンプルで簡単なものだ。

このような理由から、家のモノを買おうというときに外出用の洋服を購入する脳にスイッチすることは難しいが、洋服を購入しているときに「良いな」と思う生活用品があれば、スイッチはスムーズに切り替わるといえるだろう。

2022年3月にローンチしたというリネンブランド「GOOD LINEN SUPPLY (グッドリネンサプライ)」は、ブランド立ち上げから1年と経たずして多くのセレクトショップでブランドロゴを見かけるようになった。内訳はインテリアショップ、アパレルショップともに展開を広げているという。

取り扱い商品は、キッチンタオル、テーブルナプキン、フェイスタオル、ピローケースといった生活雑貨。リネンでは珍しい、発色の良いピンクや黄色のキッチンタオルが同ブランドならではの魅力で、売場の目を引き好評とのこと。アパレルショップでは、エプロンやトートバッグと合わせて売場作りが行われるそうだ。主要アイテムと親和性の高い商品がセレクトされる傾向は、インテリアショップがアパレルを取り入れる例と同様である。

売場の見直しでセレクトが変わる

取材のなかで、コロナ禍により洋服の売上が落ち込んだことをきっかけに、アパレルショップから「ライフスタイルアイテムを取り入れたい」という問い合わせが増えたという話も出た。コロナショックを機に、アパレルショップは商品の幅を広げざるを得ない選択だったのかもしれない。

幸い、同時に発生していたキャンプブームにより、アパレルショップでもアウトドアというシーン展開での売場作りにおいて、ライフスタイルグッズを取り入れやすい環境であったともいえる。

そんななか株式会社ディテールが展開している「THOR (ソー)」シリーズも注目を浴びた商品の一つ。昨今人気なやわらかいアースカラーの展開が特徴的なコンテナボックスは、アウトドアシーンにピッタリのアイテムだ。野外ではもちろん、室内の収納にも活躍するため、取り扱いショップの幅も広い。

カテゴリの異なるものを新たに取り入れる際は、売場の見直しも必須である。アパレルショップには雑貨の売場を設けているショップとそうでないショップがあり、売場の有無によりセレクトされる商品は異なる。

例えば、売場がないショップには作り込みが必要なカトラリーや食器などのキッチン用品はハードルが高いそう。そういったショップには、アパレル商品と一緒にディスプレイできるオブジェなどのアイテムがおすすめ。現に同社でも、アパレルショップとはオブジェの取引が多いという。

「アップルオブジェ」は人気商品

アパレル企業は、どうしてもシーズンテーマが設定されてしまう。そのため雑貨と洋服の売場を一緒にしているショップについては、テーマに合わせたセレクトが叶っていないとチョイスが難しいうえ、在庫管理も課題に上がる。今後、ライフスタイルアイテムの展開拡大を狙うブランドは、ショップ内の売場構成についても見直しが必要に違いない。

身近にいるブレーンに耳を傾ける

ライフスタイルショップとしての充実を図り、新たな商品を取り入れる際、まず大事にしたいのはショップの世界観やコンセプトの再確認である。そのうえで、ファンが納得するカテゴリであるのか、コンセプトとして統一ができているのかという視点でのセレクトが重要だ。

また売場作りにおいては、今回の取材を経てブランドが持つ情報が非常に有益なものだと気づくことができた。作り手であるブランドは、さまざまなジャンルや形態のショップとの取引があるからこそ、一つの商品を多角的に見ることができ、適当な売場提案をすることができるのである。自分たちの戦略は持ちつつも、市場調査として仕入れ先からのアドバイスに耳を傾けてみたり、他店舗での事情や成功事例を参考にしてみてほしい。意外と近いところに救世主がいるかもしれない。

掲載企業一覧

Ciqi (シキ)

株式会社グラスルーツが展開する1984年に原宿で生まれたアイウェアブランド。色からデザインを組み立てることにこだわりを持ち、年齢問わず幅広い世代から愛されるコレクションを展開している。

取り扱い商品:眼鏡、サングラス、リーディンググラス、メガネ関連のアクセサリーなど

公式ホームページはこちら
http://ciqi.tokyo/


DAN-TEN (ダンテン)

日本伝統の生活着「はんてん」を現代的なスタイルにリプロダクトした、ニュースタンダードな冬の羽織り。ゆったりとした着心地、すっきりとした襟元、重ね着しても窮屈にならないアームホールや作業や家事がしやすい袖丈が特徴。

取り扱い商品:ルームウェアなど

公式ホームページはこちら
https://www.hemings.co.jp/brand/dan-ten.html


GOOD LINEN SUPPLY (グッドリネンサプライ)

キッチン、サニタリーなどシーンに合わせたオリジナルのリネン製品を扱うブランド。ホテルやレストランに供給する業務用のリネンの意味を持つ「リネンサプライ」。使い込むほどに生地が締まり、より強く柔らかく変化していく素材の良さとモダンでスタイリッシュなデザインが特徴。

取り扱い商品:キッチンタオル、テーブルナプキン、フェイスタオル、ピローケースなど

公式ホームページはこちら
https://www.goodlinensupply.com


株式会社ディテール

雑貨のインポーターとして1990年に創業。インポートだけでなく、自社開発プロダクトも扱う。「世界中から集めた、ここだけにしか無いモノがある」、そんなブランドを目指している。

取り扱い商品:生活雑貨、アウトドア用品、玩具など

公式ホームページはこちら
https://www.detail.co.jp/

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