Contents

新オフィスで開催「ACTUS WORKS」

東京・新宿三丁目。伊勢丹新宿店のショーウィンドウが街を彩り、飲食店で賑わう末広通りや自然豊かな新宿御苑のすぐそばにあるのが、ライフスタイルショップの「ACTUS (アクタス)」本店だ。駅から直結という好立地なビルの1・2階に構えるショップ兼ショールームには、日々多くの買い物客が出入りしており、同ビル3階と12階はACTUSの本社としてオフィススペースがある。今回、このオフィススペースがLIVE OFFICE「THINK PORTAL」 (ライブオフィス「シンクポータル」)としてリニューアルされ、関係者に向けて公開された。

2022年11月某日、取材班はそのアクタス本社に足を運んだ。噂の新オフィスは、同社が毎年開催しているステークホルダー向けの展示会「ACTUS WORKS (アクタスワークス)」の新たな会場でもある。

それまで別会場を借りて行っていた本展示会の会場を新オフィスに設定したことには、二つの意図があるようだ。一つは、長く続くコロナ禍で変わったオフィスの在り方についてACTUSの導き出した答えを示すこと。もう一つは、自社オフィスリニューアルを皮切りにオフィスデザイン事業への本格参入を発表することである。

今回のACTUS WORKSは、その新しく生まれ変わった本社内を巡回し、用意された11のコンテンツを見てまわるスタイルだ。大きく四つに分かれた会場ごとに紹介していく。

株式会社ACTUS (アクタス)
https://www.actus-interior.com/
1969年に前身となる「青山さるん」という名前で実店舗をオープン。今では全国に直営店32店舗、FCとしてのパートナーショップ37店舗、飲食店4店舗を構えるライフスタイルカンパニー (2022年03月時点)。事業内容はヨーロッパを中心とした家具、テキスタイル、インテリア小物全般の輸入販売や、オリジナルアイテムの販売。また、レストランやカフェなどの飲食業、大型施設のインテリアデザインや設計・施工、リノベーションの設計・施工等多岐にわたる。
ACTUS WORKS (アクタスワークス)
ACTUSの新作発表を兼ねた展示会。新商品をはじめとする“モノ”の発表から、現在取り組んでいる活動報告や過去の歴史など“コト”の展示まで行われ、ディーラー (卸先) や法人取引先、メディア、インターンや内定者を含む社内スタッフなど幅広いステークホルダーを招き開催される。
※2022年の会期はすでに終了しています。
※入場にはインビテーションが必要です。

ACTUSが考えるオフィス「THINK PORTAL」

今回の一番の見どころと言ってもいいACTUS LIVE OFFICE「THINK PORTAL」を紹介したい。会場はビル12階の東側に位置する執務室。展示会当日もオフィスは稼働しており、「いらっしゃいませ」という気持ちの良い挨拶が我々を迎え入れてくれた。

まず感じるのは、オフィスには珍しいほどの開放感。所々にグリーンが配置され、明るく心地良い印象だ。コロナ禍でのリモートワークの推進により出社の義務がなくなり、現在は従来の半数以下でオフィスを使用している状態だという。そのため、全スタッフ分の自席を用意していた形態を変更。フリーアドレスを採用し、一つひとつの空間がゆとりを持った構成となっている。

フリーアドレスといっても、ただ好きな座席を選ぶというものではなく、目的に応じた居場所が用意されているところが面白い。一人で作業をしたいとき、複数人でコミュニケーションを取りながら作業を行うとき、チームでのブレストや資料を広げてのミーティングなど、それぞれの用途に適した場所が用意されているのだ。

各コーナーに異なるチェアが配置されているのはライフスタイルショップならでは

このACTUSの提案するオフィス空間THINK PORTALとは、「考え (=think) が出入りする扉 (=portal)」というコンセプトのもとデザイン設計が成されている。シングルワークの効率とチームプレーの効果を最大化させ、社員一人ひとりが日々社内外から集まる情報や課題に対して、“答え”をクリエイトしていける場所を実現したという。

新たなモノやコトの創造は、決して机上だけでは完結しない。THINK PORTALはクリエイティビティが必要なとき、仲間からのインプットが必要なときに、オフィスに出社することで刺激を受け業務を捗らせることができる空間に違いない。

インテリアグリーンという文化の定着を

12階執務室の反対に位置する部屋は、新作小物や貸出用商品の展示があるプレス対応スペース兼、社員のフリースペースとのこと。会期中この場所は、同社のグリーンブランド「NODERIUM (ノードリウム)」の会場となっていた。

2014年からインショップとして営業を続けてきたNODERIUMは、初の独立店舗「NODERIUM京都」を2022年9月16日にオープン。本スペースでは、その新店舗を含む各店のグリーン、テラスファニチャーコーナーで展開予定の商品発表が行われていた。

2022年9月16日オープンのNODERIUM京都

「インテリアグリーンを文化にする」ことを目標に掲げている同社。展示されていたのはインドアグリーンでもなくアウトドアグリーンでもない、インテリア目線で厳選されたグリーンアイテムの数々だ。また、そのスタイリング提案は昨今のグリーン需要の高まりにも十分に応えられる内容といえる。

さらに店舗出店に伴い、グリーンやその周辺アイテムだけにとどまらず、「植物との共生」をテーマにした植物由来のフレグランスやエッセンシャルオイルなどに展開アイテムを拡大。見て楽しむだけでなく、植物による香りや手触りなど、五感で得られる効果を暮らしに取り込む提案を進めていきたいとのこと。今後の展開に期待したい。

ACTUSの歴史とこれから

階を下りて3階へ向かうと、そこではACTUSのこれまでの歴史と、これからの未来について知ることができた。

ACTUSが育む“豊かな暮らし”の提案」でも紹介したアクタスの前身である「青山さるん」。その青山さるん立ち上げのきっかけが、今回の本展示「アクタスの歴史」で明らかにされた。社外への発信を目的としているACTUS WORKSだが、本展示についてはショップスタッフをはじめとする社内からの関心も多く寄せられたという。社内にも当時を知る者が少なくなるなか、改めて会社のルーツを知ることで見えるブランドのあり方があるのだろう。

そんな歴史を知ったうえで会場の先へ進むと、今度は新たな世代へのモノづくり「ACTUS KIDS (アクタスキッズ)」、「good eighty % (グッドエイティーパーセント)」の展示と、最新テックを使用した「眠りの提案」がされていた。

ミレニアム世代のためのブランドgood eighty %
自分に合うマットレスがオンラインサービスでわかる「GOOD SLEEP STUDIO」

そのなかでも我々が注目したのは、未来の顧客を獲得するための取り組み。ACTUSのターゲット層は30代後半以上のファミリーがメインであり、扱うアイテムは中高級品。これはここ20年のマーケット状況を見て意図的に同社が戦略を立てたものであるが、同時に「ライフスタイルショップとして顧客の一生に寄り添いたい」という想いから生まれたのが、子ども用家具ブランド「ACTUS KIDS」とミレニアル世代のためのブランド「good eighty %」だ。

実際にgood eighty %のプロジェクトメンバーのなかには、ACTUS KIDSを使用して育ったというスタッフもいるのだとか。ACTUS KIDSからgood eighty %、そしてACTUSへ――。ブランドからブランドへと繋がることで強まる顧客との絆。年代を越えて広く愛されるブランドであることは、会社の大きな強みとなりうるだろう。

家具の一生を長く慈しむ

最後のブースでは、「ACTUSの環境経営」でも取り上げているACTUSのサステナビリティについて活動報告が行われていた。ここで我々が注目したのは、同社が三つの循環システムとして掲げるうちの一つ「Trade-in (トレードイン)」。このサービスでは不要となった家具の下取り・修理・再販を行う。

まだまだ国内では市場規模の小さい中古家具市場だが、すでに使用された家具を修理して販売する“リファービッシュファニチャー”の価値を高めていきたいと考えている同社。使えるのに「不要になった」という理由だけで捨てられてしまう業界の現状に疑問を呈している。

Trade-inが定着することは、実は新商品の販売促進にも繋がるのだ。例えば、接客時には「手入れをしながらモノを大切に使うことで、手放すときも価値あるモノとして受け入れ先を見つけることができる」と伝えられるだろう。家具は決して安い買い物ではないからこそ、安心して迎え入れてもらうきっかけになる。

また、適切なリペアを施してリファービッシュファニチャーを価値あるモノとして正しく伝え、販売することのできる再販方法にも期待したい。このTrade-inの推進によって、家具のライフサイクルにも少しずつ変化が訪れそうだ。

企業の熱量を計る機会

1998年に始まったとされるACTUS WORKS。開催当初は同社のディーラー関係者をはじめとするステークホルダーに向けて、新作受注会という形で開催されていたという。それが10年20年と時を経て、より招待客を広げ、モノの展示だけに留まらずACTUSが取り組んでいる“コト”の発表の場にも活かそうと進化したのが3年前。

そうして新しいカタチへとアップデートした矢先のコロナショック。その後2年間はオンラインでの開催を行い、ようやく今年、新しくなって2回目のオフライン会場開催が実現したそうだ。

2年で大きく変化した「暮らし方」と「働き方」。ショップとオフィスを同時に見ることができた本展示会では、改めて「これからのライフスタイル」について考えるきっかけを貰えた。

また、このような形式の展示会を開催するライフスタイルショップも珍しい。コトの提案が注目・強化されるこの時代であれば、ステークホルダー向けにコトの発表が行われるのは至極当たり前にも感じるが、ここまでの熱量を持って展示会づくりを行う会社はそう多くないだろう。

ACTUS WORKSのような展示会は、企業の熱を計るうえで重要だ。それはおそらく、訪れる取引先企業も、顧客も、社内の人間も誰もが感じ取れる熱に違いない。外への発信が多様化し、メッセージが複雑化する今だからこそ、今一度内部の強化を図ることも重要だろう。本展示会からは企業の熱量の重要性をも学べた気がする。

Recommend