2022.10.25.tue

クリエイティブが生まれる公園“rooms PARK”<前編>

Contents

歴史ある展示会の新たな一歩

数あるイベントのなかでも、アート分野での内容の濃さや、個性的なクリエイターの展示をしてきたという意味では、この合同展示会は避けて通れないだろう。H.P.FRANCE (アッシュ・ペー・フランス) が運営する合同展示会「rooms (ルームス)」である。

コロナショックの影響を受けてきた合同展示会は、アフターコロナが近づき大きく変貌を遂げている。今までroomsという名で開催してきた同合同展示会も、「rooms PARK (ルームス パーク)」と名称を変え、2022年10月13日(木)〜10月16日(日)の期間で渋谷ヒカリエを舞台に開催された。

そのrooms PARKのディレクションを手がけたのは、2021年12月にディレクターとして就任した蛭田敏章 (ヒルタ トシアキ) 氏。その他の運営メンバーも今回から新体制となり、大きく生まれ変わったrooms PARKは、どのような想いとこだわりをもって開催されたのかを蛭田氏への取材をもとに紐解いていこうと思う。

H.P.FRANCE (アッシュ・ペー・フランス)
https://www.hpfrance.com
1984年に原宿で設立以来、ファッションを中心に、インテリア、アートなど生活と文化に関わるさまざまな事業を展開。日本はもちろん、パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、ベルリンなど世界中のクリエイティブな才能や個性との出会いを大切にし、それをエネルギーにビジネスを成長させている。
rooms (ルームス)
https://www.roomsroom.com/
クリエイティブシーンの活性化を目的にファッション、ライフスタイル、アート、パフォーマンス、飲食など、あらゆるジャンルから過去20年間で1万組以上のクリエイターが参加してきたキュレーションイベント。

roomsとしての歩み

H.P.FRANCEとroomsについて教えてください

− 蛭田氏コメント:H.P.FRANCEは小売事業、卸売事業、合同展示会の運営、アート事業などを行う複合文化企業のようなものです。バイヤーが新しいクリエイターたちの作品を海外で発掘し、日本で紹介するということを主にやってきて、ファッションやアートを中心に多岐に渡った活動を行ってきました。

そして特に強みと言えるのがアート分野での発信と、20年以上続けている合同展示会事業となります。今回から合同展示会の事業は新たな体制となり、私がディレクターとして就任し開催となったrooms PARKもそのなかに含まれます。

また、心機一転してrooms PARKという名称に変えましたが、基本的には今までと同様に国内外の新たなクリエイターを見つけ、それを発信するということは変わりません。バイヤーやビジネスでの来場者以外の一般のお客さまも楽しんでもらえるように、マーケットデイを用意しているのですが、今回は例年よりも多い2日間の開催としました。

たくさんのクリエイターの作品や取り組みが見られる場としているので、マーケットデイだけじゃなくビジネスデイでも気に入ったものは購入してもらえるようにしています。

rooms PARK (ルームス パーク)
https://www.roomsroom.com/rooms-parkevent
開催期間:2022年10月13日(木)~10月16日(日)
会場:渋谷ヒカリエ ヒカリエホール9F
※rooms PARKの会期はすでに終了しています。

今までのroomsとの違いはどのようなところでしょうか

− 蛭田氏コメント:合同展示会って出展料や審査などでハードルが高いと思われることも多く、スモールビジネスをやっている若いクリエイターたちにとっては敷居が高いので、会場のSTREET AREA内に出展料などを低く設定したチャレンジブースというものを設けました。才能はあるけどそれを表現する場所がない、経験がないからどう卸販売をしたらいいのかわからないという若きクリエイターたちも多いんです。

そんな才能あるクリエイターたちに出展経験や見てもらえる場所を増やすことがそれぞれの成長にも繋がりますし、展示会としても新たな才能を知ってもらえる場になるので特に注力しました。

チャレンジブースを中心としたSTREET AREA

rooms “PARK”という名前に寄せた想い

名称を「rooms PARK」へと変更した理由は?

− 蛭田氏コメント:新体制となったことや場所も新しく渋谷に移すので、展示会としてもイメージを刷新したいという意図がありました。誰しもが行ったことがあって、心休まる場所でもあるPARK=公園という言葉を足すことで、気軽に遊びに来てほしいという想いを込めています。

また会場に関しては今回から渋谷ヒカリエという駅直結の場所に移し開催しました。

何か意図があるんでしょうか?

− 蛭田氏コメント:roomsはビジネスデイとマーケットデイの両方を設けていることが特徴の合同展示会です。バイヤー以外の方々にも、どれだけ来場していただけるかが出展者の満足度にも直結します。今まで開催していた新宿の会場はターミナル駅から少し離れていることも影響し、集客面でも課題がありました。

そこで今回のrooms PARKは、渋谷という場所で開催することによって、渋谷スクランブルスクエアやミヤシタパークなどにいらっしゃる潜在的なお客さまも新たに誘致できると考えたんです。H.P.FRANCEはセレクトショップを長く続けてきた企業ということもあり、既存顧客さまも多くいらっしゃいますが、今後は新たに若年層の感度が高いお客さまにもrooms PARKを知っていただきたく渋谷という土地を選びました。

− 蛭田氏コメント:さらに、一般のお客さまの来場が可能なマーケットデイには、「Kan Sano」「Sala」「大比良瑞希」「Michael Kaneko」のアーティストによるライブコンテンツも用意することで、アーティストのファンの方々や音楽好きな方にも来ていただくことを狙いました。

なぜこの4組を選んだかというと、もちろんディレクターとしての感覚もありますが、ファンの方々がただ音楽好きというだけではなく、ファッション感度も高く、rooms PARKに興味を持ってくれそうだと予測したからです。今までもやってきた新たなクリエイターの発掘や発信とは別に、多くの新たな一般のお客さまにも知ってもらい、気軽に来たくなるようなPARK要素をしっかりと盛り込みました。

出展者目線で寄り添うこと

rooms PARKのディレクターに就任するまでの蛭田氏の経歴を教えてください

− 蛭田氏コメント:2021年10月に辞令が出るまでは卸売事業部に責任者として長くいました。当時は出展者側として展示会に出ることも多かったので、出展する側が抱える開催までの不安や、開催時にこうしてほしかったなどの要望を抱えていることが多かったです。

今回、展示会を主催する側に立ったからには、その時の経験をしっかり運営に反映したいと思い臨みました。

その経験をもとに、主催者として活かせたこととは?

− 蛭田氏コメント:例えば、出展者さんからの相談を無料で受けることにしました。出展費用も決して安くないなかで、経験が少ないブランドやクリエイターは、事業の最初はDtoCから始めていて卸売自体は未経験、初歩的なことすら分からないというケースが多いことに気付いたんです。

そんな方々に対してH.P.FRANCEがやってきた卸売事業の初歩的なノウハウなど、事前にアドバイスをすることで少しでも不安を解消し出展していただけるようサービスとしてパッケージングし、rooms PARKにより気軽に参加してもらえるようにしました。

rooms PARKとしての新たな在り方

主催者としてrooms PARKはどういう役割でありたいですか

− 蛭田氏コメント:我々主催者側ができることとして、バイヤーやお客さまをどれだけ呼び込めるかと、PRとしてどういったお手伝いができるかを考えた際に、コロナショック以降来場者数自体が減ってしまっていることもあり、今までの展示会とはやり方を変えていかなければ難しいと思いました。

そこでスペシャルインキュベーターとして、クリエイティブディレクターでありインフルエンサーの高園あずさ (タカゾノ アズサ) 氏をお呼びして、彼女の気になったブランドを紹介する企画なども実施したんです。出展者には影響力がある方に紹介してもらえるチャンスも増えますし、インフルエンサーとしての高園氏には多くの一般のお客さまのファンもいらっしゃいます。

rooms PARKはただのビジネス向け合同展示会ではなく、マーケットインであることも強みの一つなので、このような取り組みで一般のお客さまに向けてもしっかりと認知度を上げ、バイヤーも一般のお客さまも出展者も全員が満足するイベントにしたいと考えています。

高園氏がピックアップしているブランド

出展者の選定基準はありますか

− 蛭田氏コメント:詳しくはお伝えできないのですが、これから伸びていくであろう才能をお持ちの方々をrooms PARK目線で見出すということを意識しています。

例えば今回の出展していただいたブランドでいうと、ただ単に製品づくりをしているだけではなく、その製品に違うサービスや魅力を掛け合わせたり、モノを作って売るだけに終わらず、アートをしっかりとプロダクトに変換し独創的だった点を評価したブランドもありました。まだ見ぬ新しいアートやファッションを今までも多く輩出してきた我々としても、そういった観点は非常に大切にしています。

rooms PARKならではのフィルターがあるということですね

− 蛭田氏コメント:その先に関してもクリエイションが商品化された後には、良いモノができたというだけで終わらせないように、どう売るかを考えなくてはいけません。それを我々がブランディングも含めて一緒に考えて進めていくことが、新しいクリエイターの発掘と成長、そしてビジネスに繋がっていくと考えています。

今回のrooms PARKは8割程度が新規出展者でした。こちらからお声がけすることはなく、毎回オーディションを行って出展者を選定していることもあり、新しいクリエイターにもチャンスがあって、見る側にとっても新鮮なものとなります。合同展示会に出展し取引先が増え次は個人で展示会をやるという方も少なくありません。

rooms PARKの出展者にも、出展後のその先まで考えてモノ作りをしてほしいですし、そうした方々に我々はできるだけ寄り添える企業でありたいと、ディレクターとしてもそこを大切に考えています。

次回、「クリエイティブが生まれる公園“rooms PARK” <後編>」に続く

人と未来を繋げる独自の創造性

新体制となったrooms PARKは、集まった200を超える出展者のうち8割が新規出展者だったという。通常、主催者や出展者同士の繋がりなどにより、リピーターも多くなりがちな合同展示会だが、rooms PARKの新規出展者数が8割という数値は異例だ。

さきに蛭田氏も述べていた通り、前回出展したから今回も出展するのではなく、毎回オーディションをするからこそ新しく独創的であったり、まだ世に出ていない才能あるクリエイターを見つけることができるのがrooms PARKなのだ。

出展者も主催企業の協力のもと、展示会を通し高め合い循環していくことで、バイヤーもお客さまも主催者も満足できる内容となり、より展示会の質は上がっていくのではなかろうか。小売業だけでなく、卸売事業からアート事業、そして展示会の運営まで行うH.P.FRANCEの強みを活かすことで、rooms PARKはまだまだ成長過程にある出展者に寄り添い、今だけでなくその先の未来に繋がるクリエイターを発信しているのだ。

<後編>では、クリエイションという観点で会場に多数用意されたさまざまな新しい取り組みを細かく紹介し、進化したrooms PARKをより細かく解析したいと思う。

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