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SDGs達成のカギを握るのは – 2022 秋 東京 –

2022年6月に発表された世界各国のSDGs達成度合いを評価した「Sustainable Development Report (持続可能な開発報告書)」によると、日本は163ヵ国中19位で、前年の165ヵ国中18位から順位を下げてしまい、3年連続のランクダウンとなった (出典:Sustainable Development Report)。

報告書では17の目標ごとに「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「大きな課題がある」の4段階で評価され、日本のランクダウンの主な原因は、この「大きな課題がある」と評価される目標が六つと全体の約3分の1を占め、思うように改善が進んでないことにあるとみられている。

そのうちの一つである「12.つくる責任つかう責任」は、暮らしの提案を行うライフスタイル業界にとっても見過ごせない問題だ。

他方、自動車部品や家電、化粧品、食品などさまざまな業界で日系製造業が生産拠点を国内に置き直す動きも活発になりつつある。コロナショックやロシアのウクライナ侵攻による供給網の混乱に加え、約20年ぶりの円安が要因となり、国内回帰を後押ししているのだ。

こうした現状を踏まえて、合同展示会開催前の恒例特集記事として「SDGs」と「国内生産」という二つのキーワードに着目し、セレクトショップが商品選定の際に何をポイントにすべきかを探るべく、合同展示会を紹介していく。
(2022年8月2日掲載時点での公開情報)

ブランドとバイヤー双方がイーブンな立場になれる「MaG.」

MaG. vol.20
開催期間:2022年8月23日(火)~2022年8月25日(木)
会場:SPIRAL HALL
https://mag-preview.com/

MaG.+
開催期間:2022年8月20日(土)~2023年1月31日(火)
https://mag-preview.com/cat-news/mag-plus/

〔MaG. (マグ)〕はファッション、インテリア、雑貨などの合同展示会として、「こだわりのアイテム、その価値をバイヤーにしっかり伝えたい」というコンセプトで開催される。大規模な合同展示会のように間仕切りをしてゾーン分けをするのでなく、「バイヤーが会場丸ごと欲しくなる空間」を考え、「ライフスタイル」を軸としたMaG.独自の空間づくりがなされているのが特徴だ。

国内外を問わずブランドストーリー、こだわり、想いを持って作られた商品であるかなどを重視し、出展ブランドの選定をしてきた同展示会は、今回で開催10年目の大きな節目を迎える。「原点回帰」をテーマとして、これまで一貫して続けてきたそのキュレーションに一層注力をするという。

価格で同業他社と渡り合っていくのではなく、長く続く価値を有する商品を作りたい、そしてその価値をしっかりと消費者へと届けてくれるショップと繋がりたいと考えるブランドが集うMaG.だからこその出会いがきっとあるだろう。

また、2022年8月20日からはオンライン展示会〔MaG.+ (マグプラス) #5〕も開催される。オフライン展示会開催前に出展ブランドの情報を得られるだけでなく、「MaG.+」のみの出展ブランドもあるため、こちらも併せて活用することでより多くのブランドとの繋がりを作ってほしい。

「今」を繋げる国際的なファッションイベント「JUMBLE TOKYO」

JUMBLE TOKYO Spring / Summer 2023
開催期間:2022年8月24日(水)~8月26日(金)
会場:ベルサール渋谷ファーストHALL B1
https://jumble-tokyo.com/

10年以上にわたり国内のファッションブランド、アクセサリー、家庭用品などを揃えてきた見本市〔JUMBLE TOKYO (ジャンブルトウキョウ)〕では、テーマ別に設けられた企画展示が見どころの一つである。今回は全六つのテーマのうち注目したい二つを紹介する。

今回でVol.8となる「WELLNESS MARKET (ウェルネスマーケット)」の今季テーマは、「Bath,Beauty,Sleep (バス、ビューティ、スリープ)」。お風呂でしっかり温まって行うスキンケア&ボディケアや、良質な睡眠を促していく。そしてECOでオーガニックな食品やコスメなど、素材にこだわった商品が揃う。

前回の「Discovering New Kyushu」に引き続き、国内プロダクトに注目したスペースが「Discovering New Tohoku」だ。自然豊かな背景から生み出される伝統的な作品から斬新でクリエイティブな新しいプロダクトまで、さまざまなジャンルのブランドが集う。国内生産が注目される今こそ、ぜひとも活用してほしい。

バイヤーとブランド双方のニーズに答えるファッション合同展示会「Project TOKYO」

Project TOKYO
開催期間:2022年8月30日(火)~8月31日(水)
会場:東京国際フォーラムB1F / B2F
https://www.project-tokyo.com/

WOBE
https://www.project-tokyo-info.com/wobe/s/

国内外のリテーラーが求めるブランドを発掘し、ビジネスに繋げるサービスをするのが〔PROJECT TOKYO (プロジェクトトウキョウ)〕である。今回新たにSDGsをテーマにしたエリアと、アップサイクルをテーマとしたマルシェ型のエリアが設けられる。“地球や人を思いやる気持ちを大切にした”二つの新エリアを紹介していく。

まず、「BE CONSCIOUS OF SDGs (ビー コンシャス オブ エスディージーズ)」では、SDGsの掲げる17のゴールを17のブランドに当てはめた展示を行い、来場者に分かりやすく丁寧に説明する空間を作る。ゴールにきちんとフォーカスを合わせることで、各企業の理念の大切さを伝え、より多くの人に意識してもらうことを目的としている。

二つ目の「グッドさいくるフェスタ by Marche TOKYO KOTSUKAIKAN」では、廃棄された食材に新たな価値を生むアップサイクルで、フードロス / フードウェイスト解決型エリアだ。PROJECT TOKYOとGINZAFARM (ギンザファーム) 株式会社が運営する、Marche TOKYO KOTSUKAIKANとのコラボレーションによってつくられた同エリアで、有楽町駅前の交通会館で開催される。こちらにも足を向けてみてほしい。

日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」

 第94回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2022
 開催期間:2022年9月7日(水)~9月9日(金)
 会場:東京ビッグサイト東展示棟
 https://www.giftshow.co.jp/tigs/94tigs/index.htm
  
 Gift Net®
 ビジネスガイド社主催見本市『出展社商品情報ポータルサイト』
 https://www.giftnet.jp/

〔東京インターナショナル・ギフト・ショー〕は専門性の高いカテゴリ毎に出展エリアを設け、常に多岐にわたる業界からバイヤーを動員するとともに、新しいマーケットを創造する展示会だ。第94回目となる今回は「オムニチャネルで、日本経済の再生を」をテーマに掲げて開催される。

たとえばSNSで情報を受信し、飲食店で食事をしたりアパレルショップで試着をしたり、後にオンラインショップで商品を購入したりと、消費者の購買行動における手段は多様化している。SNSやライブコマースを始めとするオンラインと実店舗とが、それぞれに持つ売り方や取り組みの強みを、いかに自店らしく組み合わせていくかがポイントになるとして、持続可能な流通の構築を目指す。

同時開催されるのは、住まいと暮らしのリノベーションに関する国際見本市「TOKYO International Gift Show LIVING & DESIGN 2022 (トウキョウインターナショナルギフトショー リビング&デザイン2022)」だ。2009年から約12年にわたり、大阪でトータルインテリアの展示会として開催されていた同展示会は、開催地を東京ビッグサイトへと移した。

「暮らし / デザイン / 新時代」のスローガンのもと、住まいを演出するためのインテリアアイテムからデザインプロダクツ、リノベーションアイテムなど、今ある「暮らし」をより快適に楽しくアップデートする商品を一堂に集める。コロナ禍で急成長中のリノベーション業界の提案から、ライフスタイル提案に繋がる新たな視点を得られるのではないだろうか。

売場のシーン提案をそのままブースに展開する「MONTAGE」

 MONTAGE 28th
 開催期間:2022年9月7日(水)~9月9日(金)
 会場:TOC有明EAST・WEST 4F
 https://montage-express.jp/ 

〔MONTAGE (モンタージュ)〕はセレクトショップをターゲットに、トレンドを意識したコンセプトを設定して、会場全体に統一感を持たせた空間演出に力を入れる展示会である。ただ単に商品を並べているだけではなく、売場のシーンを作る際の参考にもなり、出展者と来場者の双方にとって、未来への指標となる出会いの場を提供している。

今回も前回に引き続き「消費行動で未来を変える」をテーマに開催される。SDGsが消費者にとっても身近になった今、生活と切っても切り離せない消費行動の変化で未来を変えていくことを目標とするMONTAGE。

多種多様な商品に溢れ、情報発信も活発に行われるなかで消費者のモノを選ぶ目も厳しくなっている。今ある環境問題に対して、一人ひとりができることは決して多くはないかもしれないが、人々が手にするもの、口にするもの、身に着けるものにまつわるモノづくりを変えていくことで、消費行動を変えていけるだろう。そのための切り口となるブランドを見つけてみてほしい。

新時代の複合型イベント「NEW ENERGY TOKYO」

NEW ENERGY TOKYO
開催期間:2022年9月8日(木)~9月11日(日)
会場:新宿住友ビル三角広場
https://new-energy.ooo/

クリエイションの祭典「rooms (ルームス)」の運営チームが独立し設立したBlue Marble (ブルーマーブル) がキュレーションする、展示会、マーケット、メディアを内包した複合型イベントが〔NEW ENERGY TOKYO (ニューエナジートウキョウ)〕だ。ここからクリエイションを核とした新たなエネルギー (Energy) が創出される。

同展示会の名称の由来は、文明を紐解くことから始まる。文明の始まりは人類が「火」を手に入れたことがきっかけと言われており、人はより良い暮らしを手に入れるために様々なenergyを生み出し、手に入れてきた。2022年の今、地球の未来を案じる私たちは「人の豊かさ」の原点に立ち返り、心が駆動するenergyを「new energy」と命名したという。

ファッション、ビューティ、アート、インテリア、エシカルなど総勢約200組のブランドやアーティストが展示、販売をするNEW ENERGY TOKYOには、未来のヒントやエネルギーに満ちている。

そして出展者のみならず、会場内にも環境への配慮がなされていることが装飾からも分かる。会場装飾には水を使わず二酸化炭素を大幅削減でき、環境や人に優しいデジタルプリントが使用されるとのこと。ファッション物流をサポートする企業が、「ファッション業界がより豊かにクリエイティブで持続的な発展を続けていけるように」と始動した、デジタルプリントによる新事業は、合同展示会を開催する上でも重宝されることが期待できる。

選りすぐりのサービスや商品だけでなく、それを集める「箱」がSDGsを意識したものかどうか、展示会へ足を運ぶ理由の一つとするのもいいのではないか。

未来を変えるセレクトショップ

2022年は、2015年の国連サミットでのSDGs採択から2030年の目標達成までのちょうど中間点にあたる。SDGs達成に向けて残り半分の期間にできることは何か、今一度見つめなおすには良い機会ではないだろうか。

今回はセレクトショップが店づくりを行ううえで押さえておきたいキーワードとして、「SDGs」に加え「国内生産」を挙げ合同展示会を紹介してきた。国内生産が見直されるきっかけは円安などではあるものの、SDGsの観点でも意味がある。

例えばモノづくりの過程に付いてまわる地球環境問題は「12.つくる責任、つかう責任」、伝統、技術継承は「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」、雇用機会の創出は「8.働きがいも経済成長も」というように、現状抱えている課題を解決することは17の目標達成にも繋がっていく。

MMD TIMESでは過去に「香りで馨る日本の職人と伝統」や「INDICEが継承するメイドインジャパン」など、国内生産に尽力する企業に取材を行ってきた。共通するのは「日本の産業を守りつつより良いモノを作り、消費者に届けたい」という根底にある気持ちのように思う。

そうして作られた商品を積極的にセレクトすることで消費者への認知拡大を促し、需要を高めることができる。発注量が増えれば、生産へのさらなる後押しにもなるだろう。それが前述してきた「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」、「8.働きがいも経済成長も」といった目標達成のための一歩となりうる。

売り手が商品選定を行うとき、消費者がモノを購入するとき、将来的には「サステナブルであること」をうたっていなくとも、それが当たり前のものとして手にとれるようになるかもしれない。展示会をうまく利用し、より良い店づくりのため、よりライフスタイルの提案のために参考にしてみてほしい。

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