2022.02.15.tue

消費行動で未来を変える MONTAGE 27th 注目アイテム

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未来を変える選択

「消費行動で未来を変える」――2022年2月8日から3日間にわたり開催された、合同展示会:MONTAGE (モンタージュ) の今回のテーマだ。SDGsの17のゴールと169のターゲットからもわかるように、貧困や紛争、気候変動など世界的な問題は数多く存在する。

近年では日本国内でも、さまざまな企業や団体がSDGs達成のために取り組んでおり、それを受けて消費者意識も上がりつつある。

このような意識の変化は消費者の行動をも変え、モノを選ぶ新たな基準を生んでいる。作り手は、これまで以上に意識して人や社会、環境に配慮したモノづくりを行う必要があるだろう。

難しいのは、今後その商品が長く親しまれてきた大量生産・大量消費の時代のモノ以上に選ばれる必要があるということだ。モノで未来を変えるには消費があってこそ。「作る」と「使う」のバランスの取れたサイクルが未来を変えていく鍵となる。

今回はMONTAGEに出展されていたアイテムの中から、「消費者行動で未来を変える」という展示会テーマを体現している5つを取材した。これらのアイテムを未来を変える上での選択肢 (=消費者行動) である「ゴミを減らす」、「素材を選ぶ」、「食べる物を知る」の3項目に分けて紹介する。

MONTAGE 27th
開催期間:2022年2月8日(火)~2月10日(木)
会場:TOC有明EAST・WEST 4F
https://montage-express.jp/
※MONTAGE.27thの会期は既に終了しています

ゴミを減らす

温暖化の進行を遅らせるために我々ができることの一つとして、「ゴミを減らす」ことはイメージしやすい。生産者も消費者も共通して行動に移しやすく、モノづくりにおいても、まず検討すべき事項だといえる。

そこで紹介したいのが神戸マッチ株式会社から展開されるブランド「火」の「マッチ玉」だ。

マッチを製造する過程で発生する不良の軸木に、キャンドル等で使用されるパラフィンワックスを含浸させ作られた着火剤である。燃えやすい素材であるマッチの性質を活かした親和性の高い商品で、着火剤としての機能にも期待できる。実際に燃焼時間は約15〜18分と、着火剤のなかでも燃焼時間は長く、頼もしいアイテムだ。

マッチの軸木。輸入段階で相当数の廃材が発生する

ブームであるアウトドアの他にも、薪ストーブや暖炉、夏場の花火の火種にも活躍しそう。一年を通して売場における新たな顔になりそうだ。

この「マッチ玉」のように、生産過程での廃材を利用する工夫のほかに、消費者の廃棄物を減らす提案も手段の一つ。これからの時代、消費者にアップサイクルの価値を感じてもらうことは大切だ。「ACRAFT (エークラフト)」の「デニムダルマ」は、その実感を与えるのにぴったりなアイテムといえる。

名の通りデニム生地から成る「デニムダルマ」。着なくなったデニムパンツから一点一点丁寧に作られる。消費者が愛用していたデニムはもちろん、アパレル企業で発生するサンプルや廃棄予定の在庫、生産過程で発生する端材を使用して制作することもあるのだとか。

神奈川県平塚市で作られる伝統的な「相州だるま」が原型

不用品に新しい価値を吹き込むことで、より価値を高めることがアップサイクルの概念であるが、本アイテムはだるまの価値創造も果たしている。着古したデニムに新たな道を与えるだけでなく、古くから親しまれるだるまが、より暮らしに馴染む新しいカタチになることで、衣料と伝統品の相乗効果を生んだ。

七転八起の縁起物として、開店祝いや新築祝いなどのギフトにも最適。2022年3月には東京のKITTE丸の内に1mの「デニムダルマ」が展示されるので、ぜひ実物を見てみてはいかがだろう。

素材を選ぶ

モノを購入する際、素材へのこだわりは人によってまちまちだ。洋服や家具など、手触りの感覚や手入れのしやすさが購入の決め手になることはあっても、環境問題の観点で素材を選ぶといった意識の定着はまだまだ浅い。

素材の問題でいうと、一番身近なものはプラスチックだろう。塩化ビニルやアクリル樹脂、メラミンなど、我々の生活は多くのプラスチック素材で溢れており、機能的で利便性がよく、モノづくりに好都合な素材であることも確かで、急に脱プラに切り替えることが困難なこともよくわかる。

しかし、海や土をはじめとする環境汚染問題、人体への健康被害などを危惧して、代替品を模索すること、使用を制限することは、これからのモノづくりにおいて必須事項だ。そこで2つの商品を取り上げたい。

まずは、スワン電器からリリースされた「リノリウムデスクマット」。同社の主要商品であるデスクライトと合わせて、机上で使えるアイテムとして開発された本商品。プラスチックの代替品となる天然素材リノリウム (亜麻仁油) からできている。

リノリウムは適度な弾力性と抗菌・抗ウイルス効果を持ち、家庭のトイレや洗面、もしくは病院や学校の床材として使われており、また、植物である亜麻を育てることで、リノリウムの輸送から製造にかかる二酸化炭素量を上回るCO2を吸収し、非常にサステナブルな素材でもある。

サイズはMとLの2種。マウスパッドも展開中。

これらの天然素材はプラスチックと比較し、高価なことが販売への懸念材料になりがちであるが、昨今の物価高騰を受け、その差はどんどん縮まりつつある。目下の課題は接客や売場を通して、消費者の素材に対するリテラシーを上げることではないか。

続いて紹介するのは柔軟剤配合のシート型洗濯洗剤「WAVE (ウェーブ)」。本アイテムは100%プラスチックフリーな点が特徴で、使用後はセロハンを含めパッケージすべてが生物分解し、自然に還るサステナブルな洗剤だ。

日本ではまだまだ馴染みがないシート型の洗剤ではあるが、海外では量販店などでの取り扱いがあるほどに認知は広い。コンパクトなので従来型の液体や粉洗剤に比べ、収納スペースを削減でき持ち運びにも向いている。

シート半分 (3〜5kgの洗濯量) を洗濯槽に入れるだけ

また、低アレルギー性で動物由来成分を使用せず、動物実験は行わないなど、人や動物にも優しい点も含めて、総じて環境に配慮された商品といえる。

エコを意識したモノづくりは、そこに注力するあまり役割や機能が劣ってしまっては本末転倒だ。新たなカタチを模索する上で、機能面もより良く進化することは、購買意欲を促進するために最も効果的だろう。

昨今、さまざまな市場で賑うSDGs関連商品が証明するように、環境に配慮した商品を選択する消費者は既に一定数存在し、今後も増加していくことは間違いない。今後、ライフスタイル業界でも、ますます増えるであろうこのニーズに応えていくために、世界の課題への理解や共感と、モノづくりでの解決方法を追究していく必要がある。

食べる物を知る

最後に紹介するのは食品だ。買い物の中で最も頻度が高く、自身への影響を感じやすいのもまた食品ではないか。紹介するのは「ecobito & farm company (エコビト&ファームカンパニー) 」のえごまシリーズ。

えごまは、亜麻などにも多く含まれるα-リノレン酸が非常に多く、オメガ3系脂肪酸が採れるとして現在注目されている食物。主な作用としては抗アレルギー作用や中性脂肪・悪玉コレステロールの減少、血栓の予防、認知症予防などにまで働くというから驚きだ。

早速、興味深いストーリーと共に「えごまたまごのマヨネーズ」を紹介しよう。本商品は、えごまの実と茎葉を飼料に混ぜて育てられた鶏の卵「えごまたまご」を使用して作られたマヨネーズ。

えごまを食べて育つ鶏から生まれる卵は、えごまの成分がそのまま遺伝しており、同等の栄養価があるのだとか。これは動物も人も同じで、食べた物はそのまま生殖器をはじめ身体へ蓄積される。わかったつもりでいるが、我々の身体は食べ物でつくられ、食べ物をエネルギーとして活動しているのだ。

保存料や甘味料などの食品添加物、日本は他の先進国と比較しても特に添加物の認可が多い国として知られている (各国で基準が異なるので一概に多いとはいえない) が、自分の身体をつくっているのはどんな食べ物なのか、生産背景を含めて知るということは食物をいただく上で、生きる上で、最低限の義務のようにも感じる。

「ecobito」で作られるえごまは、全て九州・佐賀の地で無農薬栽培された国産品。もちろん全ての商品において保存料・酸化防止剤などは使われていない。小さな小さなえごまの種子は選別にも並々ならぬ労力が掛かるのだとか。葉や種子、えごま油の搾りかすまでも余すことなく商品に活かす企業努力は、生産者や消費者の笑顔のためにも選択していきたい商品である。

消費行動を変えるモノづくり

買い物の動機はたくさんある。必要だから、お洒落だから、好きだから、モノは我々の心を満たし、暮らしを便利に豊かにする。そこに私たちが暮らすこの地球のため、自分を含む人類のためという軸を持つ時代が訪れている。

そして大前提として心に留めておきたいこと、それはエコやサステナブルを考慮したモノづくりが、「ビジネスのためのモノづくり」ではないということだ。SDGsについてもそうだ。決して、トレンドやパフォーマンスの道具ではなく、今私たちが直面している地球規模の問題解決への道筋であり、地球のためにできることの手段としてモノづくりがあることを忘れてはならない。

人の心ないトークや笑顔の裏を見透かせるように、消費者は企業本位なモノなのか、地球のためのモノなのか、意図も簡単に見抜いてしまうだろう。まずは、今地球で起きていることへの理解や、自分の中での意識改革を作り手側から始めていくことも必要だ。これからの未来のために、消費行動を変えられるワクワクするモノづくりで、ライフスタイル業界全体が賑わうことを期待する。

掲載企業・ブランド紹介

神戸マッチ株式会社

1929年創業のマッチメーカー。マッチのように擦って火をつけるタイプのお香ブランド「hibi (ヒビ) 」や、「火と暮らす」がコンセプトのブランド「火」を展開。

取り扱いアイテム:マッチ、お香スティック、着火剤など

公式ホームページはこちら
http://kobe-match.co.jp/splash/


ACRAFT (エークラフト)

有限会社コンセプトデザインが展開するデニムクラフトアートブランド。どれもが一点モノの商品である「デニムダルマ」は、プロスケーター・清水葵が手がける。

取り扱いアイテム:デニムダルマ、レザーダルマ

公式ホームページはこちら
https://acraft-work.jp/


SWAN / スワン電器株式会社

1968年創業のライティングメーカー。既存の枠にとらわれる事なく、器具の設計から販売までを幅広く手掛ける「光のライフスタイル」を提案。【Crafted in Nippon】を旗印に、日本製手作り製品にこだわった製品を生産する。

取り扱いアイテム:デスクライトなど照明器具

公式ホームページはこちら
https://swanlighting.stores.jp/


WAVE (ウェーブ)

旅キッチンが取り扱っている、イタリアのベネトで誕生したサステナブルなシート型洗濯洗剤のブランド。人と環境への影響を軽減するだけでなく、品質やパフォーマンスを追求した新しい洗剤を提供する。

取り扱いアイテム:洗濯洗剤

公式ホームページはこちら
http://www.tabikitchen.com/


ecobito & farm company (エコビト&ファームカンパニー)

長年住宅資材・建材業を営んでいる株式会社中村が展開するブランド。えこびと農園で無農薬栽培された九州産えごまのみを使用。保存料や酸化防止剤も一切加えず製造している。

取り扱いアイテム:えごま油、マヨネーズ、ドレッシングなど

公式ホームページはこちら
https://farm.ecobito.jp/

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