Contents

CIRCULABLE SUPPLYに求められる企業価値

SDGsが人々に認知されるようになり、あらゆる企業が社会問題や環境問題に向き合っている。特にアパレル業界では「廃棄問題解決のためのモノづくり」でも紹介したように、サステナビリティな取り組みに力を入れているファッションブランドは多い。

街中でも店舗内に洋服の回収BOXが置かれたり、環境に優しい素材で作られていることをアピールするポスターが貼られるなど、各社それぞれが工夫を凝らしていることが伺える。

昨今ではそうした取り組みに注目するエンドユーザーも多く、SDGsへの関心が高まっているからこそ、現状環境負荷の大きい産業であるアパレル業界に求められる社会的役割も日々重要視されてきているのではないだろうか。

世の中で「CSR=Corporate Social Responsibility」と呼ばれる企業の社会的責任が見直される今、自社の取り組みを社外へ伝えていくことは、信頼を得るためにもより大切であると言える。

今回MMD TIMESでは、「衣・食・住・美」の分野で様々なブランドを展開している株式会社ベイクルーズが立ち上げたリユースショップ、「CIRCULABLE SUPPLY (サーキュラブルサプライ) 」を取材した。循環する仕組みを主軸とした同社ならではの取り組みについて、運営責任者である福園 隆行 (フクゾノ タカユキ) 氏に話を伺った。

株式会社ベイクルーズ
https://www.baycrews.co.jp/
ファッションを中心に新しいライフスタイルを発信する企業。「あらゆる生活シーンに楽しさや喜び、驚きや感動を提供していきたい」という考えのもと、「ファッション」の枠を超え、カフェ等の「飲食」事業、「家具・インテリア」事業、「フィットネス」事業まで、人々のライフスタイル全般に関わる幅広い事業を展開している。
CIRCULABLE SUPPLY (サーキュラブルサプライ)
https://www.instagram.com/circulable_supply/
株式会社ベイクルーズが展開しているリユースショップ。「ベイクルーズパートナー (同社内での社員の呼称) から帰還させ再販売する」という新しいサイクルをコンセプトに、CSRの一環として取り組みを行う。ベイクルーズパートナーの私物を店舗で集めて販売し、売上の一部がそのアイテムの提供者に還元される仕組みを構築した。2020年の7月からレーベルとして発足し、現在は新宿、京都、堀江に店舗を構え、楽天のフリマアプリ「ラクマ」にも出店している。

今できることを見つめる

CIRCULABLE SUPPLYについて教えてください

− 福園氏コメント:「ベイクルーズパートナーから帰還させ再販売する」という新しいサイクルをコンセプトにしているリユースショップです。パートナーとはベイクルーズグループ内で働くスタッフのことで、アルバイトも含めて社内従業員を「パートナー」と呼んでいます。

グループ内で展開しているプライベートレーベルアイテムやセレクトしているインポートアイテムを対象に、パートナーが着なくなったアイテムを集めてショップで販売しており、それらの商品が売れれば、売上の一部がパートナーへ還元されるという仕組みです。

レーベル名はサステナブルを意識し、「循環する=circulation」、「可能な=able」、「提供する=supply」を組み合わせて命名しました。不要になった洋服を最終的に捨てるのではなく、再利用して次へ繋いでいくことで、廃棄衣料問題の改善に繋げたいと思っています。

CIRCULABLE SUPPLYを立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?

− 福園氏コメント:SDGsに対して自分たちがどのように社会に貢献していけるのかを考える社内研修があったんです。そこでどんな取り組みを始めていくか話し合いました。海洋プラスチックを減らすなどの意見もありましたが、アパレルブランドとして身近な廃棄衣料問題にアプローチできるリユースショップへとなりました。

福園氏はいつから運営に携わっているのでしょう?

− 福園氏コメント:私はCIRCULABLE SUPPLYの立ち上げから携わり、現在は運営責任者として全ての業務の調整役としてマネジメントを行う傍ら、店頭に立ち販売も行っています。私自身、元々サステナビリティな活動やCSRにも関心を持っていたので、前向きな姿勢で参加しました。「洋服を循環させる」という考えに共感しているのはもちろん、企業価値に直結する事業に関わっているという責任感もあって、モチベーションを高く持つ取り組みを行っています。

認知拡大と意識改革

パートナーからはどのように商品を集めているのでしょうか?

− 福園氏コメント:基本的にはCIRCULABLE SUPPLYの店舗に持って来てもらっています。近頃では出品数が増加しておりますが、当初はアイテムを集めるのにとても苦労したんです。レーベルの立ち上げ時は「着なくなったアイテムを集めます」と呼びかけてはいたものの、社内の認知もまだ浸透していなかったこともあり、なかなか商品が集まりませんでした。

そこでアプローチ方法を変え、身近な社員への声かけは継続して行いつつ、定期的に社内メールを送ったり、社内報に取材記事を組んでもらったり、できることを積極的に行い商品を集めていきました。

その甲斐もあって、月間500着前後だった商品が3倍に増え、今は常に1,500着は集まっています。

その中で人気の商品を教えてください

− 福園氏コメント:男女問わず人気なのは軍モノです。例えば古着屋などで軍モノを買おうと思うと商品点数が多すぎて、欲しい商品を探すだけでも大変だという声をよく耳にしますが、CIRCULABLE SUPPLYではアパレルスタッフが実際に着ていた人気商品を中心に取り揃えています。だからこそ商品を探す際に膨大な種類の中から探すという手間がないんです。

また、店内のレイアウトも宝探し感覚で楽しんでもらいつつも、カラー毎に商品を分けたり、コーディネートをイメージしやすいように陳列するなど、目に留まりやすいようにこだわっています。

セレクトショップのノウハウを活かしたレイアウト

− 福園氏コメント:このレーベルの特徴として主に自社製品を収集しているため、通常よりも良い条件で売買ができるんです。そもそも商品を生産した時の原価が抑えられているので、売り手に対して高い還元率を提供しても、定価から大幅に値段を下げて商品を販売することが可能です。

買い手と売り手のどちらにも価格訴求に対してのメリットがあるので、多くの人たちにCIRCULABLE SUPPLYの仕組みを理解してもらって、循環の輪を広げていきたいですね。

これからの目標を教えてください

− 福園氏コメント:売れ行きの良いオンシーズンのアイテムをもっと集め、需要を高めていきたいです。

「オンシーズンのアイテム」でありながら、「着なくなったもの」という矛盾を乗り越えなければならないのはなかなか難しいですが、今まで以上に店舗で働くパートナーへの認知拡大を強化していくことによって、解決の糸口が見えると考えています。

ショップスタッフはシーズンを先取りして洋服を購入するし、そのボリュームも多いのでアイテム回収が行いやすいからです。

商品の需要が高まれば購入者が増え、出品する側も意欲的に出品してくれるのではないでしょうか。

オンシーズンのアイテムも見逃せない

店舗にいるスタッフへ出品を促す施策はありますか?

− 福園氏コメント:ポップアップを行っていきたいと思っています。パートナーにCIRCULABLE SUPPLYの施策が浸透しない理由の一つとして、出品したくても受付場所が遠くて出品ができないといった問題があります。

以前ポップアップを行った際に、出店先で働くアパレルショップのパートナーからも商品を集めることができ、アイテム回収の手応えを感じました。ポップアップを行えば回収のタッチポイントが確保できると分かったので、全国でポップアップの開催をしていきたいですね。

発信することの意義

エンドユーザーに期待することはなんでしょうか

− 福園氏コメント:エンドユーザーにはCIRCULABLE SUPPLYを通して、一着一着に込められた想いを感じ取って欲しいです。出品された商品の中には、スタッフがどういう理由でそれを購入したかなど、それぞれのストーリーを記入したアイテムもあります。モノの背景や思い入れをアイテムと共に繋いでいってもらえれば嬉しいです。

アイテム独自のストーリーが描かれたタグ

− 福園氏コメント:また、CIRCULABLE SUPPLYの取り組みは新しく洋服を作るのではなく、既にあるモノを売ることなので、廃棄される洋服が減らせます。今後も継続していくことでSDGsの観点からアパレル業界に貢献ができると信じています。

この活動がもっと広まることによって、今あるモノを大切に使うという意識を伝えていけたら嬉しいですね。

将来的に叶えていきたいことを教えてください

− 福園氏コメント:価値のあるものを長く着て欲しいという想いをもとに、今のCIRCULABLE SUPPLYの取り組みを続けていきたいと思っています。

地道な草の根運動を続けていることで出品者は増加していて、エンドユーザーの認知も拡大していることから、少しずつではありますが循環の仕組みが浸透してきていると思うので、これから更に社内や社外に広がっていくことを期待しています。

サステナビリティな取り組みは単発的に行うのではなく、継続的に行うことが大切です。地球環境の改善に向けて、業界全体の仕組みが段々と変化していけばいいなと思っています。そして、CIRCULABLE SUPPLYを通して対外的な企業価値を上げていきたいですね。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

CIRCULABLE SUPPLYがもたらす新たな可能性

アパレル業界に付いて回る廃棄衣料問題。その一因となる大量生産は、製造過程で大量の水やCO2等が必要とされることから環境破壊の原因となっている。一方でそれぞれの工程に携わる人が多いという現状もあり、それは同時に雇用機会の創出にも繋がり、経済を回しているという実態もある為、その構造を変えることは容易ではない。大量生産を止めたとして、雇用問題をいかに賄うのか、多くの企業が頭を悩ませているのではないだろうか。

CIRCULABLE SUPPLYは「循環」に着目した仕組みを成功させた。廃棄問題に対しては一人一人が着なくなったアイテムを捨てる事なく、再利用できるリユースショップであり、雇用問題に対しても、売上が出品者に還元される事で新たな収入源として解決できる可能性が見える。

このような仕組みや考え方をCIRCULABLE SUPPLYから発信し、業界全体に波及させていくことによって、少しずつ良い方向に変化していくのではないだろうか。

今回の取材を通して現状の問題に目を向け、自社にできることは何か追求していく行動力こそが、これからの未来を変えていける力になるのだと感じた。

Recommend