2021.10.12.tue

ファンに愛され続けるWTWのブランド力

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WTWが貫くオリジナリティ

これまでMMD TIMESでは独自の戦略を打ち出す数々のブランドを紹介してきた。異業態との協業や商品選定等、他社との差別化を中心に何を据えるのかはブランドによって異なる。

今回はブランディング戦略に焦点を当て見事に成果を上げている、株式会社WTW (ダブルティー) が運営するライフスタイルショップの「WTW (ダブルティー) 」を紹介していく。

同ショップは都会と自然の両極を楽しむ人々に向けて、ライフスタイルを提案するブランドとして2011年に誕生した。カリフォルニア・マンハッタンビーチでの健康的で自然体なライフスタイルからインスパイアされた、「URBAN,SURF,NATURAL」というコンセプトを基にした世界観に共感するエンドユーザーは多い。

「10年前に初めてWTWを知った多くの人が、今も変わらず利用してくれています。これは創業時から大切にしている“ライフスタイルを提案する”ことを徹底し、守り続けているからこそなんです」そう語ってくれたのは、営業部長兼商品部長を務める岡本 勇気 (オカモト ユウキ) 氏。

リピーター率が高い理由とは何か。 “ライフスタイルの提案”の為に行っていることを紐解き、同社が行うブランディング戦略について話を伺った。

WTW (ダブルティー)
https://www.wtwstyle.com/shop/default.aspx
株式会社WTWが展開するオリジナルライフスタイルショップ。WTWとは「waiting for the wave (波待ちの時間) 」の頭文字から成り、同ショップでは「海でゆったりとサーフィンの波待ちをしている時のような、開放的でリラックス感のある暮らし」を提案する。都会と自然の両極を楽しむ人々に向けて、「URBAN,SURF,NATURAL」をコンセプトとしたライフスタイルの提案をはじめ、住環境デザインやブランドコラボレーションなど、様々なフィールドの垣根を越えたチャレンジやプロダクト、企画を通じて美しい海やビーチを守る環境保全活動にも貢献している。

ライフスタイルを提案するWTW

WTWについて教えてください

− 岡本氏コメント:「海でゆったりとサーフィンの波待ちをしている時のような、開放的なリラックス感のある暮らし」を提案するライフスタイルショップです。WTWという名前は「波待ちの時間」を表しているんですが、私がブランド立ち上げの話を受けたのも、まさにその波待ちをしている時でした。

新業態開発部でブランドづくりに携わっている中で、当時の代表から「新しいライフスタイルショップをやってみないか」と言われたんです。その時はまだ「WTW」という名前しか無く、コンセプトどころかロゴすら決まっていない状態でした。

− 岡本氏コメント:立ち上げ当時のメンバーも私を含めて3人しかいなかったので、商品の開発や選定、店舗デザインだけではなく、それまでに経験の無かった人事や教育研修といったことまで、全てを自分たちだけで行わなければならなくて、とても苦労をしました。

本当に0からのスタートでしたね。でも、だからこそ、一つひとつ丁寧に「WTW」というライフスタイルショップを作っていくことができました。

コンセプトはどのように決めましたか?

− 岡本氏コメント:一般的なサーフショップと毛色を変えたくて、サーフィンとインテリアを軸とした“ライフスタイル”を提案するショップにしようということになりました。

平日は都心で仕事をして、土日は海へサーフィンをしに行く生活をする人をペルソナとして設定し、自然やサーフィンといった温かみのある雰囲気に、都会的な要素も加えたコンセプトに決めたんです。当時から実際に自分自身がそういうライフスタイルを送っていたということもあり、そのままを表現しています。

ショップを運営する上で意識していることはありますか?

− 岡本氏コメント:コンセプトをエンドユーザーへ伝える為に、自分たちは「ライフスタイルの提案者である」ということを常に意識しています。WTWを通じて人々の生活を豊かにしたいという理念を伝えるには、自分たちが良いと思うライフスタイルをそのまま表現して、エンドユーザーに伝えていくことが重要なんです。

例えば、朝起きてからコーヒーを飲む為に使うマグカップや、休日に着る衣服、心地良く眠るためのベッド等、生活にまつわるあらゆるモノを提供します。

コンセプトに据えたライフスタイルを商品展開や店舗の内装で表現し、エンドユーザーに提供していく。その為にWTWでは様々な工夫を凝らしています。

どのような工夫をしているのでしょうか?

− 岡本氏コメント:まずはお客様への接し方です。我々は「お客様に寄り添う」ことをキーワードにしていて、スタッフには、友人に自分の持ち物をおすすめするような接し方を意識するように伝えています。

売ることを目的にするのではなく、友人にアイテムの良さをシェアするような気持ちで話しかけるんです。商品知識の押し売りはせずに、スタッフ自身が実際に触ってどう思ったか、使ってみて何を感じたかを発信しています。そうやって自分の口から自然に出た言葉で伝える方が、エンドユーザーに商品の良さを分かってもらえるんです。

お客様がご来店された時も「いらっしゃいませ」というお声がけは行っていません。ご来店された時には「こんにちは」「こんばんは」、お帰りになる時は「ありがとうございます。また来てくださいね」と、友人を出迎えたり玄関まで見送ったりするようなイメージで接することを徹底しています。

他にもこだわっていることはありますか?

− 岡本氏コメント:店内の空間演出ですね。什器もWTWの世界観を演出する要素の一つと考えています。便宜上、什器という呼び方にはなりますが、実際には店内で使用しているテーブルやシェルフも全て商品です。一般的な店舗什器を使ってしまうと、他の商品の雰囲気と合わない為、ブランドの世界観を崩してしまうことになりかねません。

什器も日々の暮らしの中で使えるモノを使用しているので、そうした空間を見たお客様に、「このお店に住みたい」と言っていただけることがよくあるのは嬉しいですね。WTWが提案したい世界観を伝えたいように伝えることができているんだと思います。

オリジナル商品が表現するWTWの魅力

商品開発においてこだわっている点は?

− 岡本氏コメント:自分たちが使って気持ちいいと思うか、心地いいと思うか、を判断基準としています。ある意味、ペルソナは自分たち自身とも言えますね。

例えば、バッグなら軽い方がいいとか、撥水加工されていて口も大きく開く方が使いやすいとかですね。オリジナル商品の「WTW LOGO DUFFEL BAG (ダブルティーロゴダッフルバッグ) 」は、実際に自分たちが使って良いと思うモノで、お客様にも自信を持って紹介することができています。

お客様から「この間買ったもの、使いやすくて良かったよ」とお声がけいただくことも多いので、設定したペルソナを踏まえた商品開発がきちんとできているという実感もありますね。

WTW LOGO DUFFEL BAG (ダブルティーロゴダッフルバッグ)

特におすすめしたい商品を教えてください

− 岡本氏コメント:一つは「CUTTING BOARD HAND PLANE (カッティングボードハンドプレーン) 」です。これはボディサーフィンのハンドプレーンの形を模して作りました。実際に自分がサーフィンをやっていたからこそ思い付いた商品だと思います。

カッティングボードのように日常的に使われるアイテムも、シンプルなものではなくユニークな形にすれば、使う時もちょっと楽しくなるし、置いておくだけで海を思い出すきっかけになりますよね。

CUTTING BOARD HAND PLANE (カッティングボードハンドプレーン)

− 岡本氏コメント:もう一つは「GLOW WINE GLASS (グロウワイングラス) 」ですね。これもサーフィンをやっている時に思い付きました。波待ちをしている時に見た夕陽がとても綺麗で、夕焼けのオレンジと、日が沈んだ空の紺色のグラデーションをグラスにしたら面白いと思って作りました。

GLOW WINE GLASS (グロウワイングラス)

− 岡本氏コメント:そして、WTWの代名詞ともいえるのが「TISMO SOFAⅡ DENIM (ティズモ ソファⅡ デニム) 」です。コンセプトでもある「カリフォルニア・マンハッタンビーチでの健康的で自然体なライフスタイル」を家具で表現したいという考えの末、デニムに行き着いたんです。

10年前の開発当時は、デニム生地をソファに使用するというアイデアはあまり一般的ではありませんでした。

色移りや色落ちといった生地の特性や、布部分全てにデニムを使用すると割高になるといった、コスト上の課題などはいくつかありましたが、それさえクリアできれば良いモノが作れるという確信がありました。今では店を代表する商品となりWTWに欠かせないアイテムです。

TISMO SOFAⅡ DENIM (ティズモ ソファⅡ デニム)

商品開発において気を付けている点は?

− 岡本氏コメント:目先のことばかりを優先しないということです。企画開発時や選定時に、バイヤーが売ることに走ってしまっていると感じた時には、私が軌道修正をするようにしています。

何よりも”ライフスタイルを提案し、それによって人々の生活をより良いものにする”ことを第一に考えているからなんです。これを創業時からずっと守り続けてきている為、お客様が長くWTWを利用してくれているんだと思います。

ショップの立ち上げの頃と比べたら、私が店頭に立つ機会は少なくなりましたが、時折ショップにいると今でも創業時からのお客様に出会えることがあるんです。常に意識していることがあってこそ、こういった結果に繋がっていると実感でき、とても嬉しいですね。

WTWが広げるフィールド

今後の展望を教えてください

− 岡本氏コメント:WTWが提案する、ライフスタイルを表現する場を更に広げていきたいです。これまで、WTW=waiting for the waveという言葉が表すように、海で波待ちをしている時のような感覚と、日々の生活の中で海を感じられる心地いいライフスタイルを提案する為に、商品や空間演出などを通して表現し、「WTWならでは」のブランド力を築いてきました。

現在はライフスタイルショップを中心に、カフェや住宅プロジェクト等の事業といった、いわば衣食住という三つの柱でライフスタイル提案を行っています。

これからは、まだアイデア段階ではありますが、体験型の旅行を提供するWTWトリップや、リゾートホテル、オフィス等、様々な形でライフスタイルの提案を行っていくことができると思うんです。

これまで築いてきたブランド力を基盤に、コンセプトはブレないようにしながら、それを表現できるフィールドをもっと広げていきたいです。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

ブランド力の育て方

時代の変化と共に、私たち一人ひとりのライフスタイルも変化し続けている。ダイバーシティという言葉が浸透していることからも分かるように、自身には無い価値観を持ち、異なる環境の下で育つ人々を肯定し、尊重し合い、受け入れていく世の中へと日々進んでいるのだろう。

ライフスタイルが多様化する中では、一つのスタイルを貫いていくことは難しいように思えた。長い間、その様相を変えずに保ち続けることは、一歩間違えば時代遅れであると判断され、「古臭い」と思われかねない。

しかしWTWは、創業時に掲げたコンセプトを大切にしながらも、変化する時代の中に取り残されることなく、エンドユーザーの心を掴み続けている。

掲げたコンセプトを表現する為の商品にトレンドを取り入れることで、サーフィンとインテリアという軸はブレないまま、いつまでも魅力のあるライフスタイルブランドであり続けているのだ。

様々なブランドが独自の世界観を打ち出す中、他社には無いオリジナリティを貫き、ライフスタイルを提案し続けることでブランド力が育っていく。ブランド力を育て続けるライフスタイルの提案者として、今後も注目をしていきたい。

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