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セレクトショップで売れるコスメとは

昨今、セレクトショップにおけるコスメアイテムの取り扱いはどのような変化が見られるであろう。現代のライフスタイルにおいてコスメは欠かせないモノであり、それは女性に限った話ではなく、男性や子どもにまで広がりをみせて、コスメ市場の需要の伸びを補っている。

2020年7月にUNITED ARROWS (ユナイテッドアローズ) が化粧品事業に本格参入し、スキンケアブランドをリリースしたことも記憶に新しく、セレクトショップにおけるコスメの需要や親和性が年々強まっていることの表れといえる。

また、昨今ではコスメアイテム内での需要の変化が起こっていたり、環境問題や健康意識の向上からサステナブルやオーガニックなど、エンドユーザーの選択肢が広がっていたりと、コスメ市場は様々な要因で過渡期を迎えている。

今回、そんなコスメ業界の市場動向を探るべく3つのスキンケアブランドを取材した。市場ニーズを知ることでアイテムの選定に役立ててほしい。

また、セレクトショップがコスメ商品を扱う際の留意点や接客方法なども聞くことができた。コスメアイテムは使用する人の状態に合わせて使用感や効果効能などに個人差が現れるため、アパレルやインテリアなどのアイテムとは接客も異なるはずだ。本記事を参考にして、コスメ販売時の接客を振り返ってみてはいかがだろう。是非とも今後の接客に取り入れてほしい。

長期継続的な来店を促すアイテムであること

コスメ市場は、スキンケア商品、メイクアップ商品、ヘアケア商品、フレグランス商品などに区分される。その中でもスキンケア商品は国内市場の約半分を占め、現在も増加傾向にある。その要因として、コロナショック以降のマスク生活による肌荒れ対策や、おうち時間を利用したセルフケアニーズの増加が挙げられる。

化粧品ブランド「穂 mi.no.ri」を開発・販売する株式会社フォルテも手応えを確かに感じているという。原料の信頼性にこだわり、国産の厳選素材を使用した商品を展開する同ブランドは、スキンケアの中でも中高価格帯に位置するが、価格のハードルを越えて新規ユーザーが増えている。

新規ユーザー獲得には、手頃な入口商品があることがポイント

同社の製品に興味を持つユーザーは“健康肌”や“安心安全”を求めている傾向にあり、高い効果の実感とともに日本の素材を使用し、さらには生産者が見えるという点でファンを作っているのが特徴だ。ユーザーの安全面に対する同ブランドの気配りには食品と共通する点が見られるところが面白い。

コスメアイテムはいずれも日常的に地肌に触れるモノであり、​化粧品の副作用や肌への不安に対する消費者の意識は年々高まりつつあり、大手企業をはじめ各社、「肌へ悪影響を与えない天然成分の使用」が顧客を獲得する戦略の一つとなっている。

製品としての“掴み” (=特徴) が核としてあった上で、購入者が重要視するのは「継続すること」だ。スキンケア商品は毎日使用するものでありながら、”化粧品難民”という言葉があるように、自分にフィットし継続できる商品を見つけることが難しいことも消費者は十分に理解している。

取り扱い店舗は「他にはない自分に合うこだわりの商品がここでは必ず買える」という認識をユーザーに持ってもらうことができれば、長期継続的な来店動機が創出され、定期的な来店に繋げることが出来るだろう。

商品の価値がまっすぐに伝わること

では製品自体が本質的に価値あるモノであることを前提に、その価値を伝える工夫にはどのような手法があるのか。

株式会社コンフォートプラスでは、販売店に販売員を派遣して商品の説明を行うという。同社の主力ブランドはアルガンオイルを原料としたスキンケアライン「nature magic (ネイチャーマジック) 」。顔や体、髪にまでマルチに使える美容オイルとして人気のアルガンオイルは競合他社が多く、棚に並んでいるだけではブランドごとの特徴がわからず差別化が難しい。

そこで同社のブランドは取引先やエンドユーザーに対して商品の特徴、他社との価格差の理由など、包み隠さず全てを伝え納得の上で購入いただくことを徹底している。

このプロセスを経るのと経ないのとでは、その後のリピート率に大きな乖離が生じるであろう。商品の効果に対して「なぜなのか」という商品知識を根本的に理解することにより、他ブランドの同類商品を見定める評価軸がユーザー自身に確立されるためである。

また、この知識の刷り込みは、エンドユーザーが口コミを第三者へ拡散する際にも期待が持てる。競合他社と比較して強みとなる商品の特徴をエンドユーザーへ訴求することは、その先の口コミにもプラスに働くため、売上を左右する鍵となるだろう。そうした商品説明が徹底された上で、SNSを活用したキャンペーンなど、「口コミを誘導する施策」を組み合わせることでより大きな反響が得られるかもしれない。

ブランドとショップが一緒に売場を作ること

セレクトショップに商品を置くことに対するブランド側のメリットはあるのだろうか。ブランドの世界観、ストーリーを大切にしているという株式会社フォーチュンは、そこに大きなメリットを感じているという。

同社のハウスブランド「moani organics®︎ (モアニ・オーガニクス) 」は、自然を愛し、アクティブに、ヘルシーに人生を楽しむ女性を応援する本格オーガニックコスメブランド。2016年にサーフィンをはじめとするマリンスポーツを楽しむ女性のためにローンチされ、マリンショップやオーガニックコスメ専門店での取り扱いを皮切りに、「オーガニック」「ノンケミカル」の注目が集まる現在では、アパレルショップなどライフスタイルショップにも展開を広げている。

使用感と効果を両立することがコンセプト

そんな同社が販売店に求めるコトは、「世界感の訴求が可能かどうか」。moani organics®︎のブランド認知はある特定の層に限定されるため、量販店での販売には不向きだという。特にドラッグストアやバラエティショップなどは、化粧水・乳液、ヘアケア、日焼け止めと商品カテゴリ別に棚が分かれていることがほとんどだ。そのため、商品単体で大手商品と一緒の棚に並んだとき、認知度という観点で目立つことができない。

他方、セレクトショップでは展示の仕方や什器までをブランドごとに作っていくことが可能であり、世界観を訴求する上で圧倒的に強い売場であるといえる。また、商品を愛用しているショップスタッフが接客することによる販売効果が大きく、同社では販売店に対しての勉強会にも積極的に取り組んでいるという。

コスメに限らず、ブランドとショップが一体となって販売へと姿勢を向けたとき、大きな効果を見せるのがセレクトショップの強みである。また、店舗やスタッフのカラー、セレクトされている他のアイテム、ライフスタイルショップならではのラインナップの中で扱われるコスメは、例え同じアイテムであっても専門店やバラエティショップなどに置かれるそれとは違う見え方を可能とする。エンドユーザーの反応や認知にも違いが見えるであろう。ブランドにとってはそこが大きなメリットだといえる。

ブランドとショップ、それぞれがセレクトショップでコスメを販売することの強みを活かして今後の販促に取り組んでみてほしい。

一つひとつの価値

コスメは今、女性のためのモノだけではなく幅広く普及が進み、多様化の時代へと突入している。コスト、効果、成分、製造プロセスなど、重視される項目とその比重は個々に委ねられ異なってくる。

そんななか、売り手に求められることとは何か。それは知識とヒアリング力、そして共感力ではないだろうか。世の中の多様化するニーズをそれぞれ把握し、エンドユーザーの悩みに耳を傾ける、そして商品の知識や自身の使用感を交えた接客が信頼され購買の要因になるはずだ。

一見、当たり前のようにも簡単なようにも感じられることであるが、食品のように口にしてすぐに感じられるモノと比較すると、化粧品は効果が現れる時間にも個人差がある。そのため、レビューや知識の一つひとつの価値も高くなり、売り手のたったひとつのレビューでもユーザーに大きな影響力を与えることができるのではないか。今一度、売場のコスメアイテムについて理解を深めてみてはいかがだろう。

掲載企業紹介

株式会社フォルテ

「人々がいきいきと輝くことをトータルでサポートする」を掲げ2015年に創業。スキンケア製品の開発を中心に、コンサルティングや人材育成なども行う。

取り扱いアイテム:化粧水、石けん、日焼け止めなど

公式ホームページはこちら
http://www.forte-jp.com/


株式会社コンフォートプラス

国内外問わず、厳選した天然素材を使った化粧品を提案する企業。同社に関わる全ての人に感動や夢を届けることを究極の目標としている。

取り扱いアイテム:アルガンオイル、石けん、コスメなど

公式ホームページはこちら
https://comfortplus.co.jp/


株式会社フォーチュン

腕時計やライフスタイルグッズなど国内外の契約ブランドのプロダクトを卸販売する代理店。また自社で化粧品やアパレルなどの企画・開発も行う。

取り扱いアイテム:腕時計、生活雑貨、スキンケア商品など

公式ホームページはこちら
https://4tune-int.com/

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