2021.06.01.tue

ライフスタイルショップならではの食品

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デザインされる食アイテム

「衣食住」ライフスタイルショップで扱うアイテムの多くは、これら暮らしに纏わるモノである。なかでも、「食」の関連商品といえば、器やカトラリーなど、食事を引き立てるテーブルセットを連想するのではないか。

昨今では、そうしたテーブルセットのみならず「食品」そのものの取り扱いも珍しくない。家具や雑貨などの商品と比較して、鮮度や賞味期限の管理が発生する一方で、セレクトショップでも食品からヒットが生まれたりと、その労力を掛けてでも展開するメリットがあるのも事実だ。

では、食品をメインに扱う量販店や専門店とは違う空間で商品を扱う際に留意すべきことは何か。過去「セレクトショップで扱う食品商材のこれから」でも紹介したように、いくつかポイントが考えられるが、今回は大きく2つについて考えてみよう。

ひとつは、「コンテンツとしての魅力・価値」。そのモノの生産背景や生産地、生産者など、食を評価する上で重要となる味や栄養価の指標である。加えて、希少性の高さやオリジナリティのある商品であることが量販店との差別化を促す。

もうひとつは、「デザイン」。特にライフスタイルショップという売場には、パッケージデザインが欠かせない要素となるのではないか。生活雑貨やコスメ、アパレルアイテムが並ぶ中、食品がライフスタイルショップの商品としてそこに陳列される際に違和感のないデザインが欠かせない。

この2点のどちらかが欠けていては、ライフスタイルショップでの食品アイテムの成立は難しく感じられる。逆にいうと、この2点が両立しているアイテムが量販店に陳列されていても価値に見合った期待通りの売上は見込めないであろう。モノには適当な売場があり、それを見極める目利きが必要だ。

MMD TIMES はそんなライフスタイルショップに合う食品を扱う企業を取材した。商品がカタチになるまでの作り手の想いや考えを知ることで、食品を扱う際のディスプレイやトークに役立ててみてはいかがだろう。

リデザインのチカラ

日本は南北に長く四季があり海に囲まれる列島であることから、各地域で地形や気候、風土がさまざま。全国各地で独自の食を楽しむことができる。

一般社団法人 東紀州地域進行公社は、三重県南部に位置する東紀州地域の観光と産業の振興、地域おこしの推進を目的とし、地域づくりを総合的に推進している。

東紀州を語る上で大切な要素のひとつとなるのが温暖な気候を生かして作られる特産品の数々だ。

三重県紀北町の魚を利用した離乳食「mogcook (モグック)」

しかし、漁師や農家、生産から製造・加工を行う事業者の多くが、作った産物をどのようなカタチでアウトプットすべきなのか、課題を抱えているという。

発端は、時代の流れとともに売場が変化しつつあることだ。地域の販売所以外にも、オンライン上や、人口が集中する都市部のアンテナショップ・ライフスタイルショップへと商品が行き届く時代になり、その認知拡大が事業存続に関わる重要性を持ちはじめているのである。

そこで東紀州地域進行公社は、事業者から寄せられたこの課題をデザインの力でサポート。最終的にアウトプットされるカタチとして、ターゲットや産物の特徴を明確にしたパッケージを事業者へ提案することで、新たな販路の開拓や商品のリブランディングに繋げることに成功している。

親しみと気付きを与えるデザイン

デザインには、コンテンツの魅力を引き出す力と新たな価値を創造する力とがある。株式会社code (コード) は鹿児島にあるデザイン会社。本業である広告・デザイン業を営む中で蓄積された売場作りや広告のノウハウをアウトプットするブランドとして「日々是薬膳」を企画し立ち上げに至った。

健康食品とされる「薬膳」というカテゴリーをデザインの力を使ってより身近なモノにできないかと考えたのがブランド立ち上げのきっかけだ。

常温で日持ちが長く、流通が容易な点が取り扱いの利点

「身体を温めるモノ・冷やすモノなど、全ての食料には陰 (黒) と陽 (白) の力があって、両方を取り入れる意味を込めました」と同社。ブランドのキーカラーには陰陽図の黒白を合わせたグレーが使用されている。

商品のラインナップは、お茶やスイーツなど、普段の生活に取り入れやすいモノを企画し、薬膳の専門店だけでなく、ライフスタイルショップやレストラン・カフェなどでの取り扱いも視野に入れているという。

薬膳やサプリメントなどの健康食品は、例えモノの良さが普及していても、身近に試すことのできる環境がなければ能動的に商品購入まで至らないのがネックな商材と言えるであろう。

しかし、そういった手付かずのカテゴリーのアイテムが、昨今ではデザインの力を持って姿形を変えてきている。

未開拓な「食」のアイテムが、暮らしの身近にあるショップに置かれることで、新たな流行や気付きを与えることができるのではないか。改めて、デザインされた食品たちを追求してみるのも面白いかもしれない。

永遠のテーマ「食」をデザインする

生きている限り「食」という要素は、ずっと我々に付いてまわる。様々な業界企業がカフェやレストランを始めたり、店舗で食料や食品を扱ったりと、身近であるが故に参入を考えやすい業界・アイテムでもあるだろう。

SNSによって暮らしの見える化が加速する中、デザインが担う役割は日に日に大きくなりつつある。

いつ、どこで、どのように食べられるのか、はたまたギフトとして渡されるのか。食品アイテムそのものだけでなく、それらを使用する空間やパッケージデザインまでもが見定められる時代となった今、具体的なシチュエーションまでをトータルで意識することが購買促進への近道となる。

今後も注目のカテゴリとなるであろう食品商材。ライフスタイルショップで扱うような希少性のあるオリジナリティの高いアイテムはコロナ禍の巣ごもり需要としても売上を伸ばしている傾向にある。

また、食品アイテムは話題性にも長けるため、売れ筋商品を作ることが新たな顧客創造や集客につながるだろう。ショップで扱うに適した商材は年々増えている。エンドユーザーに響く売場に適したショップならではの食品アイテムを探してみてはいかがだろう。

掲載企業・ブランド紹介

一般社団法人 東紀州地域振興公社

三重県南部に位置する東紀州地域の観光と産業の振興、地域おこしの推進を目的として、平成19年4月に設立。世界遺産熊野古道伊勢路をはじめとした「観光資源や温暖な気候を生かした特産品などの自然を体感できる魅力ある地域」をめざし、地域づくりを総合的に推進している。

公式ホームページはこちら
https://kumanokodo-iseji.jp


日々是薬膳

鹿児島県のデザイン会社 株式会社code (コード) が展開する薬膳食品ブランド。薬膳料理家の栫英子さん監修のもと、商品を企画開発。気になる症状や求める効能に合わせて、日常生活に簡単に薬膳を取り入れられることを目標にしている。

公式ホームページはこちら
https://yakuzen.style

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