2021.05.25.tue

リビングハウスが育てる未来の人材

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強い組織と揺らがない企業文化

「企業文化は戦略に勝る」とは、マネジメントの父と言われるピーター・ドラッカーの有名な言葉である。

「どこを目指すのか?」、「なぜ今この事業に取り組むのか?」、「そのために自分はなにをすべきか?」がいちスタッフにまで浸透している企業文化は、精緻な事業戦略以上に組織として強さを発揮するのかもしれない。

コロナショックによりエンドユーザーのライフスタイルが大きく変化していくとともに、企業においても働き方のスタイルが変わりつつある。

そしてライフスタイル業界だけでなく、日本社会の仕組みが一気に変化のスピードを増していくこの時期に、企業に必要なこととは何だろうか。

株式会社リビングハウスの現在の年商は30.8億円 (2020年6月実績) 。見通しが明るいとは言えないインテリア業界で、チャレンジングな事業をいくつも手掛け、毎年着実に売上を伸ばしている。

今回MMD TIMESは、以前取材を行った「インテリア業界の仕掛け人 北村甲介氏」が代表を務める株式会社リビングハウスで未来のインテリア業界を担う 宮田 真穂 (ミヤタ マホ) 氏に話を伺った。

常に様々な事業を立上げ続けるリビングハウスが組織として結束するために、どのような施策を行っているのだろうか。

「どの事業部や役職でも、私たちスタッフ全員が「考え」や「行動」の拠り所にしている共通の行動指針があるんです。

LIVING HOUSE SPIRITS (リビングハウススピリッツ) と呼ばれる冊子にはその指針が記されていて、全員ほぼ毎日使っています。社内のコミュニケーションはその中の共通言語で語られることが多いですね。」

行動指針を確立・浸透させ、社員一人一人が同じ方向を向いて「ミッションを成し遂げるためにどんな具体的な行動をとればいいか」を日々語り合える企業文化を創り出す秘訣を、宮田氏の視点から掘り下げてみたい。

株式会社リビングハウス
https://www.livinghouse.co.jp
「“あなたらしい”を、あたりまえに」をキャッチコピーに、全ての人の日常・非日常空間を豊かにするためのインテリア商社。メインのリテール事業では、国内外問わず500以上のブランドを扱う「LIVING HOUSE」を全国の主要都市に展開する。

具体的な指針とフィードバック

役職と業務内容を教えてください。

− 宮田氏コメント:現在入社して2年目なのですが、コロナショックをきっかけに豊洲店から異動となり、現在はEC事業部でオンラインショップの運営を行っています。

受注からお客様のお手元に届くまでの一連の業務を担当していて、具体的にはオンライン上での接客やメーカーとの調整、物流面でのシステム改善、在庫管理ですね。

リビングハウスのオンラインストア

元々販売業に興味があったのですか?

− 宮田氏コメント:学生の頃はカフェでアルバイトしていた経験もあり、今後どういう仕事をしたいか考えた時に、家具の接客を選びました。売上金額に対する責任や、深く接客することでお客様に喜んでいただけるところに魅力を感じたんです。

実際にショップスタッフとして現場で働いてみると、お客様へのファーストアプローチから、家具の接客を経て信頼を得るまでの振り幅がとても大きいと感じました。

カフェで一杯のコーヒーを売っていた頃と比較すると安い買い物ではないので、お客様が本当にご納得いただけた後に心から言ってくださる「ありがとう」の重みに感動しました。

− 宮田氏コメント:ただ、家具の接客ってお客様のライフスタイルにも直結するし、素材やサイズ感を提案するにあたっての勉強をしなければならない情報量がとても多いんですよね。

リビングハウスには接客マニュアルがあるんですが、頭で分かっていても行動に移すのが難しい。幾度となくロールプレイングを積み重ねて、それが身に付くにつれて、ご成約をいただくことが増えたんです。

その時に役立ったのがLIVING HOUSE SPIRITSの中の一文である「巧遅主義より拙速主義」という言葉です。

「早く実行して早く失敗する。失敗にこそ成長のヒントが隠れている」という意味なのですが、当時失敗が怖かった私は行動することが出来なかった。行動しなければ失敗せずに済みますから。

でも、先輩がSPIRITSから引用して指摘をしてくれて、実践から結果に繋げられたことが自分の自信になったんです。

SPIRITSと北村塾が与える影響

LIVING HOUSE SPIRITSとはどのようなものですか?

− 宮田氏コメント:人として、社会人として大切な心得が記されているポケットサイズの冊子です。リビングハウス版哲学書とでも言うべきでしょうか。

北村社長自身の言葉だけでなく、歴史上の偉人や有名企業の社長の言葉など、仕事をする上で気づきを与えてもらえる言葉が詰まっているんです。

最初に読んだ時には分からなくても、ある体験を通じた後からその言葉の意味が理解できることもあります。

失敗をして何が原因か悩んでいる時に、その体験と結びつく言葉が見付かったり、逆にうまくいった時にも、その行動を理論的に裏付けてくれるような言葉と出会えて「結果に繋がった行動を継続しよう」と思えたり、その名の通り私たちの行動指針になっています。

全社員が持つSPIRITS冊子

その他に使い方はありますか?

− 宮田氏コメント:「北村塾」という新入社員が社長と語り合える会が、年に4~5回開催されるのですが、そこでSPIRITSに記載されている言葉の意味やエピソードを教えてもらえるんです。

例えば、「継続力の重要性」という言葉があります。字面だけ見ると当たり前のことですが、社長は「9回失敗してもそこで止めずに継続したからこそ成功に繋がった」というユニクロの柳井さんの本「一勝九敗」のエピソードを絡めて話してくれました。

後々見返した時に、記載のあった言葉と同時に、社長の言葉や本の内容が思い出せるように気付いたことを書き込むようにしています。一度読んで終わりではなく、ひとりひとりの成長によって常に更新されていく指針なんです。

北村塾では他にどのようなことをするのですか?

− 宮田氏コメント:新入社員が日経新聞を読んで気になる記事を発表したり、社長の体験エピソードやお勧めの本を教えてもらったり、普通に生活をしていたら忘れてしまうような些細なことを思い出させてくれるように、フランクに語り合える場です。

強烈に記憶に残っているエピソードがあるんです。社長は常日頃、いい空間やいいものに触れる為の自己投資が大切だと言っています。インテリアの場合はその最たる場が一流ホテルだと考えているのですが、宿泊するのはハードルが高くても、カフェで千円のコーヒーを飲むことは出来ますよね。

クオリティの高いモノやサービスが集まる場所へ赴いて、それを体感することが自分自身の成長に繋がると教えられました。

北村塾の様子

− 宮田氏コメント:同じように一流の寿司屋はサービス・空間ともにレベルが高いと聞いて、社長一押しのお店にひとりで行ってみたんです。数人しか入れないカウンター席のみで、メニューもない寿司屋に初めて入った私は、明らかに浮いていて場違いな感じでした。

でも、お店の方の接客からは、他のお客様同様に丁寧な扱いを受け、見下されているようには全く感じなかったんです。そして心地の良い接客を受けたことで、「将来また行きたい」と思えたことが、家具の接客にも活かせることに気付きました。

家具も単価が高く、お客様が購入を即決されることはまずないので、将来購入いただける可能性がある人を創ることの重要性を身をもって実感できたことが大きな成果ですね。SPIRITSや北村塾の存在が、気づきを与えてくれたと思っています。

日本のインテリアを”アツく”する試み

今後チャレンジしたいことは?

− 宮田氏コメント:営業自粛期間中はオンライン中心で接客をしていたのですが、実店舗とオンラインを掛け合わせた接客をもっと深掘りしてみたいですね。

コロナショックをきっかけに、人々のモノの買い方に対する考え方が変わり、コロナが収まった後も購買スタイルは今とは異なる形になると思います。

ECは実店舗と比べてお客様とスタッフのお互いの顔が見えない難しさがあります。 実店舗では、見た目や服装、話し方など言葉以外で得られる情報が多いのですが、ECはそれがない上に言葉の掛け違いひとつで誤解が生じてしまう可能性も高いんです。

リビングハウスのバーチャル店舗

− 宮田氏コメント:具体的には、お客様にオンライン上でも店舗と変わらない接客を体験してもらうことが個人的な目標です。それには既存のオンラインストア、バーチャルショップ、オンライン接客ツールのブラッシュアップが不可欠だと考えています。

今まで以上にお客様との丁寧なコミュニケーションをどのように取っていくかを模索する必要がありますね。店舗で学んだ接客スキルを存分に活かすチャンスです。

「日本のインテリアを”アツく”する」という私たちのミッションを、時代の最先端を見据えたハイブリッド型ECサイトという新しい形でチャレンジしていきたいです。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

「SPIRITS」が創り出すポジティブマインド

企業文化とは、「同じ企業で働く人が共有する価値観、信条、行動規範」である。会社という1つの法人の価値観であり、何に価値があるのかを判断し意思決定するための基準とも言える。そして社員の価値観や会社の雰囲気・印象は、理念や行動指針に依存している。

今回リビングハウスの取材を通じて感じたのは、入社2年目の宮田氏にも会社の理念や行動指針が強く根付いていると言うことだ。

「SPIRITS」を媒体にして、日常的に会社の価値を繰り返し伝え、それが一方通行にならないように「北村塾」やそれぞれの面談で「SPIRITS」に登場する共通言語を使い、社員の実践に対しての意見交換の場を設ける。

そしてそれを語る宮田氏の言葉の端々からは、仕事へのやりがいや満足感、将来に向けての期待感を感じた。

企業文化の浸透は、スタッフのエンゲージメントやモチベーション面で、非常にポジティブな効果をもたらすのだ。

ライフスタイル業界を支える人材が気持ちよく働ける環境づくりが今後さらに広がることを期待したい。

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