Contents
家の中に癒しを求めるエンドユーザー

コロナショックで変化を余儀なくされるライフスタイルの中で、人々はこれまで以上に安らぎや癒しといったことを求める傾向が強くなっている。
今年の流行語大賞のノミネート30語に「おうち時間/ステイホーム」という言葉がノミネートされたように、家で過ごす時間が増えたことなどから、家の中をより快適にしたいという需要も高まった。
MMD TIMESでは過去に「青山フラワーマーケット」を展開する株式会社パーク・コーポレーションの空間デザイン事業「parkERs(パーカーズ)」を取材し、「“グリーンと人”が共存する空間デザイン」で“植物がもたらす、豊かさと心地よさのある暮らし”について紹介した。
実際にコロナ禍にはガーデニングに興味を持つ人や、花や観葉植物を購入して家に飾りたいと意識する人が増加しており、関連アイテムを扱うセレクトショップなどでもその傾向を感じていることだろう。
おうち時間を豊かにするためにエンドユーザーが今選びたくなるアイテムとはどんなモノなのか。今回は、10月に開催されたライフスタイル関連の展示会でMMD TIMESが出会ったブランドから考察してみたい。
コロナで変わったモノ選びと使い方

日本にはもともと花を贈ったり家に飾ったりする習慣がなく、そういった文化は戦後、欧米からやってきたものとされている。
同様に欧米発祥で、日本でも今やライフスタイルショップの人気アイテムとなったハーバリウムやドライフラワーも、店内や室内での装飾用としてはもちろん、ギフトにも選ばれる身近なモノとなってきた。
ライフスタイルショップ向けに商品を展開している株式会社magnetでも、ドライフラワーは売れ筋商品のひとつだという。
関連商品として、オリジナルブランド「HUNT9」のフラワーベースは今回のおうち時間ブームの到来で以前に増して好調のようだ。
人気の理由は、大きめのベースや一輪挿しなどのデザインの豊富さと比較的購入しやすいコストとのバランスの良さだろう。

花器としての利用に限らず、家に置くだけでインテリアのポイントにもなることから近年ユーザーニーズは伸びているという。
また、フラワーベースに別売りの精油を入れてドライフラワーを挿し、ディフューザーとして使うという別商品と組み合わせた使い方の提案も目を引いた。
見慣れたアイテムであっても、使い方や見せ方のアイデア次第で消費者の足を止めるきっかけとなりうることを気付かせてもらった。

コロナ禍での「フラワーロス」「ロスフラワー」など生花の廃棄問題もある一方で、花のサブスクリプション (定額課金制) サービスが様々な企業やショップからリリースされており、身の回りに花を飾って楽しむ文化は新たな日本人の習慣としてこれからも浸透していくことが予想される。
花をはじめとするグリーン・ガーデニング関連グッズは引き続き注目すべきカテゴリーのひとつとして認識しておきたい。
癒しアイテムに付加価値をプラス

視覚での癒しアイテムと同様に、香りを楽しむ癒しアイテムもこのコロナ禍で需要が伸びた。
株式会社アスティから展開された「smells like spells (スメルズ ライク スペルズ) 」は、リトアニアから昨年進出したばかりの新しいフレグランスブランド。
アスティがフレグランスブランドを展開するのは今回が初めてだというが、もともと繊維の専門商社としてファブリック雑貨や生地の輸入販売を行っている同社は、リネンの一大産地として有名なリトアニアとの取引が多くあり、同ブランドとの契約に至ったそうだ。

商品一つひとつがリトアニアの首都ビリニュスにあるスタジオで、伝統的な人々の知恵と経験、そして現代の香水調合の技術が合わさったオリジナルの製法で手作りされている。
その丁寧な制作工程にも驚くが、それぞれの香りに意味やメッセージが込められているというコンセプトもユニークだ。
例えば「Arcana Collection (大アルカナコレクション) 」はタロットカードをモチーフに22種の香りがあり、その時の好きな香り・苦手な香りが、今の自分に必要なもの・不必要なものと解釈するストーリーまでが用意されている。

香り関連のプロダクトは、キャンドル、アロマや香水など多様に存在する。その中で選ばれるモノであるために、香りがもたらす効果・効用以外にも自分と向き合うきっかけを与えるようなストーリーづくりなど、飽和状態だからこそ独自の特徴やコンセプトを押し出しプロモーションしていく必要があるだろう。
モノの価値観を時代に合わせる

おうち時間の到来で人々は、家での過ごし方について考えるようになり、これまでに欲しなかったモノを求めるようになったと同時に「モノへの価値観」が大きく変わったのではないか。
「ANTRY (アントリー)」は、モノそのものの価値、使い続けることを大切にしているショップのひとつ。「ヴィンテージと寄り添う暮らし」をテーマに大阪で20年間ライフスタイルショップを営んでいる。
欧米から輸入したヴィンテージ家具やそれらにマッチするオリジナル商品を取り扱う。顧客はエンドユーザーから店舗までと幅広く、商品一点一点全く同じモノはないヴィンテージならではの味が特徴である。

その特徴から一見、オンラインでの販売は難しそうに思えるが、顧客のブランドへ対する信頼は厚く、コロナショック以降、以前に増してオンラインでの売上は好調だという。
サステナブルが謳われるウィズコロナの時代、A N T R Yがこれまで伝えてきた「使い続けることで魅力が増すものを大切に扱う」という考えは、今や全世界が注目していることだと言えるだろう。
受け継がれ、使い込むほどに味わいの増すアンティーク家具のように、時代を経ても変わらずに良いと言えるなにか、傷まで愛せるモノを提案することは、今の時代のエンドユーザーのインサイトに訴えかける要素になるに違いない。
価値観の変化による価値創造

人々の価値観が変わった時、それは新しい価値創造のチャンスでもある。おうち時間は、これまでの「疲れを取り除きリラックスさせる」要素が強かった癒しアイテムを、「楽しみを与え、暮らしを豊かにする」モノに進化させた。
その価値観の進化に伴い、ライフスタイル業界が新しいコト提案や商品開発を行うことで、これからの生活に向けて新しい常識を先立ってつくっていけないだろうか。
癒しアイテムに限らず、住まいの中や暮らしの中で使われるモノは単純な機能だけでなく、ユーザーが楽しく心豊かになるモノが求められている。
それは製品を創るメーカー、販売するショップがそれぞれに日頃から追い求めているモノであるが、今こそ原点に立ち戻り本質的に暮らしを豊かにするアイテムを見極める力が必要だ。

我々は始まったばかりの新しい生活の中でモノの価値やコトの価値をまだまだ模索中だといえる。
ブランドの新しい取り組みや商品を知るなど常にアンテナを張り巡らせ積極的にインプットしてほしい。
MMD TIMESはその情報源のひとつとして、これからもライフスタイル業界の時流を発信していきたい。
掲載ブランド紹介
HUNT9 (ハントナイン)
株式会社magnet (マグネット) が展開するオリジナルブランド。世界中から独自の感性で収集してきた物やありそうでなかった新しい物を提供する。
取り扱いアイテム: 花器、ミラー、オブジェ など
公式ホームページはこちら
http://www.hunt9.com/input_frm.php
smells like spells (スメルズ ライク スペルズ)
株式会社アスティが初めて展開するフレグランスブランド。2019年リトアニアから日本初進出。すべての製品がオリジナルの製法で1点1点手作りされている。
取り扱いアイテム: キャンドル、インセンス、ホームフレグランス など
ANTRY (アントリー)
「ライフスタイルを丸ごと提案できるお店」を目指し、欧米からの輸入家具やオリジナルの雑貨を扱うショップ。大阪府和泉市に実店舗を構え、オンラインでも販売を行っている。
取り扱いアイテム:アンティーク家具、インテリア雑貨 など
公式ホームページはこちら
https://antry.co.jp/