Contents

セレクトショップはライフスタイルの嗜好品を選ぶ場所

「嗜好品」とは、本来「風味や味、摂取時の心身の高揚感など味覚や臭覚を楽しむために飲食される食品・飲料や喫煙物のこと」を意味する言葉だ。しかし現代ではその意味を広く捉え、ファッションやインテリア、趣味に使うものなど様々なジャンルで使用されるようになってきた。

いわゆる贅沢品とも呼ばれる嗜好品は、贅沢という言葉の響きとイメージから、なんとなく無駄だとか、マイナスイメージを持つ人もいるかもしれないが、果たして本当にそうだろうか。

人々が生活をしていく上で、極論を言ってしまえば トレンドだの人気だのはもちろん、家具・家電やインテリア雑貨などおそらくほとんどなくてもなんとかなるものだろう。足を伸ばして寛ぐソファも、臨場感あふれる大きな画面のテレビも、一流バリスタと同じ味を再現できるコーヒーメーカーも、テーブルを飾る季節の花も、それらは全て贅沢品だと言えなくはない。

しかし、「必ずしも必要とは言えないもの」であるからこそ、「楽しんだり、快適さを求めるためのもの」として大きな価値を持っているのではないか。それらは決して無駄ではなく、ライフスタイルにこだわりをもち、快適な暮らしや豊かさを求めることへと繋がっていく。

そして、インテリアやファッションなど衣食住の全てにおいて、人々が快適で楽しいと感じる生活を送るため、ライフスタイルにまつわる「嗜好品」を選ぶ場所こそがセレクトショップなのではないだろうか。

今回MMD TIMESでは、必ずしも必要とは言えないが、それらがあることでライフスタイルを豊かにしてくれる、嗜好品としてのインテリアアイテムについて考えてみたいと思う。

インテリアアイテムにおける嗜好性と実用性

例えば、引越しや模様替えなどインテリアアイテムを選ぶ場面で、大多数の人はまず予算を決め、そこから優先順位を決めて何が必要かを考えて選んでいく。その中で、価格なのか、利便性なのか、デザインなのか、素材なのか、どこに重きを置くかということ、そこにライフスタイルアイテムを嗜好品の一つとして考えるかどうかの違いが出てくるのだと思う。

量販店やどこにでもあるものではなく、こだわりを持ち、嗜好品のひとつとしてインテリアアイテムを選ぶエンドユーザーは、どんなものを求め、何を大切に考えるのか。デザインや素材などの好みは人によってさまざまだが、ライフスタイルを快適にしたり、豊かなものにしたいという嗜好性を持った人に選ばれるアイテムやブランドに焦点を当ててみると、それらが見えてくるように感じる。

MMD TIMES取材班が2月に訪れた合同展示会で出会ったブランドからも、嗜好性を持ったエンドユーザーに選ばれるアイテムのヒントを見つけることができた。

個性や特別感から生まれるアイテムへの愛着

ラグ専門ブランドの「RugRu(ラグル)」を展開する「株式会社ノーム」はインテリアファブリックをはじめとした生活関連雑貨の製造販売を行う企業だ。福岡で卸売小売問屋としてスタートし、現在は様々なインテリア・ライフスタイルブランドの別注アイテムなども多数手がけている。

オリジナルブランドのRugRuは、世界中の生産地に出向いて買い付けを行う中で出会った多彩で個性的なラグを多く取り扱っている。大量生産の凡庸な商品の陰に隠れて、これまでなかなか気付かれることのなかった個性あふれるラグの魅力をたくさんの人に知ってもらい、特別な一枚に出会ってもらいたいという思いがコンセプトとなっている。

インダストリアルやヴィンテージスタイルに合わせやすいラグや、スペインやポルトガルをイメージしたクラフト感のあるハンドメイドのクッションなど、ミックススタイルで展開されるさまざまなアイテムは、主にインドの他、ベルギーやトルコ、中国などで生産されており、国ごとのテイストや特性も魅力のひとつだ。

ハンドメイドだからこそのひとつひとつの個体差は、それ自体がアイテムの面白みでもあり、全部同じではないという個性や特別感は、その使い手に愛着を湧かせてくれるだろう。

価格帯としても決して高価すぎることはないが、飽きたら変えるというような安価なアイテムではなく、長く使ってもらうことを念頭にアイテムづくりを行なっている。 商品開発についても、シーズン毎に新しいものを発表することよりも、長く愛される定番を安定させて行くことが大切なのだという。

使い捨てではなく長く使えるクオリティがあること、消費者が欲しいと思った時に手に入るような安心感を与えられること、そのためには作り続けて行くということをブランドとしても大切にしている。そうして作り続けていったアイテムが長く愛され、定番となっていって欲しいのだと考えているのだ。

社会や世界全体としても、また個人としても「サスティナブル」という意識が強くなっている中で、長く使えるものの良さに再び気付き、愛着を持って使い続けられるものを求める人も増えている。モノが溢れ、飽和する今の時代にこそ、 そういった考えを持ってモノを選び、提案していくことはメーカーとしてもセレクトショップとしても重要だろう。

感度を刺激するファッショントレンドを取り入れたインテリアアイテム

フランス語で「編まれた」という意味を持つ「TRICOTÉ (トリコテ)」は、生活にまつわる全てをデザインしたいという思いから生まれたライフスタイルブランド。ブランド名の通り、ニット製品をはじめとした靴下やバッグ、クッションなどのテキスタイルとしての表現からスタートし、照明やラグなどのアイテムも展開している。

また、ライフスタイルブランドとしての商品展開を広げていくため、インテリアアイテムに特化した「TRICOTÉ HOME (トリコテ ホーム) 」を新たにスタートさせた。新商品としてシルクスクリーンプリントを施した木材を使ったベンチやスツール、自由に組み立てが可能な木材パーツの販売なども行い、今後はワークショップの実施なども予定している。

ワークショップやDIYといったコンテンツは、SNSなどでも反響が大きく、参加者の反応もわかりやすいので、中には取り入れてみたいと考えているセレクトショップもあるのではないだろうか。MMD TIMESとしても、取材を行なってみたいと考えているコンテンツである。

TRICOTÉではセレクトショップなどに向けたオリジナル商品の卸売りだけでなく、提案型ライフスタイルショップ「TRICOTÉ ONE ROOM」の運営を行なっている。アパレル、インテリア、ステーショナリーなど、トリコテの全てのラインナップが揃い、トリコテブランドの世界観を体感できる空間となったショップでは、今後もワークショップなどエンドユーザーに向けた取り組みを行っていく予定だという。

デザイン性豊かでファッショントレンドを取り入れたトリコテでは、作り手との出会いから新たなモノづくりのきっかけが生まれることも多いそうだ。

アイテムとしてはいわゆるマス向けではなく、ブランドとしてはまだまだこれかなのだと語る同社は、今後も感度を刺激するようなアイテムを開発し、自分たちならではの店づくりで、モノを介してエンドユーザーとコミュニケーションを取っていくような特別な提供をしていきたいと考えている。

消費者に伝えるべきメーカーとショップの想いや共感

MMD TIMESとして様々なブランドやメーカーを取材している中で、「2020年セレクトショップを取り巻く業界の動向は?」でも触れた通り、今後の景気の見通しを不安視する声も多い。特に2月以降は感染症の流行により、客足の減少を顕著に受けるショップや、生産や流通の面から大きな影響を受けているメーカーも多いことだろう。

そんな中でも前向きに考えているメーカーやショップは、こんな時だからこそ自分たちの思い入れのあるものを消費者に届けて行くことで、消費者の共感や理解を得ていきたいと聞かせてくれた。そういった会社やブランドが大切にしていることは、目先の利益に捉われることなく、消費者に伝わった共感や理解の結果として、ビジネスが育っていけば良いということなのだそうだ。

モノを売ることが第一なのではなく、自社商品への思いを大切にし、消費者に寄り添う考え方は、ライフスタイルを快適で楽しく豊かなモノにしたいと考える人たちにも響きやすい。

トレンドと普遍的なもの、新しいものと古いもの、変わるものと変わらないもの、双方に良さがあり、どちらかに傾倒するのではなく、それぞれをバランスよく独自の編集でセレクトショップが取り入れることで、既存顧客のニーズの他に新たな顧客の獲得にもつながっていくのではないだろうか。

そして、エンドユーザーの共感を得て業界全体が活性化していくためにも、作り手と売り手であるメーカーとショップが共感しあえる環境や、一緒に悩んで商品を開発し、成長していけるような関係性を築いて行くことも重要なのかもしれない。

今後もMMD TIMESではショップやメーカー問わず、様々な取り組みや試みなどに注目しながら取材を行なっていきたいと思う。

掲載ブランド紹介

RugRu (株式会社ノーム)

RugRu(ラグル)は、世界中から集めた高品質で多彩なデザインのオリジナルラグブランド。ベーシックやカジュアルなデザインからクラシックまで、大量生産の凡庸な商品とは異なる魅力を放つ、個性的なラグやクッションカバーなどのアイテムを提案している。

取り扱いアイテム: ラグ、マット、クッションカバーなど

公式ホームページはこちら
rugru.jp


TRICOTÉ (トリコテ) / TRICOTÉ HOME (トリコテ ホーム)

「ニットの温かさをもっと日常に」そんな想いからはじまったライフスタイルブランド。素材開発からテキスタイルデザインまで、オリジナルのものづくりにこだわり、暮らしを彩るアイテムを提案する。

取り扱いアイテム: バッグ、靴下、アクセサリー、ファッション雑貨、ベビー・キッズウェア、照明、クッションカバーなど

公式ホームページはこちら
tricote.net

Recommend